第一話 始まりの理科室
「やだやだやだ!!!お母さん、死んじゃやだよ!」
病室だろうか?幼い女の子の泣き声が響き渡る。
その声は傍のベットで横たえている母にも届いた。
しかし、病魔に侵されている彼女はきっともう声を出すことすら辛いのだろう。
それでも力を振り絞って女の子を何とか安心させようとしている。
ただ、現実は残酷。母親の死が間近に迫っていることは誰がどう見ても明らかである。
そして次の瞬間、無理に笑っていた母親から笑みが消えかける。
「○○、〜〜〜〜〜。~~さんを、~~てくれた~~~~~みたいに、~~~~~~~~~られる~~な、~~子に~~てね………………。」
母親はゆっくり、しかし確実に。一文字一文字、言の葉をまるで力を入れるように紡いでいた。
女の子は涙で真っ赤になった顔をこすり、声にならない声を出しながら頷く。
それをきっと、見届けたであろう母親はやさしげな顔で目を閉じた。
女の子の泣き声は、一層大きくなるばかり。
「~~か!、~うか!!早く起きてよ!」
「う、う〜〜ん……?」
私は眠い目をこすりながら身体を起こす。身体の至る所が痛い。どうやら机に寄りかかって寝落ちしてたようだ。
手元の時計をちらりと見る。時刻はちょうど6時30分。始業まではまだ1時間以上ある。
「まだ寝かしてくれよ〜。」
「ダーメーでーす!こっちにだって色々準備があるんだから。今起きないともう起こしに来ないよ?まったく。毎朝起こしにくる私の身にもなってみろってんだ。」
「それに関しては真に感謝しております故。」
「宜しい。…というか、まーた夜遅くまで実験してたでしょ。こんなこと続けてるといつか痛い目みるよ?」
「はいはい、すでに全身はバキバキですよ〜。つまり、もう痛い目にはあってるから問題ナシ。」
「そういうことじゃねーよ!それに、それはちゃんとベットで寝てないからでしょ!! って、こんな朝っぱらから叫ばさないでよ。ただでさえ、今日は春休み明けテストがあってげんなりしてるってのに。」
「おお、そうかそうか。それは大変だな。是非とも頑張ってくれ。」
「あぁ、クソ!他人事だからってさぁ。まったく風香が羨ましいよ。なんせこと一番難しい理系教科に至ってはノー勉でも余裕なんだし。」
「ま、それは他の人より早く勉強してただけだし。今回のテストもちゃんと勉強してれば余裕って聞いたけど。」
「この私がきちんと勉強するタイプに見えます?」
「…………見えない。」
「そういうこと。あぁホント憂鬱だ〜〜。テストが都合良く無くならないかな?あそうだ、風香!アナタ、天才科学者なんだから何とかしてよ〜!頭の良くなる薬とかさ!」
「馬鹿につける薬はない。私も文系教科は勉強したんだし自業自得でしょ。」
「えぇ〜、つれないなぁ。まぁ、無いもんはしょうがないけどさぁ〜。てか、実験ばっかだったのにいつの間に勉強したの?」
その時、不意に腹の虫が急に暴れだした。そういえばいつもはゆりかが作ってくれるのに昨日と一昨日は風邪で寝込んでたせいでご飯を食べていなかった。
「そうだそうだ。そういえば弁当渡すの忘れてた。えーっと、はいこれ今日の弁当と朝ごはんのパン。」
「マジナイス。いつも助かってる。」
「ついでに、髪も治したげる。」
「いいよ別に。しかも毎日やってるし。」
「そりゃあ、毎日やるもんだし。それに、髪は女の命でしょ!あなた顔は無駄にいいんだから、もう少し身だしなみにも気を使って欲しいんだけどな〜。」
そんな話をしつつ、持ってきてくれたパンを頬張る。
本当に彼女、高取ゆりかは勉強以外は完璧だ。運動から家事までドンと来いという感じは少々羨ましい。
一方この私、山崎風香はこんなんでも一応世間では天才科学者として名を知られている。といっても、物心ついた時から科学に没頭してた私はいつの間にかそういうことになっていたわけだが。
こんな感じで勉強とそれ以外で私と割と正反対な彼女だが、私達は小さい頃からの顔見知り、いわゆる幼なじみというやつだった。そもそも私自身両親もおらず、そんなに人と関わってこなかったが、幸いにも私の科学の才能を見込んだスポンサー企業がいたお陰で生活に困ることはなかった。しかし、家事など分からない私に彼女は常に世話を焼いてくれた。当然、恩を感じていた私は彼女の高校受験を手伝ってあげて、晴れて2人同時に合格し今に至っている。
「そういえば、理科研の活動はどうなったのさ?風香、今年から部長でしょ?」
そう。ちなみに研究室に寝泊まりするのが許されているのもうちの校長が特別に理科研名義で貸してくれているからである。
「研究成果も私のワンマンだし、そもそも部員も大して多くないし。部長なんて名ばかりでしょ。」
「あれ?部員って何人だっけ。」
「私と妹の風音入れても4人かな。しかも、こないだ引退した3年生の代わりに風音には無理言って入ってもらったし。」
「よ、よにん??少なすぎでしょ!?あ、後もうひとつ思い出したんだけど、風香大好き妹ちゃんが今日この時間まで来ないの珍しくない?」
「あぁ、風音はなんか委員会の仕事があるらしい。」
「なるほどね、っとよしっ!髪は整え終わった〜。やばっ、もうこんな時間か! んじゃ、私も部活の朝練あるからまた後で〜!」
彼女はそう言うやいなや理科室の扉を開けて駆け出していった。途端に理科室が静かになる。
(相変わらず騒がしかったな…)
と思いつつ、ゆりかを見送ってから開け放しの扉を閉め、HRまで昨日の実験の続きをしようと頭を働かせ始める。
ドタドタドタッ!ドタドタドタッ!
その時、廊下の向こうから何やら誰かが走ってきている音が聞こえた。
別に廊下を走る輩は別段珍しくない。自分も走ったこと自体はあるわけだし。走るということは何かに間に合いそうになくて焦ってるということだ。
(そんなに急ぐ用事なんてこの時間帯にあったか?)
そう思いつつ軽く流そうとした時、ガラッという音ともに扉が開けられた。そこには肩で息をするゆりかが立っていた。ゆりかは理科室に入ると直ぐに扉の鍵を施錠した。
「の、呪われ、、る!!」
「ゆりか!?どうしたんだ、忘れ物でもしたか?」
「ゆ、ゆれゆ、ゆゆうれがぁ・・・!」
「お、落ち着いて。何言ってるか分からん。一体全体何があったんだよ。」
「ゆ、ゆ、幽霊が出たんだよ!!私はもうおしまいだぁ!」
途端に肩の力が抜ける。
「ゆ、幽霊?……ブッ、アハハハハwww」
「ほ、ほんとに見たんだよ〜!」
「あのなゆりか。そういうのって九、いや十割は見間違えの類なんだよ。というか冷静に考えて、こんな時間に幽霊なんて出るわけな…………。」
私はそこまで言いかけて言葉を失った。どうやら人間、衝撃的なものを目にした時は言葉を失うものらしい。それもそのはず、全身が透けた人間が施錠したはずのドアをすり抜けて手を振っているのだから。
「で、、、出たぁ〜〜〜〜〜!!!!!!!」
そう言ってゆりかは泡を吹いて倒れた。
ふう「で、アンタの名前は?」
私はあの後、とりあえず倒れたゆりかを机の上に寝かせて例の幽霊から話を聞くことにした。驚くことにこの幽霊、人間と普通に意思疎通が可能らしい。謎である。
??「う〜ん、分かんない?」
ふう「なんで疑問符がついてるんだよ。こっちが聞きたいんだけど。」
??「そう言われても、分かんないもんは分かんないし。」
ふう「うーん、名前すら分かんないんじゃ、正体は突き止められそうにないな……。」
??「な、なんかごめんね?色々と……。」
ふう「ああ、別にいいんだ。ゆりかも驚いただけだろうし。ただ、これはとりあえず多分に世紀の大発見だからな。正体を突き止めたくなるのは、科学者の性なんだよ。」
??「えーっと、山崎さんだっけ?」
ふう「風香でいい。妹もいるし、堅苦しいのは好きじゃない。」
??「じゃあ、風香。この歳で科学者なの?凄いね!!」
ふう「まぁ、科学者なんて肩書きにそこまで価値はないよ。読んで字のごとく『科学をする者』は誰でも科学者さ。私の場合はスポンサーもいてお金も貰ってるからプロの分類に入るかもしれないけどね。」
??「へぇ〜!」
そう言って幽霊は妙に関心しているように頷いた。
と、同時に先程机の上に寝かしたゆりかが目を覚ました。
ゆり「あ、あれ?ここは……?って、まだいる〜〜!!南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……。」
ふう「そんなに怯えなくても大丈夫だよ。とりあえず害は無いみたいだし。」
ゆり「ほ、ほんと?」
ふう「うん。さっきも普通に会話してたし。」
ゆり「てか、会話できるの?」
ふう「どうやらそうみたい。」
??「あ、あの〜。」
ゆり「ひゃい!!」
先程まで窓際にいた幽霊は、ふわりふわりと宙を舞いゆりかに近づいた。
??「なんか、必要以上に驚かせてしまってごめんね。自分のことが視える人に初めて会ったもんだから嬉しくなっちゃって……。」
ゆり「あ、ぜ、全然。まったく怖くなかったし、大丈夫だったから気にしないで!」
ふう「嘘つけ、今も若干膝震えてるでしょ。それより、私たち以外には姿、見えてなかったの?」
??「うん。あなたたちが私が見えた、初めての人だよ。」
ふう「うーん、ますます謎が深まる。」
ゆり「しかし、よく普通に調査できるね。」
ふう「当たり前でしょ。これは世紀の大発見だからね。」
そこでHR五分前知らせるチャイムが鳴り響く。
ふう「さ、早速詳しい検査に入りたいけど、流石にそろそろHRの時間みたいだし、とりあえず放課後に詳しい検査をしよう。幽霊もここにいてくれて構わないからな。今日は何の授業もなかったはずだし。なんかあったら2-9に居るから来てくれ。じゃあ、行くよゆりか。」
ゆり「ちょ、ちょっと待って!どうせなら名前をつけない?幽霊って言いづらいし。」
ふう「確かに。まぁゆりかが決めていいよ。こういうのって最初に見つけた人が名付けるもんだし。」
ゆり「えっ?えーと、幽霊さんは何がいいとかある?」
??「あ、無茶苦茶な名前でなければなんでもいいよ〜。」
ゆり「そうだなぁ、じゃあ私たちの名前とお化けであることを拝借して『おばか……、イテッ!」
ふう「まったくお馬鹿なのはゆりかだよ。それなら無難に、霊なんだからレイカとかでいいでしょ。」
レイ「レイカ、レイカ、いいね!じゃあ今日から私はレイカで!」
ふう「よし、決まり。さ、今度こそ遅刻する前にとっととHR行くよ。」
そう言ってゆりかを引っ張って、今度は私が理科室から飛び出すのだった。
~放課後~
授業が終わると、私はいつもすぐに理科室へ向かう。しかも今日は未知の生物?のオマケ付き。早速部長権限で部活を中止にした私は、いつにも増して早く理科室へ向かうのだった。
理科室に到着すると、すでに少し早く授業が終わったのであろうゆりかと件の『レイカ』が中で話していた。見た感じ、どうやら少し打ち解けて仲良くなったらしい。
ふう「よし!早速実験を始めるからゆりかとレイカも協力して欲しい。」
ゆり「良いけど……、できることある?」
レイ「私は何すればいいの?」
「うーんとそうだな、とりあえずDNA…は無理だから周りの気体でも採取してみるか。とりあえずレイカはじっとしてて。ゆりかはあそこの棚にある気体採取器を取ってきて。あとは放射線量も測ってみるかぁ……。」
ゆり「な、なかなかやることが多い……。」
~そんなこんなで最終下校時刻の9時前~
ふう「う〜ん、何も分からん!!」
ゆり「そんな誇らしげに言うことじゃなくない?」
ふう「だってしょうがないでしょ。逆にこんだけ調べ続けて分かんないって面白くない?」
ゆり「時々アンタのことが良く分かんなくなるわ……。しっかしまぁ、疲っっっれたあ!」
レイ「お疲れ様〜。大変だったね、あれから4時間弱調べ続けてたもんね〜。」
ゆり「ホントだよ!この人、人使い荒いし!!」
??「本当に何も分からなかったの?」
急に背後から声がした。振り向くとそこには、一人のある生徒が立っていた。
ふう「そうだね……って、風音!急に後ろに立たないで!!」
かざ「ごめん、ごめん。しかし、この子が今話題のレイカちゃんかぁ。驚いた、まさかこの目で本物の幽霊を見ることになるとは。」
レイ「えーっと、誰ですか?」
ふう「あ、そういえば知らないのか。この子は山崎風音、私の妹。」
かざ「気軽に風音って呼んでね!」
ふう「てか、何で知ってる風なのさ。レイカを初見で見ても驚かないし。」
かざ「あぁ、それなら今日そこのゆりかさんに『偶然』会って聞いたからね。」
ふう「なるほど。(何故に偶然を強調したん?)」
ゆり(あの人、隠してるけど裏ではシスコンすぎて姉に会えなかった日は、姉の様子を無茶苦茶事細かに聞いてくるんだよなぁ……。)
ふう「で、まぁ話を戻すけど。少ないが分かったこともある。まず1つ、少なくともレイカは生物ではない。」
レイ「そんなの、見れば分かるよ?」
ふう「あぁ、そうじゃなくて。生物には必ず共通する特徴ってのがあるんだ。外界と膜で仕切られている、代謝を行う、自分の複製を作る、大別するとこの三つだ。んで、レイカはおそらくこのどれにも当てはまらないってこと。」
ゆり「確かにレイカがご飯食べるとこも想像出来ないし、ましてやすり抜けとかしている時点で外と分ける膜も無さそう。」
かざ「去年生物の授業でやった気がする。でもまぁ、結局分かんないってことかぁ。」
ふう「まぁ、実験で分かったわけでは無いけど後もう1つ挙げると、っていうかなんならこっちの方が大事かもしれないことは……」
レイ「ことは……?」
ふう「これ見て。」
そう言って私はノートパソコンを取り出し、ある動画を再生した。
かざ「これは?」
ふう「これは理科室に今日取り付けといた廊下に面したカメラの映像。ほら、誰もレイカのこと見てないでしょ。」
ゆり「それがどうしたん?そんなの元々朝から分かってたことじゃん。」
ふう「でも、風音はレイカが見える。」
かざ「確かに……!で、つまりどういうこと??」
ふう「この学校でレイカが見えてる人はまとめると私、風音、ゆりかの3人でしょ?他にもいるかもだけど、現状では明らかに私たち周辺に見える人が多すぎる。これって恐らくだけど、見える人には何らかの法則性があるんだと思う。」
レイ「おぉ〜!でも、法則ってどんなの?」
ふう「それは、分かんない。でも例えば昔どっかでレイカにあったことがあるとか?」
かざ「可能性はあるね。ここの3人で遊んだことなんて数え切れないくらいあるし。」
ゆり「それでいうと1つ気になってたんだけど、レイカっていつぐらいから意識があるん?」
レイ「う〜ん、多分3日くらい前かなぁ。それ以前の記憶が全くないし。この身体、お腹も空かないし眠くもならないしで時間感覚分からなくなるんだよ……。」
ふう「となると、①本当に3日前から何らかの形で発生したか②元々いたけど3日前以前に何らかの事件で起こって記憶を失ったかのどちらかが考えられる仮説か。」
ゆり「②だと大分手がかりを見つけるのが難しいかもね。」
かざ「その可能性を考えるなら場所も重要でしょ。日本語を話せてる時点で日本にいた事があるのは間違いないと思うし。」
ゆり「あいしー。」
レイ「場所は………………、分かんない。けど、暗くて狭かった場所から何とか抜け出して、彷徨っているうちにここに着いたって感じかなぁ。」
ふう「これだけの情報じゃ、流石に分からん。まぁ、薄くなっていってるとかもないから制限時間があるわけでも無さそうだし、気長に考えていけばいいさ。」
ゆり「それもそうか。」
ピンポンパンポン〜♩
完全下校時刻になりました。現在残っている生徒は速やかに下校してください。
ピンポンパンポン〜♩
ふう「お、もうそんな時間か。一旦シャワーでも浴びてくるかぁ。」
かざ「お姉ちゃん、今日こそはいっしょに帰ってもらうよ!あとついでにテヲツナイデタガイニミツメアイナガラアイヲカタリアッテ……」
ふう「なんて?手をツナに入れたら爪が痛かった?」
かざ「違うよ!」
ゆり「まぁでも、今日は一旦久々に家に帰った方がいいんじゃない?警備員とかの見えない人にレイカと話してるところを見られてヤバい奴扱いされたら、今後理科室貸してもらえなくなるかもしれないし。」
ふう「それは確かにキツイ。となるとレイカをどうするかだけど……。」
レイ「夜の間は暇だし出来れば誰かの家に行きたいな。」
ゆり「私も協力してあげたいんだけど、如何せん親にユリカと話してるところ見られたら同じくヤバいし……。」
ふう「となると、私たちの家が適任ってわけか。親もいないし。じゃあそうするかぁ。」
かざ「う〜〜んまぁ、いいんだけど。レイカ!」
レイ「は、はい!」
かざ「絶対に私の部屋には入らないこと!そして万一部屋に入ってしまったまたは見てしまった場合、絶対に誰にも口外しないこと!OK?」
レイ「了解!」
ふう「ごめんよ、レイカ。風音も思春期だから。許してやってくれ。」
レイ「思、春期……?とにかく分かった!」
ゆり(どうせ風香の秘蔵写真集とかが大量にあるのを隠したいだけなんだよなぁ……。)
ふう「じゃあ、帰りますか。なんか風音の手料理が急に食べたくなってきた。」
かざ「任せて!腕によりをかけていいもん作るから!」
レイ「いいな、いいな〜!私も食べられたらな〜!」
ゆり「変なもんだけは入れないであげてよ……。」
私は壁にかかっている鍵をとって施錠し、電気を消す。
下駄箱は1階、対して私達のいる理科室は3階。本当だったらすぐそこにあるエレベーターを使いたいところだが、生憎生徒は使えない決まりなのだ。
にしても、話し込んでしまったせいですでに廊下の電気は消されていて、真っ暗。少々ビビりなゆりかは辺りを警戒しながら階段へと歩を進める。
そうして私達が階段に差し掛かった時、下駄箱へと続く下の階段……ではなく上の階段から妙な視線を感じる。
ふと目線を上げると上から人影が落ちてきていることに気づいた。間もなく全員この事態に気づき、必死に受け止めようと手を伸ばす。しかし、遅すぎた。
ゴン、という鈍い音が辺りに響き階段の踊り場に反響する。誰かが階段をかけ登る足音がする。
瞬間、目の前で起きていることの理解を脳が拒む。
ここからが、はじまり。
私はまだ、運命に押され始めたばっかりだ。
~続く~




