第51話 カリスマ美少女モデルに彼氏宣言されて、街中で赤っ恥
「……ご飯って、お前……」
思わず言葉が途切れる。さっきまで撮影でさんざん振り回されていたのに、今度はプライベートの誘い。頭がついていかない。
瑠奈はわざとらしく首を傾げ、にっと笑う。
「なに? 先輩、もしかして私と二人きりで行くの、恥ずかしい?」
「べ、別にそういうわけじゃ……!」
否定しながらも、耳が熱くなるのを隠せない。
編集者やスタッフが片づけを始め、現場は徐々に解散ムードになっていく。
瑠奈は俺の返事を待つ間、くるくると髪を指に絡ませながら、どこか余裕の笑みを浮かべていた。
「じゃあ決まりね。ほら、早く行こ」
強引に俺の腕を掴む。
「おいっ、まだ何も言ってねぇ!」
「言ってないけど、顔に“行きます”って書いてあるもん」
――完全にペースを握られてる。
―
連れて行かれたのは、撮影現場近くのオシャレなカフェだった。
外観からして雑誌に出てきそうな店で、窓際の席にはカップルが多い。
ドアを開けた瞬間、周囲の視線が一斉に瑠奈に向く。
「え、あれ……星野瑠奈じゃない?」
「ほんとだ、モデルの……!」
ざわめきが広がる。
俺まで一緒に見られている気がして、胃がきゅっと縮む。
「おい、目立ってんぞ……」
「仕方ないでしょ、私、有名なんだから」
さらりと言って笑う瑠奈。
そして、不意に俺の肩に腕を回し――堂々と宣言した。
「この人、私の彼氏なんだ」
「はぁっ!?」
思わず声が裏返ってしまう。カフェにいた人たちの視線が一斉に刺さる。
「ちょっ、お前ふざけんな! なんでそんなこと……!」
慌てる俺をよそに、瑠奈はいたずらっぽくウィンク。
「だって、さっきまで“カップル役”やってたんだし、自然でしょ?」
「自然じゃねえよ!」
テーブルにつく前から完全に振り回されっぱなしだった。
それでも、瑠奈は楽しそうに俺を見つめている。
本気でからかってるのか、それとも――。
店員に案内されて窓際の席へ。
メニューを広げると、瑠奈はさっと俺の方へ身を寄せてきた。
「先輩はどれにする? 甘いの好き? それともカフェラテ?」
「……なんでそんな近いんだよ」
「いいじゃん。彼氏彼女に見える方が楽しいでしょ」
「俺たちはそんな関係じゃ――」
「じゃあ、なってみる?」
小声でそう囁かれ、心臓が跳ねた。
(……やべぇ。普段のクラスじゃ絶対ありえない距離感だろこれ。慣れてなさすぎて、ドキドキが止まらねぇ……)
―
【クエスト発生】
・タイトル:「星野瑠奈と二人きりの食事」
・内容:彼女のペースに巻き込まれずに乗り切れ
・報酬:SP+3/魅力+1
―
料理を待つ間も、瑠奈は話題を切らさない。
「先輩って普段どんなとこ行くの?」
「え? いや……家にいることが多いかな、あとは本屋とか」
「真面目~。じゃあ今度、私がもっとオシャレなとこ連れてってあげる」
「いや、俺なんかには似合わねぇよ」
「ふふっ、似合うに決まってる。だって、さっきの撮影でもすごく自然だったじゃん」
瑠奈の瞳がまっすぐで、冗談に聞こえない。
――どんどん距離を詰めてくる彼女に、完全に押されっぱなしだった。
―
料理が運ばれてきた。
瑠奈は写真を撮ろうとスマホを構え、俺に顔を寄せる。
「はい先輩、笑って!」
「は? 今かよ……」
カシャッ。
画面を確認した瑠奈は、満足げににやりと笑った。
「ほらね。先輩、やっぱりモデル向き」
「……もう勘弁してくれ」
「ダメ。どんどん慣れてもらうんだから」
食事中も瑠奈は遠慮がなかった。
俺のチキンをひょいと奪って口に入れ、満面の笑み。
「んっ、美味しい! 先輩の選択、正解~!」
「勝手に食うな!」
「じゃあ交換。はい、あーん」
差し出されたフォーク。
「いや、無理だろそれは!」
「なんで? 間接キス? ふふ、気にしすぎ」
「気にするに決まってんだろ!」
「ほんと、純粋だねぇ先輩」
彼女の笑顔に、周りのカップル席からもくすくす笑いが漏れる。
俺だけが翻弄されっぱなしで、完全に雰囲気を作られていた。
食後、デザートが運ばれてくる。
瑠奈は小さなケーキをフォークですくい、唐突に差し出した。
「はい、先輩。今度はこっちから」
「……マジでやるのか?」
「もちろん」
周囲の視線を感じながら、仕方なく口を開ける。
甘さが舌に広がった瞬間、瑠奈は嬉しそうに笑った。
「やっぱ似合うな~。先輩は私の隣が一番似合う」
ドキドキしすぎて落ち着かない。
だが、その笑顔はどこか本気にも見えて――。
―
【クエスト達成】
・SP+3
・魅力+1
―
食事を終え、カフェを出ると夜の街は柔らかな灯りに包まれていた。
瑠奈は少し前を歩き、振り返って俺に笑いかける。
「ねえ先輩。今日、めっちゃ楽しかった」
「……俺は、振り回されただけだ」
「でも笑ってたよ? 撮影のときも、さっきも」
図星を突かれ、言葉を失う。
「私、先輩といると退屈しないんだ。これからも、いっぱい一緒に遊びたいな」
夜風に乗るその声は、軽いようでいて、妙に胸に残った。
――この日、俺と瑠奈の距離は一気に縮まった。好感度スキルがそう告げている。
【星野瑠奈(進行中/好感度:70/好意)】
―
※【 】内は今回上昇分
【現在のステータス(ゴールデンウィーク・食事後)】
・名前:佐久間 陽斗
・年齢:16
・身長:180.8cm
・体重:63.0kg
・体脂肪率:9.0%
・筋力:25.7
・耐久:26.5
・知力:27.2
・魅力:38.2【+1】
・資産(現金):290,000円
・投資中:60,000円(評価額:65,500円/利益:+5,500円)
・総資産:355,500円
・SP:10【+3】
・スキル:16(展開可能)
・称号:注目の存在/ヒーロー/聖夜を共に/女子人気独占
・特別イベント:
水城遥(進行中/好感度:87/好意)
一ノ瀬凛(進行中/好感度:71/好意)
星野瑠奈(進行中/好感度:70/好意)【+5】
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