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クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双  作者: 四郎
第一章:数値が証明する“信じる力”

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54/135

第54話 嫉妬で仕組まれたリンチ、だが俺だけスロー再生で別次元

五月下旬、放課後。

昇降口を過ぎ、裏庭に抜けるトタンの扉が風でカランと鳴った。呼び出しのメッセージ通りそこに向かう。

「話がある」

送り主は三橋隼人。人目を避けるには定番の場所だ。


角を曲がると、五人の男。学校ではいわゆる不良と呼ばれている連中。その中に三橋もいた。

三橋は壁にもたれ、腕を組んでいた。


「来たな、佐久間」


「話って何の――」


言い終わる前に、取り巻きが囲んでくる。靴底が砂利を噛む音が一斉に寄って来て、逃げ道を塞がれた。


「礼儀として、まず謝れよ」

三橋が唇だけで笑う。

「俺の座、奪ったことをさ」


「座?」眉が動く。

「もしかして人気とかの話なら、俺に謝る筋合いはない」


「はぁ? なに調子のってんだよ」

取り巻きの一人が詰め寄ってくる。


視界の片隅、半透明のウィンドウを呼び出す。反射で“数値”が出る。


【三橋 隼人】

身長178.0/体重70.0/体脂肪率12%

筋力23.0/耐久23.5/知力10.0/魅力25.0


(……やっぱり、全部こっちが上)


取り巻きもざっとスキャン。筋力20前後、耐久もそれぐらい、知力は全員一桁。

素行は荒そうだが、数値は平均よりちょっと上ぐらいか。

頭は平均以下だけどな。


「喧嘩するつもりはない。誤解なら――」


「誤解じゃねぇよ」


三橋の声が低く沈む。

「顔も背も、勉強もスポーツも……気づきゃ女の視線までお前に向いてる」

「それでモデル? ……どこまで欲張れば気が済むんだよ」


歪んだ嫉妬が、言葉に混ざる。

説得の道はないのかもしれない。だが一度だけ、試してみる。


「三橋。俺はお前の“敵”じゃない。学校は蹴落とし合う場所じゃないんだ。……比べるなら、相手は俺じゃなくて自分自身だ」

(――でも、こう言ったところで届かないんだろうな)


数秒、風だけが吹く。

次の瞬間、取り巻きの拳が横合いから突っ込んできた。頬すれすれ。反射で腕を上げ前腕で受ける。骨に衝撃が響く。


(……話し合い終了、か)


俺は意識を切り替える。

“恐怖心克服Lv1”がこの状況でも冷静でいさせてくれる。

“瞬発力アップ(小)”“スタミナ持久力+1”が体の動きを鋭くしてくれる。

だが――五人相手はさすがに無理だ。ここで一気に主導権を取る必要がある。


スキルショップを展開。視界にパネルが開く。



【戦闘系】

・痛覚制御Lv1(被弾時の硬直、痛み-30%/SP6)

・時界スライスLv1(5秒間、相手の動きが“1/4速”に見える/1日3回の使用制限あり/SP20)



(……これだ)


迷いなく、購入。


【スキル購入:時界スライスLv1(SP-20)】

【現在SP:0】


世界が、スイッチ一つで変わる。


砂利の跳ねが宙で止まったかのように見える。

――【時界スライスLv1】発動。

相手の動きが、通常の4分の1に引き延ばされる。肩の振り、足の軌道、口からこぼれた怒声までもが、低速の残響に変わった。


一人目。

重い手首を軽く払うだけで、流れがずれ、体が傾く。支えを奪われた足をすくえば、重力の方が早い。砂利を巻き上げて尻もち。


二人目。

鈍い蹴りが視界を横切る。遅すぎる。踏み込んで足を刈ると、地面に叩きつけられる音すら、間延びして耳に届いた。


三人目。

正面から突進。肩から迫るのがはっきり見える。半歩ずれ、首根っこを掴み、勢いを利用して足をかける。もんどり打って前のめりに崩れ落ちた。


――5秒後。

世界の速度が元に戻る。音が一気に押し寄せ、現実がぶつかってくる。


ドサッ、ドサッ――間を置いて二人が尻もちをつき、三人目が砂利に手をついた。


「な、なんだ今の……動きが見えなかった!」


三橋は動揺しているが、それでも飛びかかってきた。


「お前のせいで!この俺が……!」


三橋が前へ踏み出す。

サッカー部のエース――運動能力は確かに高い。速い。鋭い。

……だが、俺には“見える”。


二度目の《時界スライス》。

世界が切り替わる。音が遠のき、三橋の動きだけがスローに引き延ばされる。

5秒の猶予――再び。


振り抜かれる大振りのパンチ。

通常なら避けきれない速さだろう。だが、今は違う。

伸びきる前の腕を読み切り、俺はその肩をがっちりと掴んだ。

――それだけで、もう拳は前に出ない。


「ぐっ……!」

三橋の目が驚愕に見開かれる。


俺はつま先を踏みつけ、軽く胸を押した。

スローモーションの世界で、その動きは致命的な重さを持つ。


そして――5秒終了。

世界の速度が戻ると同時に、三橋の体はバランスを失い、そのまま地面に沈み込んだ。


俺は低く言い放つ。

「……これで終わりにしろ。これ以上やれば――本当に取り返しがつかなくなる」


沈黙。

三橋の喉がごくりと鳴る。視線が揺れ、やがて口元に歪な笑みが浮かんだ。

それは強がりじゃない。負けを認めた人間の、苦笑だった。


「……お前、ずるいよ。顔も、頭も、身長も、スポーツも……最後には喧嘩まで強いって。勝てるわけねえだろ」


俺は息を整え、視線を逸らさず答える。

「ずるいと思うなら、それでいい」

一拍置いて、線を引くように言葉を続けた。

「……でも、人を集めて殴らせるのは違う。嫉妬を理由にして、誰かを傷つけていいはずがない」


三橋の笑みが消え、静かな敗北の色だけが残った。


取り巻きが息を呑む。

三橋は顔を歪め、うつむいた。拳がほどけ、砂利に落ちた音が小さく響く。


「……悪かった」


まっすぐな謝罪ではない。だが今は、それで十分だ。

俺は一人ずつ目を配り、顎で出口を示す。

「帰れ」


足音がばらばらに散っていく。

三橋だけが最後に残り、背を向けて歩き出す直前、振り向かずに言った。


「俺、サッカー……一度やめる。もう一回、ちゃんとやり直すわ」


そう言って去っていく三橋を見送りながら、俺はふっと力が抜けた。

膝が少し笑っている。スキルで補正していても、緊張で張り詰めていた体は正直だ。


視界にパネルが灯る。



【クエスト達成】

・タイトル:「強者の立ち居振る舞い」

・内容:人数不利の対峙で無用な被害を出さずに収束させる

・報酬:SP+5/筋力+1.3/耐久+0.5



空を仰いで、長く息を吐く。

(誰も大怪我をさせずに済んだ……)


昇降口へ戻る途中、夕陽が校舎の窓に差し込む。反射した光が眩しくて目を細めたとき、胸ポケットのスマホが震えた。

画面には、短いメッセージ。


――《大丈夫?今日、なんか顔が険しかったよ。無理しないでね》

差出人:水城遥


思わず笑ってしまう。心配はさせたくない。

《平気。ちょっとお腹痛かっただけ》と返してから、もう一度空を見る。


三橋の嫉妬や悔しさは、すぐには消えないだろう。けど――人のせいにさえしなければ、また立ち直れる。


学校を出ると風が少しだけ柔らかく、遠くで新しい季節の匂いがした。



※【 】内は今回上昇分

現在のステータス(五月下旬・校舎裏の決着後)

・名前:佐久間 陽斗

・年齢:16

・身長:180.8cm

・体重:63.0kg/体脂肪率:9.0%

・筋力:27.0【+1.3】

・耐久:27.0【+0.5】

・知力:27.2

・魅力:38.2

・資産(現金):330,000円

・投資中:60,000円(評価額:65,500円/利益:+5,500円)

・総資産:406,500円

・SP:5【−15】

・スキル:17(展開可能)【+1】

・称号:注目の存在/ヒーロー/聖夜を共に/女子人気独占

・特別イベント:

 水城遥(進行中/好感度:87/好意)

 一ノ瀬凛(進行中/好感度:71/好意)

 星野瑠奈(進行中/好感度:70/好意)

ここまでお付き合いいただきありがとうございます!またよろしくお願いします。

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