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お互いバレバレのプレゼント

 翌日、学校へ向かう康平は、電車を降りた時、健太とバッタリ会った。

 健太が先に話し掛けた。

「綾香にするプレゼントなんだけど、Tシャツがいいと思うんだよ」


「……前に真由さんは、身に付けない物がいいって言ってたけど……」


「姉ちゃんはそう言ってたけどさ、綾香はバスケ部で、練習の途中Tシャツを替える時もあっただろ? 替えのTシャツは多い方が彼女も助かると思うんだよ」


「それは確かに言えるかも……」


「だろ? 第二体育館へ行った時は、綾香がどんな柄のシャツを来ているか見て、好みをチェックしないとな」


 康平は感心していた。だが、不思議に思った事もあった。


「……健太、本当は綾香の事が今も好きなんじゃないのか?」


「……たぶん、前みたく彼女にしたい程好きじゃないと思う。……勘違いするなよ。綾香に幻滅した所があった訳じゃないし、彼女は可愛いし性格も凄くいいしな。……ただ、友達としては好きだけどさ」


「……そうか」

 康平にも未知の領域で、これ以上何も言えなかった。


「それは置いといて、プレゼントは綾香の家で渡す事になってるけど、俺が康平に渡すのはアレでいいんだよな?」


「そうそう、そして、俺が健太に渡すのもアレさ。綾香や亜樹みたく、節約してなかったからな。たぶん、プレゼント渡してすぐに開ける事はないと思うから、大丈夫だと思うよ」


「……綾香も同じ事考えてんじゃね〜かな?」


「俺と健太がお互い渡す、金の掛からないプレゼントか?」


「違う違う、俺達に渡すやつだよ。たぶんTシャツかも知れないぞ。確率は高いと思う」


「ヤバいな。バスケ部は明日からテスト休みだからさ。最近寒いからずっと第二体育館で長袖の運動着着てたし、今日俺達もTシャツを見せないと、綾香も大変かも知れないからな」


「それに、……柄はいいとして、問題はサイズだよ。直接訊いたらプレゼントが何かバレるし、コッソリ物色したら、想像付かない位の大問題だしな」


「そこは亜樹に訊いてみるよ。……こればっかりはどうしようも無い事だしさ」


「ん? 私がどうかしたの?」

 康平と健太を見掛けた亜樹が、早足で近付いてきていた。


 健太が一部始終を話すと、亜樹は納得したような顔をした。

「……サイズは切実な問題ね。……君達も綾香にプレゼントを渡す仲間なんだし、教えてあげる。部活の時のサイズはМだよ」


 意外そうな顔をする康平と健太に、亜樹は慌てて付け加えた。

「ぶ、部活の時のサイズだからね。動き易いように、大きめのTシャツを着るのよ。綾香はスタイルいいんだから」



 暫く無言で歩いた三人だったが、校門を通った時、亜樹が口を開いた。

「……部活で着るサイズと言っても、女の子のサイズを聞いたんだから、君達もTシャツのサイズを教えなさいよ」


 健太が「はは〜ん、そういう事ね」と言ってニヤリとした後に答えた。

「俺はМだよ。ピッタリしたサイズじゃないと、着た気がしないんだよな」


「俺はLだよ。……ところで、そういう事って? ……あぁ、そういう事か」


 亜樹がクスッと笑った。

「さすがに鈍感な康平でも理解したようね。……今日は寒いけど、Tシャツになれるの?」


「……今日は三年生が部活を見に来るから、俺達第二体育館だし、寒さは少しだったらいけるんじゃないか」

 健太が答えた。


「……二人共、風邪引かないようにね。……私も相談されたんだから、見に言ってあげるね」


「わざわざいいよ……あっ! ……亜樹こそ風邪引かないようにな」


 康平を見て、亜樹が諦めたような顔になった。

「……ここは、さり気なく察して欲しかったけど、……まぁ康平だしね」


「康平に高望みは禁物だよ。昨日だって、亜樹に困ってるフリをして何がいいか教えて貰えばって言ったら、友達は騙したくないってゴネられたからな。今まで友達との駆け引きは一切無い奴だったからさ」


「ば、ばか! 健太は大袈裟に言ってるだけだからな」


「分かってるわよ。大体は本当の事なのよね。……遅刻になっちゃうから早く教室へ行くわよ」

 三人は、早足で教室へ歩いていった。



 昼休みのチャイムが鳴ると、亜樹はスッと立ち上がって別のクラスへ歩いていった。

 

 戻って食事を終えた亜樹が、康平に話し掛けた。

「綾香にも事情は伝えたからね。頃合いを見てTシャツになるって言ってたよ。……今は、向こうも長袖のジャージだからね」


「……綾香も風邪引かないといいな。……お互いバレバレのプレゼントになっちゃったね」


 康平が苦笑すると、亜樹が小さく笑った。

「……そういうプレゼントがあってもいいと思うよ。私も従兄弟以外は、男子にプレゼントするのは初めてだしね」



 放課後、門田麗奈が亜樹の席に近付いた。

「綾香から伝言だけど、替えのTシャツ忘れたとかで、家に戻るから部活遅れるって言ってたよ」


 麗奈は女子バスケ部員で、球技大会をきっかけに、亜樹と仲良くなっていた。


「君達の為に、お気に入りのTシャツ取りに行ってくれたんだね」


「綾香には悪い事したな」


「何言ってるのか分からないけど、綾香はご機嫌だったわよ。……そう言えば、亜樹も朝の体育から機嫌良かったわね。……何か怪しいけど、まぁ上手くやんなさいよ」


「れ、麗奈は、何言ってるのかしら。私は何時もご機嫌よ」


「亜樹は可愛いわね。クールに見えるけど、何気に分かり易いからさ。……じゃあ、私は部活に行くからね」

 麗奈は悪戯っぽい顔になって教室を出ていった。



 部活では、やや不自然さはあったものの、康平と健太、そして綾香がそれぞれTシャツ姿を見せる事が出来た。


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