表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双  作者: 四郎
第二章:Project Re:Try始動 ― 世界を“腹一杯”に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/137

第96話 教室の片隅から始まる、文化祭革命

10月上旬。

放課後の校舎には、文化祭の準備を始めたクラスの声が響いていた。

どこの教室も机を動かしたり、ダンボールを切ったりと騒がしい。

ガムテープの匂いと笑い声が、秋の夕方の空気に混ざって漂っている。


だが、そんな中でも――この場所だけは静かだった。

校舎の一番奥、情報処理部の部室。

扉を開けた瞬間、カチカチとキーボードを叩く音がいくつも重なる。



「お、来たか。新入部員たち」

相川がイヤホンを外し、くるりと椅子を回した。


「新入部員たちって……白々しいな」

佐藤が苦笑する。


「仮入部の佐久間です。今日からよろしくお願いします」

「同じく佐藤っす。よろしくお願いします!」


俺と佐藤は軽く頭を下げた。

部室の奥には二人の部員がいて、それぞれパソコンの画面に集中している。

キーボードを叩く音が静かに重なり、画面の光が彼らの横顔を照らしていた。


外の文化祭準備の喧騒とは対照的に、この部屋だけは落ち着いていて――

不思議と“ものづくりの空気”が漂っていた。


相川は軽く肩をすくめて、部室の奥を指した。

「一応紹介しとく。こっちは吉田。文化祭当日の展示サポートを頼んでる。ポスター作成とか会場レイアウト担当だ」

「よろしく。グラフィック系はちょっとかじってるだけだけど、がんばるよ」

吉田が穏やかに笑って、マウスから手を離した。


「それと、村上。機材のセッティングとか、展示中のトラブル対応を任せてる。機械系に強いからな」

「当日は機材トラブル起きないように祈っとけよ」

村上がぼそっと言って笑い、再びノートPCに視線を戻した。


相川が腕を組みながら言う。

「吉田は三年、村上はお前らと同じ二年だ。

試作の開発自体は俺が進めてるけど、文化祭当日はチームでやる。展示を“形にする”ってのも立派な制作だ」


その言葉に、部室の空気がわずかに締まった。


(開発、展示、発表……

やることは山ほどある)


「今日は文化祭の出展計画をまとめる。座ってくれ」

相川がホワイトボードの前に立ち、ペンをキャップから抜いた。

白い板の上にはすでに大きく、こう書かれていた。


《TRY-LOG 展示計画》


「ここからが本番だな」

相川の声に、自然と背筋が伸びた。



「まず文化祭の出展は、情報処理部の“部活展示”枠を使う。

体育館横の特設ブースを一つ確保した。電源もWi-Fiも通る」

そう言いながら、相川が部室の奥のプリントを取り出す。

そこには文化祭の会場レイアウト図が印刷されていた。


「展示のテーマは、“TRY-LOGで努力を見える化する”」

相川がペンで円を描きながら、ホワイトボードに太い線を引いた。

「来場者に実際に“努力体験”をしてもらう。たとえばスクワット10回とか、腕立て伏せでもいい。

それをアプリに入力すると、すぐに“グラフ”と“応援メッセージ”が画面に出る」


「つまり、“自分の頑張りが目に見える”ってことか」

佐藤が腕を組んでうなずく。


「そう。で、その結果は“TRYカード”っていう小さなカードにして渡す予定だ」

相川がもう一枚のプリントを示した。

そこには白地のカードデザインが印刷されていて、下の方にQRコードがある。


「スマホで読み取ると、自分の結果ページが開く。

“今日の努力”がちゃんと残るってわけだ」


佐藤が感心したように笑う。

「へぇ、体験して終わりじゃなくて、ちゃんと“持ち帰れる”んだな」


「……いいですね、本格的だ」

俺は思わずつぶやく。

これまで“夢”だったアプリが、いま現実の展示計画として進んでいる。

その感覚が、じわりと胸に広がっていった。


「……一つ提案があります」

俺はホワイトボードを見ながら言った。

「努力の数値やグラフだけじゃなくて、“キャラクター”を育てるようにできないですか?

たとえば、運動を続けると体力系のキャラに、勉強なら知識系のキャラに進化するとか。

努力の方向で性格や見た目が少しずつ変わるような……そんな仕組みです」


相川が目を細めて、少し考える。

「……なるほど。“努力の可視化”を“キャラ成長”で見せるわけか」

佐藤が笑った。

「それ、めっちゃ文化祭ウケするやつじゃん。見た目でも分かるし!」


相川はホワイトボードに“TRYキャラ(仮)”と書き足した。

「方向性としては悪くない。時間との兼ね合いもあるが、シンプルな進化パターンなら実装できるかもしれない」



「次に、展示イメージだ」

相川がホワイトボードの前に立つ。

「――大体こんな感じだな」

ペンを走らせるたび、ブースのレイアウトが少しずつ形になっていった。


《展示ブース構成(案)》

•左側:TRY-LOGのロゴパネル

 → アプリのロゴとキャッチコピー「努力を、形に。」を表示。

•中央:体験コーナー(PC・タブレット)

 → 来場者がアプリを直接操作。

  「今日の努力」を入力すると、グラフやキャラクターが動いて反応する。

•右側:大型モニター

 → 入力結果をリアルタイムで映す。

  “努力が見える”瞬間をみんなに見せる仕掛け。

•奥の壁:開発ポスター&写真展示

 → TRY-LOGの制作過程や試作写真、メモなどを展示。


「この配置なら、通りがかった人にも“何のアプリか”が伝わる」

相川がマーカーを置きながら言う。


佐藤がうなずいた。

「確かに。体験できるのが真ん中ってのがいいっすね。自然に目が行く」


「そうだな。見せたいのは“努力の結果”じゃなく、“努力の形”だ」

その一言に、部屋の空気がわずかに引き締まる。


俺はホワイトボードを見つめながら、小さく息をのんだ。

(……まさにそれだ。いまの俺たち自身が、その“努力の形”を作ってる)



相川がホワイトボードの左端に線を引いた。

「じゃあ、当日の担当をざっと決めておくか」


ペン先が走る。白板には次々と名前と役割が並んでいく。


《文化祭当日・担当わり》

•展示リーダー(まとめ役):佐久間

 → 全体の進行、来場者への説明、発表タイムのプレゼン担当。

•開発・操作チェック:相川

 → アプリの動作確認、パソコンやタブレットの準備、トラブル対応。

•広報・呼び込み:佐藤

 → 来場者の案内、パンフレット配布、SNSでの宣伝や写真投稿。

•デザイン・装飾:吉田

 → 展示ブースの飾りつけ、ポスター・紹介ボード作成。

•機材サポート:村上

 → 電源や機器のセッティング、ケーブル管理、動作チェック補助。


「こんな感じで行く。細かい部分はリハーサルしながら調整だな」

相川がボードを見ながら言う。


佐藤が腕を組んで笑った。

「つまり当日一番動くのは佐久間ってことか」

「社長なんだから当然だろ」

相川の冷静なツッコミに、部室に小さな笑いが広がった。


俺はホワイトボードを見つめながら、深くうなずいた。

(これはもう“部活発表”じゃない。俺たちの“本気の作品発表”だ)



「で、問題が一つある」

相川がペンを止めた。

「印刷代と備品費。その他もろもろ、予算が足りない」


「文化祭の部費、いくらです?」

「5,000円。……全然足りない」

部室に乾いた笑いが広がる。


「ポスターと説明パネル、あとQRカード印刷。

見積もり出したら――20,000円はかかる」


「もちろん、会社の運営費から出しましょう」

思わず口をついて出た。


相川が少し驚いたように目を細めた。

「……助かる。でも、できるだけ節約する。

必要なとこだけ、使わせてもらう」


「じゃ、俺らのポスターも自作でいくか」

佐藤がノートを開きながら言う。

「背景は白ベース、タイトルは“TRY-LOG~努力の見える世界へ~”。

サブタイトルは……『その努力、数字にしてみない?』でどうだ」


「いいじゃん、それ」

俺は笑いながら答えた。

その言葉、妙に響いた。

まるで、俺たち自身へのメッセージみたいだった。



全員の確認が終わると、窓の外はもう赤く染まっていた。

グラウンドからは野球部の掛け声が聞こえ、夕陽が机をオレンジ色に照らす。

部室の空気が少しずつ静まり、パソコンのファンの音だけが残る。


「よし、展示計画はこれでいこう」

相川がホワイトボードに大きく線を引いた。

「次は、実際に動くデモを仕上げる。ここからは開発と並行だ」


「了解」

「任せろ」

自然と声が重なった。


相川が最後にホワイトボードの一番上に書き足す。


TRY-LOG ~努力の見える世界へ~


ペンを置いたあと、相川がふっと笑って俺のほうを見た。

「……じゃあ、社長。最後に一言、頼む」


一瞬、言葉が詰まる。

でも、気づけば自然と口が動いていた。


「目に見えない努力を、誰かの“力”に変える。――それが、俺たちのやることだ。

ここから、俺たちの世界を変えていこう」


静まり返った部室の中で、その言葉だけが響いた。

一拍置いて、相川がふっと笑う。

「……いいな。社長の言葉、締まるじゃねぇか」


佐藤が肩をすくめて笑った。

「よし、じゃあやってやるか。なんか文化祭、本気で燃えてきたな」


吉田がモニターから目を離して言う。

「巻き込まれた形だけど、悪くないよ。こういうの、嫌いじゃない」


村上も苦笑いしながら頷く。

「機材のチェックは任せろ。絶対トラブらせねぇから」


自然と笑いがこぼれた。

その輪の中で、俺は小さく息を吸う。


(仲間って、こういうことなんだろうな)


夕陽の光がホワイトボードの文字を照らす。

TRY-LOG ~努力の見える世界へ~

その文字が、まるで新しいスタートラインのように輝いていた。



【Project Re:Try:動く形にする/第二段階レポート】


※【 】内は今回上昇分

◆日時:10月2日

◆目標:試作版稼働

◆進行状況:Phase.02 進行中


◆目的:

「“努力記録”を実際に“動く形”として再現する」

“見る”努力から、“触れる”努力へ。


◆メンバー構成:

・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)

 行動指数(筋力):38.5

 継続性(耐久力):34.0

 構想力(知力) :34.2

 共感力(魅力) :46.2

 SP:25/スキル保持数:31


・佐藤 大輝(COO/現場統括)/信頼度:83

・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:58


◆資産状況:

総資産:1,384,000円

内訳:試作版開発費 800,000円(使用中)/残資金 584,000円


◆進行状況:

・TRY-LOG 試作版 Ver.0.1 開発中

・文化祭展示計画確定(展示テーマ:「その努力、数字にしてみない?」)


◆次段階予定(Phase.02)

TRY-LOG 試作版完成

主な機能構成:

・努力を記録する

・グラフで“見える化”する

・休む日を記録できる

・AIが成長を言葉で返す

・努力タイプに応じた“TRYキャラ”の簡易進化


――これは報告書でもあり、俺たちの“航海日誌”でもある。

(記録者:佐久間陽斗)

読んでくださりありがとうございます。

文化祭に向けて動き出す回でした。

次回は、瑠奈の誕生日回です。少し甘くて、大切な夜を書きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ