博士
「いやはや…おそらく君が、組織の連中から二ツ菜君を逃がした武闘派君で…更には魔法の知識もバッチリな完璧君と来たかぁ…」
「………」
会場の舞台裏。会場の照明のONOFFを操作する場所に、オレは来ていた。
そこにいたのは怪しい博士と2人の黒スーツ男。
黒スーツの男たちは片方が武術に長けていて、片方は魔法に長けているのだろう。
知識のないオレだが…直感や感覚でいつもオレ達を追ってきていた連中より手強そうだと感じていた。
「会場内の構造も把握している事から…半信半疑。そして偶然の同姓同名だと思ったのだがいるんだね…赤坂 明美君」
「ココにはいねーよ。オレは友達がいなくなったから探すの手伝ってくれと言われただけだ」
しらばっくれてみる。まだ向こうはオレの中にあかみんがいる事の証拠を得ていないみたいだし…。
あくまで赤坂 明美という同姓同名な黒井 二ツ菜の友人がいる事にする。
「んー…?じゃぁ君は何者なんだい?」
「教えるワケないだろ。ニナを…黒井親子を何処にやった」
「おや、二ツ菜君を助けた事まで誤魔化すのかい?君が通話を適当な所で切ってしまうから逆探知はできなかったけど君の声は忘れないよ?」
怪しい博士はスマホを取り出すと録音されていた物を流す。
…オレとニナ。そして博士の通話だ。
「…聞かれた事は答えてしまうタチなんだろ?ニナの両親の場所、教えろよ」
「それならこのビルの地下だよ?普通にエレベーター使ったら地下行きはないし階段もないんだけど、ちょっと操作すればね…」
「…博士。お喋りすぎるとまた叱られますよ」
黒スーツのうち片方の男が呆れた顔をして宥めたが…本当に教えてくれたよ、この人。
この博士は掴み処がないというか…誰に対しても警戒していないのだろうか?
実験や、そのための追跡には頭を働かせているみたいだが人と会話するにあたっては何も考えていない。
エー君を実験にかける時もぼーっとしていたとはいえパニックになるような実験内容を軽々と口にしていたしな。
…薬を使って思考を働かなくしていたといても、万が一にでもそんな実験体が暴走しそうな事は言わない方がイイはずだし。
この人はまるで…落ち着きのない喋りたがりの子供みたいだ。
「ふふ、とにかくここで君を捕まえたら脳を調べるのが楽しそうだ。」
怪しい博士は本当に楽しそうな顔をしながら手を振り上げ…。
2人の黒スーツの男たちが身構える。
わかいやすいジェスチャーだな、その腕が振り下ろされたらオレは襲われるんだろう?
そしてヤバいな。
今までは油断していた相手にエー君の無意識で行う格闘術で相手を倒してきたが、今回の相手は油断していないうえにあからさまに強そうだ。
てか、影のモンスターをなんとかした時に逃げるべきだった。
相手の居場所が分かったから、つい行動してしまったが元々ここに来たのは責任者にカマでもかけてニナの両親の居場所を調べるためだったしな。
結果として博士の言葉が嘘でなければ場所は分かった。
けれど戦うつもりでココに来たワケではないのだ。
場所さえ分かれば…あかみんのいた施設を襲っていた連中も近くにいるかもしれないから助力をこうとかするつもりでいたのにな…。
…それにしても頭が痛い。
とにかく痛い。
何でこんなに痛い?
ありきたりの表現だが、頭が割れるように痛い。
痛いイタイいたい!!
そして痛いのはともかく…なんでこんなに思考してるのに相手はまだ襲ってこないんだ?
ようやく博士の腕が振り下ろされたところ。
オレが脅えるのを楽しんでじらしてるつもりなのか?
そんなスローモーションで動いてオレを笑っているつもりなら…。
玉砕覚悟で抗ってやるよ!
…って。何でオレまでスローモーションなんだ?
ゆっくりとしかオレの身体が動かない。
録画した番組をスロー再生しているみたいに全ての動きが遅い。
あぁ、でもこのスローを体感していると頭が本当に痛い!
頭から、脳から出血しているんじゃないかと思うくらいに痛い。
痛みの余波が頭から身体全体に伝わってくるようで、体中のあちこちも凄い痛みを感じるようになってきた。
…けど、これならオレでも先手が取れる。
魔法を使う黒スーツが影を生み出し、それをムチのような形にして…といろいろ準備をしている間にもう片方がオレに接近戦を持ち込むようだ。
その接近戦をおこなうつもりの黒スーツの動きもスローだからよく分かる。
拳がオレの顔を目がけて襲い掛かってくるが、それをオレの顔を掠るぐらいギリギリで避けて相手に詰め寄った。
そこからはエー君の条件反射で行っているともいえる武術を使う。
しかし、こんなスローペースではその反射的な武術は使えないかと思ったがこのスローペースに感じる感覚はあっさりと無くなり…。
いつも通り、反射的に身体が動いて黒スーツの男を攻撃する。




