美菜子さん
二ツ菜さんとの会話やゲームが終わったのは、二ツ菜さん電池切れしたみたいにプツンと倒れ豪快に眠りだしたのが原因だった。
…二日酔いとか、大丈夫なのかね。
ちなみにあかみんの身体はアルコールに強いみたいで、あまり酔った感覚はしない。
とりあえず、二ツ菜さんのを抱きかかえてお母さんに部屋を聞いて運ぶ。
てか、お母さんもこんな時間まで起きてたんだ。
仕事が土日休みで、休みと前日は夜更かしするタイプらしい。
「あの、いきなりお邪魔してすみませんでした。今更の自己紹介ですが……赤坂 明美と言います」
「あら、ご丁寧にどうも。私は黒井 美菜子。よろしくね」
…お母さん、こんな時間まで夜更かしして何やってるのかと思ったら食卓でノートパソコン立ち上げてネットゲームやってるよ。
オレも最近はやってないがゲーム好きな男子高校生だから分かる。ネットゲームってどうしても夜更かししちゃったりするよな。
「本当にすみません。いきなりどこの誰とも分からない私を泊めてくださって。」
「あら、気にしないでいいのに。むしろ引っ越ししたばかりでお友達のいないニナちゃんに友達ができて凄く嬉しそうだったから」
「…単に酔っぱらってたようにしか見えなかったですけど」
「ふふ、前の場所じゃ酔っぱらった姿すら友達に見せた事もないんだけどね。ほら、あの娘って人間観察がクセというか、他人を観察して弱み握っちゃったりして怖いーって言われて友達も少なかったんだから」
それはオレも素直に感じた二ツ菜さんの感想だった。
あの怖いと感じてしまうほどの二ツ菜さんの仕草は癖というか素みたいで、どうしても真っ先に他人の観察をしての把握から関係が始まってしまうらしい。
けれど二ツ菜さん自身は人懐っこくて明るい性格で、少しばかり考えなしかもしれない。初対面のオレを家にあげている事からも。
だから深く考えずに、友達を引き留めたりするのに弱みを握ってしまったりするのかも。
失礼な表現で二ツ菜さんを語るなら『能力の高いお馬鹿さん』といったところだろうか。
「寝る前にお水でも飲む?麦茶でよければ冷たいのもあるけど」
「い、いえお構いなく…」
なかなか寝付かないオレに気を使ったのか美菜子さんは飲み物を勧めてくる。
けれどオレが寝付かないのは、喉が渇いたとかではなくて…。
…このまま寝て、大丈夫なのかという心配なのだ。
多分、としか把握していないがオレはそのうちあかみんの身体から元のオレの身体に戻るらしい。
けれど、いつ戻るか分からない。朝起きたらあかみんが男になっていて二ツ菜さんを、美菜子さんを驚かせてしまうかもしれない。
そう考えると…正直、2人に迷惑という気持ちより怖いという気持ちが表に出て眠れない。
「…何か、心配な事でもあるのかしら」
「まぁ、そんなところです…」
この家を今からにでも出ていくべきなのだろうか。
けれど、ここまで来て2人の親切を断る理由が思いつかなかった。
だって、この2人はとことん優しいだけで、居心地は凄く良い物だし。
そう、延々と悩んでると二ツ菜さんはノートパソコンを閉じ、オレの肩に手を載せて二ツ菜さんの部屋を目がけてUターンさせる。
「あ、あの…?」
「何かニナちゃんから聞いた事情以外の物があるのかもしれないけれど、こういう時はとにかく寝て英気をつけましょ。それにこういう時は人肌の温度が一番聞くんだから」
つまり二ツ菜さん、美菜子さん、オレと3人一緒に寝ようって事か?
「いやいやいや!オレは床でいいんでお気になさらず!」
「あら、明美ちゃんってオレっ子だったの?明美ちゃんの素が見れて嬉しいわぁ」
「ちょ、ホント、そんな事を言ってないでオレの事は気にしないでください!」
二ツ菜さんは可愛いし、美菜子さんも子持ちとは思えないほどに結構美人だった。
ウチのただのオバサンにしか見えない残念な母さんと違って。
なのに、そんな2人に囲まれて睡眠とかオレの男の理性がヤバい。
…あれ?元に戻るのが怖いから眠れなかったんだっけ?
そんな悩みがあっさり飛んで女性2人に囲まれて寝るのにドキドキしている事に気が付くと、また頭痛が酷くなってきた。
「はーい、今日はそろそろ寝ましょうねー」
「どわっ!?」
二ツ菜さんが寝るベッドに放り出されるオレ。
すぐさま逃げようとするが、二ツ菜さんが抱き枕を抱え込むように抱き付いてくる。
「ん~…はなさなぃ~…」
「ちょっ!?」
「あら、本当に明美ちゃんの事気に入ったみたいね。じゃぁ私も」
美菜子さんまでベットに来てオレに抱き付いてくる。
いや、恥ずかしいし暑いし離れてほしいんだが!
せめて暴れようとしたが2人に完全にロックされてオレは動けない。
…このまま、諦めて大人しくなる事しかオレはできなかった。
どうか身体がオレに戻りませんように戻りませんように。




