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ボクシング部一年全員図書館へ

 四人は図書館に着いた。康平は亜樹に電話をし、着いた旨と四人がいる事を伝えた。


「亜樹は綾香と一緒に、早目に図書館へ来るって言ってたよ」

 康平が、ロビーの椅子に座っている三人へそう言うと、有馬が怪訝な顔をした。

「綾香って、内海さんの妹だろ? 大丈夫なのか?」


「綾香は性格も凄くいいし、俺や健太とも仲いいし友達だよ。兄さんは、逆に喜んでくれてるみたいだから大丈夫だよ」


 康平に言われて、有馬は安心したような顔になった。


「……ところで康平は、山口と付き合ってるのか?」


「い、いや。亜樹とも友達だよ。……結構助けて貰ってるけど」


「相当助けて貰ってるみたいだけど、康平と亜樹は友達だよ。ついでに俺もな。……弁当食う前に、六人分の席を確保しないとな。荷物持って付いて来てくれよ」


 健太は荷物を持って中へ入っていった。六人が座れるテーブルに、高校生の男女二人組が座っていた。健太はその二人に事情を話し、別の席へ移動して貰う事になった。四人は、それぞれ丁寧にお礼を言って頭を下げた。


 康平は、健太のそういう所に何時も感心していた。自分は気が利かない。見習いたい。そう思った。


 六人分のノートや勉強道具を置いて、四人はロビーで弁当を食べ始めた。途中で喉が渇いた康平は、自動販売機でジュースを買おうと思った。


 有馬と白鳥が水を飲みに行くのを見て、康平はジュースを買うのを止めて、一緒に水を飲みにいった。健太も付いてきた。



 食べ終わる頃、亜樹と綾香が図書館に入った。ロビーにいる康平を見掛けて近付いた。亜樹が話し掛けた。

「友達の康平から聞いたけど、二人はボクシング部なんだよね。はじめまして、私は山口亜樹って言います。今日は宜しくね。……健太は、たまに図書館で一緒に勉強してる友達です」


「私は内海綾香です。亜樹と康平と健太は友達です。……知ってると思うから言うけど、兄貴は気が短い人だけど、私には気を遣わないで下さいね」


 男子と話す事もあってか、彼女達は固い自己紹介になった。


「俺は有馬猛。白鳥と康平、健太とは友達だよ。内海さんは怒ると怖かったけど、凄く面倒見のいい人だったんで尊敬してるよ」

 有馬の話を聞いて、綾香はホッとしたようだ。彼の気遣いに亜樹も口許を綻ばせた。


「ぼ、僕は、し、白鳥翔です。う、内海さんには、い、一生懸命教えて貰ったんで尊敬しています」


「白鳥君、そんなに緊張しなくていいからね」

 綾香が優しくそう言うと、元々赤い白鳥の顔が、更に赤くなった。だが、白鳥の話は終わらなかった。


「あ、有難う。有馬とは友達で、こ、康平と健太も、と、友達だと思ってます」

 白鳥は、自信無さげに康平と健太をチラッと見た。


「白鳥、何言ってんだ。俺はとっくに友達だと思ってたよ」

「そうそう、俺も康平も夏休みにクリームコロッケを買った時から、友達だと思ってるよ」

 白鳥は、二人に言われて嬉しそうな顔になった。


 亜樹が不安な顔で、図書室の方を見た。

「……これから六人で勉強だけど、一緒に出来るかしら。テスト期間だから、他の生徒もいるみたいだし」


「そこは健太があそこにいる二人から、席を譲って貰って確保したよ」有馬が答えた。


「……そう、健太有難う。あの二人には、私達もお礼を言わないとね」


 亜樹と綾香が、席を譲ってくれた二人にお礼を言った後、亜樹が五人に相談した。

「席をどうしようか? ……私は前半綾香と健太が両隣になるといいんだけど」


「俺は白鳥に教わるつもりだから、端でいいよ」

 有馬が端の席に座ると、隣の真ん中の席に白鳥を座らせた。


「有馬君、有難う。じゃあ、私はここね」

 亜樹は白鳥の正面の真ん中の席に座った。健太と綾香は亜樹の両隣に座り、康平は白鳥の隣に座る事になった。


 勉強を始めようと、それぞれ教科書とノートを出した時、亜樹が康平に言った。

「康平は、今は数学やらないで。休憩終わったら数学やってよ」


「……あぁ、そうか。ありがとな」


 六人は勉強を始めた。有馬の質問に、白鳥はドモりながら全て教えていた。


 綾香が亜樹に質問した。聞き終えて教え始めた亜樹は、

「…………私が教えるのはここまでよ。友達だからホントはもっと教えたいけど、ここから先は自分の力で覚えた方が理解深まるから、頑張って」

と言って励ました。


 今度は健太が、まとめて四つ質問した。亜樹は二つを途中まで説明した。そして、

「健太は要領良くしようとしないの! ……二つはここまで教えれば自力で理解出来るでしょ? 後の二つは問題外ね。教科書とノートをキチンと読めば、健太だったら理解出来る筈よ」

と言って突き放した。

 

「スゲースパルタだな」有馬が目を丸くしていた。


 健太は意外にも、ニヤニヤして答えた。

「そうか? 俺にはまだ優しいよ。まだね」


「白鳥君は、亜樹をずっと見てるけど。……もしかして見惚れちゃった?」

 綾香が、クスっと笑った。


 白鳥が慌てた。

「あ、い、いや、そういう訳じゃなくて、お、教え方が凄くいいと思って。……山口さんは凄いです」


「白鳥君やめて。恥ずかしいから。……でも、有馬君には私の教え方は、難しいんじゃないかな? 彼は赤点さえ取らなければいいと思ってるみたいだし」


「え、そんな事も分かるの?」今度は白鳥が目を丸くしている。


「理解しようと頑張ってたけど、半分位は分かったフリして次へ進めていたからね」


「白鳥、ワリィ。半分は頭がショートして聞き流してたよ」

 有馬は苦笑しながら頭を掻いた。


「あ、有馬の赤点さえ取らなければいいっていうのは、有馬本人から聞いてたから大丈夫だけど、や、山口さんは本当に凄過ぎるよ」


「山口も凄いけど、お前も凄いよ。……テスト休み無しで、休みは家の手伝いしながらトップだもんな」


「……い、いや違うんだ有馬。ただ勉強しかする事無かっただけだし、……お、俺の事はもういいから、べ、勉強続けようよ」


 六人は午後三時まで勉強を続けた。


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