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オレンジ赤坂  作者: 雅弌
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お人好し


ピロリロリン♪とシンプルな着信音がした。

オレのスマホからだ。…メールが2件。一つは知らないウチに来ていたようで、差出人はオレの母親からと…。




「げ…!?」




思わずそんな声が出てしまったが、別に差出人が嫌いとか迷惑な人というワケではない。

色々と個性的だが、むしろオレは尊敬してるし彼の推薦もあってオレは大会直前に準レギュラーからレギュラーへとランクアップしたのだ。




「どうしたの?誰から?」


「…部活の先輩。それもキャプテンだ。」




名前は新谷 浩太。部員からはコウさんとかコウ先輩と呼ばれている。

サッカーへかける情熱はウチの部員の中でも一番。


それに部員を信頼しており、その信頼っぷりは盲目的ですらある。

大会が近いというのに、最近はあかみんボディ化でちょくちょく休むのにも関わらずオレの体調不良という言葉を信じて全く疑わない。


しかし…流石に今回ばかりはヤバいかもしれない。




『大丈夫か篠崎。今日は明日のためにも身体を休める事を考えミーティングだけなのに、顔も見せられないとはよっぽど不調なのだろう。しかし、お見舞いに行ったら家にいないではないか。お前の親からは相生の家にいると言っていたがどうなっている』




コウさんは機械に弱く、メールを打つのが苦手だ。

だからかなり質素な物だが…。

…うむ。かなり積んでるよな。


やはりもう片方の親からのメールも…。




『今日は明日に備えて完全に部活ないから相生君の家で鋭気養うんじゃなかったの?多分忘れていただけだろうけど気を付けなさいよね』




親からのメールはまだ誤魔化せるレベルというか、自分で勝手に解決してくれているし問題ない。

しかし…キャプテンのメールはどう対応すればイイのだ。



このままではコウさんに嫌われ、部活での立場も危うくなる。

今まではこの時期に休んでてどうするんだ!?と他の部員に責められた時にコウさんが「真面目な篠崎がサボるワケないだろう」とフォローしていてくれたのに。





「…ちょっと頭で外冷やしてくる」


「あ、うん…。」





正直、パニックになっているのか自分でも何を言ってるのかよく分からなかった。


そんなオレを見てニナもかける言葉が見つからないらしい。




この状況は…かなり絶望的だった。

どこぞのバトル物みたいに命をかけて魔法や銃と対峙した時もここまで絶望していなかったかもしれない。


あの時はオレたち3人とニナが協力しての戦いだった。

ニナ自身は蹴ったり殴ったりはしなかったが、オレを支えてくれてたし。



…でも、これはオレの問題だ。

この問題もオレがあかみんたちを受け入れて起きた問題だから…後悔したくない。


後悔したら…オレはあかみんたちを否定してしまう事になるのだから、それだけは絶対にしたくない。絶対にだ。



だから、受け入れるしかないのだろうこの状況も。

オレはサッカーや今までの生活より大切な物を得るためにこの選択をしたのだから。



だから…お前たちもゴメンとかスマナイとか言うなよ?




「ふぅ…」




気が付けば、オレはふらふらと一人で駅前通りまで来ていた。

セミの鳴き声がうるさく、駅のロータリーに向かう道路からは蒸発したみたいに陽炎が立ち上る。


8月の一番暑い時期だ。

頭で外を冷やす…じゃなくて、外で頭を冷やすなんて言っても物理的に冷房の効いた室内の方が良かったな。こういう時は外の空気を吸うって言うんだよしのやん。パニクりすぎだお前。



…ともかく、こんないきなり一人でふらふらとしたらニナに心配かけちまったよな。

とりあえずメールでも送っておくか…と、思ったらまたメールがいつの間にか2件来ている。


一つはニナから。しかも一言だけ。




『外出たついでにアイス買ってきて』




…ニナなりの気遣いなんだろう。

パニックになっているオレに平穏を取り戻そうとあえていつも通りなメールを送ってきた。


口は悪いが相変わらず優しいヤツだ。人を気遣って、いろいろと手を回しやがる。



もう1件は…予想はしていだがコウさんで内容が………!?




『メールでも電話でも何でもイイから連絡してくれ。何か事情があるのだろう。一人で解決できないなら俺達部員が助けになるつもりだ』




…なんで、オレの回りってこんなお人好しばっかりなのかなぁ!?


ニナも、コウさんも。

オレの思考にいるあかみんとエー君もオレを助けるためにやった事が原因でオレの思考に交じってるワケだしな!


…あぁ、畜生。

オレってばまたニナに会った時みたいに嘘や誤魔化しで大切な人に接しているのか。


オレはあかみん達を受け入れた事を後悔していない。

けれど、周囲い事情を説明すれば大変な事に巻き込んでしまうかもしれない。だから誰にも言えない。


後悔しないためにはこの罪悪感も受け入れなくてはいけないのだろうか。


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