抗う
とりあえず、オレとあかみん。そしてエー君の事について少し考えがまとまった。
むしろ今までよくもまぁ、何も疑問も持たず生活していたなと思う。
3人が3人、変な所で楽観的というかボケているのかもしれない。
「…何か思いついた!?」
考えがまとまったところで観察力に定評のあるニナさんが声をかけてきた。
いや、相変わらず鋭い。怖くもあるが人として素晴らしい能力であると思いますですよ。
けれど…。
「…すまん。全く関係のない事が頭でまとまっただけで、何も事態は変わってない」
「人の命関わってるんだからしっかりしなさいよ!?」
ドカーンと派手な擬音がしてるんじゃないかと思うくらい強烈なチョップを脳天に繰り出された。
内側からあかみんの頭痛攻撃。外からは関西人も惚れ惚れするんじゃないかと思うくらいツッコミに使えそうなチョップと痛すぎる。
しかも考えに考えぬいて分かった事が…結果としてあかみんとエー君の情報は期待できないって事だから更に頭が痛い。
「んー…そういえば最近多いって聞く火災の半分は誘拐のためとか、電話の相手言ってたよな」
「じゃぁ、残りの半分はなんだって話しだけど」
「多分、施設を襲った連中だ。あかみんが逃げてオレと知り合うきっかけになったんだけど、実験中に施設が襲われてあかみんは逃げたんだ」
「つまり…少しでもなんでもいいから火災に関係性が分かれば施設が特定できるかも?」
「けど、関係性がなさすぎて事件やテロとして取り上げられてないんだよな…」
オレとニナは腕を組んで唸りあうが、全くいい案が出ない。
部屋にあったパソコンで一応、『最近あった火災』と検索したらリストが出て来たので見てみるが…やはり何も分からない。
それにしてもニナ…。
「なんだか、落ち着いてるな。さっきまではいつ爆発してもおかしくないって感じだったのに」
「…そういう掘り返すような事、聞く?」
デリカシーがないわねぇと軽口を叩くがそれでもニナの表情は…悪くない。
明るいとまではいかないが、親が誘拐されてパニック寸前といった感じではない。
勿論、親の事は心配そうだし軽く考えているようではないようだが…。
「まぁ…あんたがいてくれるおかげで弱い自分を見せたくないって思えるのよ。…どうしてかは秘密」
「なんだよ、そりゃ」
オレを信用したから、頼りになるからというワケではないだろう。
まず前者は嘘や誤魔化しだらけのオレを信用するとは思えないし…。
ここに連れてきて、とりあえずの安全を確保したとはいえ逃げの一手しかできていないオレを頼りになるとは思わないだろう。
「そんな事より、お母さんたちの事だけどさ…一つ提案とういうか…」
「オトリだけは却下。守れる自信もないし、相手は誘拐のエキスパートだからな」
「やっぱそうなるか…けど、他に案もないワケでしょ?」
「蛮勇と無謀は違う…だっけか?逆に大した案もなくてオトリなんて危険なだけだ」
正直、警察を頼る事ができればイイのだがどこまでヤツらの組織が入り込んでいるか分からない状況だと危険すぎる。
そんな考えすぎじゃ…と思うかもしれないが、あかみんのいた施設襲撃などあからさまな爆破。それこそテロとして意識されるかもしれないような事件を、それさえも『火災』の一括りにできてしまえてるのが怪しい。
…まてよ?
「ただの火災とは思えない事故が起きている場所を絞れれば少しは施設の場所特定できるかも?」
「どうやってそんなの調べるのよ?最近、火災なんて多すぎて調べつくせないでしょ?」
「…いや、これくらいならオレたちじゃなくてもある程度は調べられるかも」
最近の火災はとにかく、多く…酷い時は月に5回や6回じゃすまない。
その頻発する火災から、ネット上でもネタとして取り上げられている事があった。
「『近頃おきている火災は某国のテロ!?』?」
「まぁ火災の不可解なところの上げ足をとってるだけの連中がスレ上げしてる掲示板なんだが…今のオレ達にとっちゃ貴重な情報源かもしれない」
「なるほど…でも期待できるの?」
「何も分からないからって唸ってるだけよりはマシさ」
実際、ほとんどは期待できなかった。
これはテロだ!と言い張って盛り上げてる連中と、それをバカにしているヤツの中身のない会話。
火災についても火の出何処がおかしい、とかただただ頻発しすぎてることこそが怪しいと言ってるだけのヤツもいる。
けど…一つだけ、バカバカしくも関係性のありそうな情報があった。
「…ニナはどう思う?」
「まぁ…無謀にオトリするよりはいいんじゃない?」
ニナは観察力が凄いから、オレが気が付いた事に説明しなくても理解してくれて話が早かった。
こういう阿吽の呼吸みたいなのは気分がイイね。




