表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双  作者: 四郎
第一章:数値が証明する“信じる力”

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/133

第43話 二年生デビューで爆イケ進化

四月六日。

春の風が校舎に流れ込む朝。

昇降口の前では、新しいクラス表を覗き込む生徒たちの声が交差していた。

そのざわめきの中、俺は静かに校門をくぐる。


――瞬間。


空気が変わった。

目線を感じる。正面から、横から、背後から。

まるで見知らぬ転校生でも現れたような視線が、俺に突き刺さっていた。


けれど、俺は笑う。

(……まあ、驚くのも無理はない)


わずか一か月前まで、俺の身長は170にも満たなかった。

それが今では176センチ。

鏡を見るたび、世界の見え方そのものが変わっていた。


背筋を伸ばして歩くたび、風が違う。

足音が前よりも響く。

制服の肩は少し張り、胸のボタンがきつい。

“肉体覚醒”――あのスキルは、ただの数値変化じゃなかった。

自信という鎧を身にまとうような感覚があった。



教室。二年一組。

扉を開けた瞬間、教室の空気が一拍止まった。


「……あれ、誰?」

「いや、佐久間……だよな?」

「嘘でしょ? あんなにでかかったっけ?」


十数人分の視線が一斉に突き刺さる。

机を押しのけてまで覗き込むやつもいる。

驚きとざわめきの中、俺は静かに席へ向かった。


肩幅と胸板に押し広げられた布地。

同じ制服でも、まるで仕立てが違うように見えるのだろう。

視界が高い。手を伸ばせば、教室の空気の層が違って感じる。

不思議な優越感があった。


「いや、なんか……カッコよくなってない?」

「え、ほんとに佐久間? 顔つきまで変わってるし」

「てか背ぇ伸びすぎじゃない?」


女子たちの声が一斉に広がる。

誰かが笑い、誰かが小声で「いい意味で反則」とつぶやく。


「佐久間くん、席近いね。よろしく!」

「ねえ、休み時間に話そうよ!」

「もしノート忘れたら写してあげるから!」


言葉が重なり、笑顔が弾ける。

一瞬、教室が“俺中心”に回り出したような錯覚さえした。


――中学の頃なんて、存在すら空気だったのに。

声をかけられるどころか、目も合わせてもらえなかった俺が。


(……外見で、こんなに変わるんだな)


そんな中、男子の方は――当然、反応が違った。


「チッ……なんだよあいつ」

「急にモテはじめやがって」

「調子乗ってる感じ、ムカつくな」


刺すような小声が背中をかすめる。

それでも、怖くはなかった。

あの頃の俺なら萎縮していたかもしれない。

けれど今は、積み上げた数字が盾になっている。

筋力、耐久、知力、魅力――全部が「努力の証明」だった。


「……佐久間くん」


低く、よく通る声。

教室の奥から聞こえたその一言に、自然と体が反応した。

一ノ瀬凛。

黒髪を耳の後ろでまとめ、背筋をぴんと伸ばして座る姿。

変わらず静かで、凛としている。


けれど――その瞳が、わずかに揺れていた。

普段はほとんど感情を表に出さない彼女が、驚きを隠せていない。


「同じクラス、だね。席も近いし」

「あと……背、伸びたよね」


淡々とした口調。

それでも、頬がほんのり赤く染まっていくのが見えた。

俺は思わず目を逸らす。


「まあ、ちょっとな」


軽く返したつもりが、声がかすれた。

一ノ瀬は視線を戻さないまま、窓の外を見た。

だが、口元がわずかに揺れていた。

照れなのか、認めたくない感情なのか。

その“微妙な変化”が、逆に心を掴んで離さなかった。



午前の授業。

黒板の文字が視界に流れていく。

けれど、意識の半分は常に周囲に向いていた。

女子たちの囁き。男子の沈黙。

一ノ瀬の横顔。

すべてが妙に鮮やかだった。


昼休み。

弁当を広げる暇もなく、机の周りに人が集まる。


「佐久間くん、今日一緒に食べない?」

「ねえ、どこで髪切ってるの?」

「部活、まだ入ってないんでしょ? もしよかったら――」


矢継ぎ早に飛び交う言葉。

まるで人気タレントの囲み取材だ。


「また今度な」

笑ってかわす。

だが、男子たちの眉間には皺が寄っていた。


「おい、調子乗ってんじゃねえぞ」

「……くそ、何が違うんだ」


小さな声が、確かに聞こえる。

けれど、それももう恐れじゃなく、実感だった。

“俺は変わった”。

その現実を彼らが証明してくれていた。



昼食を終えて廊下に出る。

春の陽射しがガラスを透けて差し込み、床に金色の模様を描いていた。


「陽斗くん!」


振り返ると、水城遥が立っていた。

首元のリボンを少し緩め、息を弾ませながら。

瞳が驚きと戸惑いの光で揺れている。


「……別人かと思った。ほんとにびっくりした」

「まあ、春休みにちょっと頑張ったからな」


軽く笑う。

だが、彼女はすぐに首を横に振った。


「“ちょっと”で済む変化じゃないよ……本気で驚いたもん」


その声は穏やかだったが、わずかに震えていた。

嬉しさと、焦りと、何か言葉にならない感情が混ざっていた。


「ありがとな」

素直にそう言うと、彼女は少し照れくさそうに笑った。


春風が髪を揺らし、二人の間を通り抜ける。

その一瞬だけ、時間が止まったようだった。



午後の授業。

ノートをとっていると、またあの視線を感じる。

振り向くと、一ノ瀬がじっとこちらを見ていた。


「……どうかしたか?」

「別に。ただ……やっぱり、変わった」


それだけ言って、彼女は視線を逸らす。

その横顔が少しだけ赤い。

何も言えなくなった俺は、ただ小さく笑うしかなかった。



放課後。

夕陽が校舎の窓を染める。

昇降口で靴を履き替えながら、一日を思い返す。


女子の笑顔。男子の嫉妬。

一ノ瀬の驚き。遥の微笑み。


全部が、自分の積み重ねを証明してくれていた。


(これが、俺の“成長の証”だ)


拳を握る。

温かな風が吹き抜ける。

新しい一年が、確かに始まった。



※【 】内は今回上昇分

【現在のステータス(四月六日・新学期初日)】

・名前:佐久間 陽斗

・年齢:16

・身長:176.1cm

・体重:62.0kg

・体脂肪率:9.0%

・筋力:25.4

・耐久:26.2

・知力:27.2

・魅力:31.7

・資産(現金):279,000円

・投資中:60,000円(評価額:65,500円/利益:+5,500円)

・総資産:344,500円

・SP:2

・スキル:15(展開可能)

・称号:注目の存在/ヒーロー/聖夜を共に

・特別イベント:

 水城遥(進行中/好感度:82/好意)

 一ノ瀬凛(進行中/好感度:66/信頼)

読んでいただきありがとうございます!肉体覚醒を果たした陽斗、クラスで一気に注目の的に。ここから二年生編が本格スタートです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ