変わらず優しくて
「あぁ…もう!ちょっとこっち来なさい!」
「うぉ!?」
ニナは突然、無様に尻もちついてたオレの手首を掴み、無理やり立ち上がらせたと思ったらそのままチャラ男達から離れるように勢いよく駆け出した。
昨日の優しく引っ張ってくれたのとは違い、同い年の女の子のどこにこんな力があるんだと思うくらいに…力強く。
「あんたさ、ちょっと冷たく扱っただけでなんでそんなにショック受けてるの!?親切を冷たく返した私の方がバカみたいじゃん!」
ニナの親切に親切で答えられなかったから、とは言えなかった。
むしろ、また助けてもらうような状況になってしまって…。
とことん、オレには誰かを助けたり力になってやる事ができないんだなと痛感してしまっている。
「…ところであんた、もしかして明美ちゃんの事を何か知ってたりするの?」
「な…!?」
昨日と同じく、チャラ男達から適当に離れた所で止まり、会話をする。
そしてオレはいきなりあかみんの名前が出てきて驚くしかない。
特にあかみんを思わせる行動をとったつもりはないのだが…やはりニナの観察眼は鋭すぎる?
「その反応…やっぱり何か知ってるんだ」
「その、まぁ知ってると言えば知ってるが…なんで?」
「だって落ち着いて考えてみれば、簡単にショック受けるようなヘタレが私を助けようと思わないだろうし。だとしたら、私を助けたい理由が何かあったんじゃないかなって」
助けたい、と思われるような親切を返される行動は、引っ越ししてきたばかりのニナにとって最近ではあかみんとの事しかなかったらしい。
「えっと…アレだ。オレとあかみん…赤坂 明美は親戚でな。しばらく会ってなかったから知り合いのオレがこの辺りに住んでるとは知らなかったみたいだけど…握手会に来てたオレを発見してな」
「…それで?」
「…オレの親が、車であかみんをアイツの家まで送っていったよ。それで挨拶もできなくて、ごめんなさい。だとさ」
「………」
学校を休む言い訳みたいにペラペラと嘘が簡単に口から出て来た。
けどまぁ…観察力の高いニナだ。
オレが嘘をついてるってのはすぐ気が付くだろうし、オレが嘘をつかなくちゃいけない理由があるという所まで察してくれるだろう。
「…私が嘘を許容するのを知ってて嘘をついてる感じなのが気に入らないけど、一つだけ嘘をつかずに答えてくれる?」
「…何を?」
「明美ちゃんが無事かどうか。凄く体調が悪そうだったし、いきなりいなくなる程だから」
嘘ばかりつくオレへの信用は無くなっていくようだが…それでもニナはあかみんの、オレの心配をしてくれている。
ニナは、とことん優しい。
高すぎる観察力に恐怖すら感じそうだが、あくまでニナは優しかった。
行くあてのなかった他人を無償で一泊させ、あげく蒸発した人間をここまで心配してくれる。
その優しさに、上手く答えてやれないのが辛かった。
「まぁ、無事だよ。すぐには無理みたいだけど、絶対にお礼に来るさ」
「…そっか。それだけは嘘じゃないみたいだね」
「嘘ついてるかついてないか、そんな簡単に分かるのか?」
「あんた、口は達者みたいだけど嘘つく時は凄く辛そうな顔してるわよ」
まぁ…できれば嘘をつきたくなかったしな、ニナに。
けど、自分でもよく分かってないのにオレの身体があかみんになっていた事を説明できない。
とりあえず、またあかみんの身体になる事ができればすぐにでも改めてお礼をするのだが。
「ん…?」
視界の隅で怪しい連中がうろついているのに気が付いた。
多分、エー君が思考にいるから周囲に気を配るクセみたいなのができて気が付けたのだが…。
さっきの、チャラ男たちか?
原因はほとんどオレのせいだが二日連続でニナ関係でナンパを失敗しているし。
「…違う」
「?なによ突然」
自然と、口から言葉が出た。
オレが意識した物ではなく、もしかしたらエー君が口にさせたのかもしれない。
けど、違う?
何が違うっていうんだ…?
「………!?」
気が、ついた。アイツらはチャラ男なんて簡単に表現できるようなヤツらじゃない。
背筋が凍り、若干のトラウマになってしまったのか頭痛のような物までする。
あかみんがオレに怒っておこさせる頭痛なんかとは全然違い、吐き気や恐怖まで巻き起こる。
顔は見えない、というか見られないようにしながらオレとニナの周囲を囲むように移動している。
けど、その服装や囲みの動きは…!
「黒スーツども…!」
あかみんが、オレを助けるために自殺に追い込まれる原因を作った連中だった。




