初対面のニナ
ニナの住む場所を知っているので会うことはできなくても…あかみんの名前でそのうちお礼の品でも送ろう。
できれば夏休みの部活の間にバイトして、それでなんとか。
部活でも十分くたくたになってしまうだろうが、こういうのは誠意だ。
できれば部活を休止してでもバイトしたいが、それだと今度はチームメイトに迷惑かけてしまうしな。
てか、これで二日連続で部活休んでしまったな。
確か明日は練習試合があるのでそれには参加したい。
今のオレは準レギュラーといった立場だが、少しは期待されてると思うのでその期待にも応えたい。
少しでも、先輩たちの最後の夏を応援できたらと思う。
そんな事を考えながら一度帰宅。
牛乳を勝手に飲んだことは結局姉にばれていたらしくて、間接技を決められたりしたがオレは日常に戻った。
まだ思考にあかみんもエー君もいるし、またあかみんの身体に戻るかもしれないが、ひとまず。
…部屋でぼーっとしてたら姉ちゃんがノックもなしに部屋に突入してきた。
牛乳を勝手に飲んだ罰として駅前通りのコンビニにある限定ポテチを買ってこいだとさ。
罰ならさっき間接きめられたので罰だと思うのだが、姉に勝る弟などいないのですよ。
ここでまた「牛乳ごときでふざけんなー!」と騒いで戦争開始してもイイが、今日はそんな気分じゃない。
仕方ないので今日は素直にパシられますよ。
………なんて、考えてたら見慣れた黒髪のツインテール。ニナとこ二ツ菜さんを発見ですよ、はい。
昨日オレが座っててニナに声をかけられたベンチに、ね。
しかも明らかに元気がない。
自意識過剰でなければオレを探して、心配してくれているのだろう。
突然の出会いで不意に親しくなったワケだが…出会って1日でも確かにオレ達は友達だった。
その友達がいきなりいなくなるし…しかもいなくなる直前は凄く体調悪そうにしてたしな。
…なんか最近は出会って数日で仲良くなるケース多いな。
そんな事はどうでもいいがどうしよう。
「おい、あれ昨日可愛い娘を連れてった女じゃね?」
「だな。アイツも結構可愛いしツレが来る前に声かけとく?」
今度はニナが昨日の連中に声をかけられそうな事態に陥っている。
声をかけようとしてる連中も昨日と全く同じで、チャラ男やヤンキーという言葉を体現したかのような連中だ。
ここは…昨日の借りもあるし、貸し借りの問題じゃなくともニナを放ってはおけない。
向こうがオレをあかみんと分からなくとも、オレとしては彼女を友人だと思っている。
「わりぃわりぃ、お待たせ!早く帰ろうぜ!」
「………」
自然と、昨日ニナに声をかけられた時のような言葉が出てくる。
バリエーション?そんなモノはない。
アドリブなんて苦手だし、こういうのは勢いでなんとかしないとな。
ニナも昨日は勢いでオレを助けてくれた。
だからオレもニナの手首を勢いで掴んで…パシッとふり払われた。
「…誰よ、あんた。馴れ馴れしいわね」
「………」
ニナは至極、嫌そうな顔をしてオレを睨みつけてきた。
…そうだな、男のオレがニナに声をかけても後ろにいる連中と何も変わらないのかもしれない。
オレは…あかみんだけどあかみんじゃない。
昨日ニナと未成年ながら一緒にビール飲んだのも、一緒に寝たのも、一緒にバイトしたのも…。
オレだけど、オレじゃない。
それ以上はオレからは何もできなくて、ニナの睨みにたじろいで後ろに一歩下がる事しかできなかった。
ニナは、誰とも知れないオレを助けてくれたのに…
オレはニナに何もしてやれないのだと思うと悲しくて仕方がなかった。
このような感情は最近で二度目だ。
あかみんが自殺してオレを庇った時も、友達相手に何もしてやれなかった。
その時もほとんど付き合いのないヤツのためにあかみんは身を挺してくれたのに、オレはただただ無力で佇んで見守る事しかできない。
「…?あんた…」
「おいおい、お前ぇ。割り込んだ挙句に振られたんならどっか消えろよぉ!」
ニナが何か声を出そうとした所でオレは後ろから、見てる方が痛いくらいにピアスをした男に声をかけられて突き飛ばされた。
オレは…とことんショックで力が入らなかったのか無様に尻をつく。
そんなオレを見た茶髪のロン毛がオレを指さしながら…。
「ちょ…!マジでだせぇ!ウケるんですけど!」
ピアスを除いて他の3人ほどもオレを見て爆笑している。
なにが可笑しいんだよ。たしかに無力なオレは道化でしかないのだから仕方ない。オレの優しさや気持ちが分からないくせに笑ってるとかあり得ない。…あかみんか、エー君か分からないけどフォロー、いらないぜ。




