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クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双  作者: 四郎
第一章:数値が証明する“信じる力”

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第26話 株式投資、解禁――数字で強くなる俺の新しい力

十月の風は、夏の名残をすっかり洗い流したように冷たさを帯びていた。

窓際のカーテンがふわりと揺れ、教室の空気を一層澄ませていく。

体育祭、文化祭、球技大会――立て続けに続いた行事の熱狂が嘘のように、

今は教室全体に穏やかな時間が流れていた。


ノートを閉じたクラスメイトの笑い声。

窓の外では、銀杏の葉がほんの少し色を変え始めている。

季節は確かに次の段階へ進んでいた。


だけど、俺の胸の奥では――まだ“何か”が燃えていた。


(資産ブーストで毎日+2,000円。二週間で約3万、ひと月で6万。確かに助かってる。

でも……それだけでいいのか?)


増えていく数字を見て、心のどこかがくすぐったいように満たされる。

貧乏性だった俺にとって、数字が増える感覚は純粋に快感だった。

前まではコンビニの缶コーヒーすら躊躇していたのに、

いまは“ちょっと高い物”を選ぶ余裕がある。

妹に「ケチ!」と笑われることもなくなった。


それでも、心のどこかで引っかかっていた。


(筋力や耐久は、クエストをこなせば確実に伸びていく。

けど“資産”は……増えない。自動で2,000円、そこで止まりだ)


生活が安定しても、何かが足りない。

“努力”が“結果”に変わる快感――

その成長実感を、また味わいたくなっていた。



机の引き出しを開けると、

中から一冊のノートが顔を出した。

ページをめくると、びっしりと走り書きされたメモ。


『分散投資』『リスク管理』『長期視点』――

夏休み中、眠気と闘いながら読み込んだ投資入門書の記録だ。

あのときは呪文みたいに難しかった言葉たちが、

いまはなぜか、すんなり頭に入ってくる。


(……資産を“使って”増やせるなら、それもまた、ひとつの“努力”だ)


そう思った瞬間、視界に青白い光が走った。



【スキルショップ更新】

・SP6 → 財務感覚Lv1(数字への直感力が冴える/知力+0.5)

・SP10 → 交渉術Lv1(取引・交渉で+補正/魅力+0.5)

・SP15 → リスク予知Lv1(損失や危険を事前に察知できる/判定補正)



(……やっぱり来た。まるで、俺の考えを読んだみたいに)


胸の奥がざわつく。

だが、もう迷いはなかった。

ここで立ち止まるなら、“数字を持つだけの人間”で終わる。



【スキル購入:財務感覚Lv1(SP-6)】



一瞬、脳の奥に閃光が走ったような感覚。

数字が、まるでパズルのピースみたいに整然と並び始める。

チャートの形、統計の流れ、金の動き――

すべてが「見える」ようになっていく。


「……これなら、戦えるかも」


小さく呟いて、スマホを開く。

証券アプリを立ち上げると、見慣れた数字が並んでいた。

九月初め、体育祭前に恐る恐る投資した“たった1万円”。


(そうだ……あれが、最初の挑戦だった)


当時の評価額は10,050円。

わずか50円の利益に、馬鹿みたいに喜んだ。

だが今――画面に映る数字は違っていた。


【評価額:10,700円(投資額10,000円/利益+700円)】


「……増えてる」


たった700円。

けれど、銀行に一年預けても利子は数円しかつかない。

それが数週間で“700”になる現実に、胸が高鳴った。


(数字が、生きてるみたいだ……)


机の上で拳を握る。

この感覚、ステータスが上がったときと同じだ。

俺は確かに、また“強くなっている”。


(ゲームの中だけじゃない。現実でも、努力は数値になる)


だが、すぐに別の感情が顔を出す。

――不安。

株は上がることもあれば、下がることもある。

元本を失う可能性だってある。

それでも、やらなければ意味がない。


(ここで止まったら、何も変わらない)


証券口座の残高を開く。

そこには、もう少し大きな挑戦ができるだけの金額がある。


「次は……5万円だ」


指先がかすかに震える。

だが、“財務感覚Lv1”を手に入れた今は、

恐怖よりも“戦略”が先に浮かんでくる。


(この銘柄は短期で伸びる。リスクを分散すれば、ダメージは抑えられる)

頭の中で自然に分析が組み立てられていく。


その時、視界の隅に新たな文字が浮かんだ。



【クエスト発生】

・内容:新たに5万円を投資せよ

・報酬:知力+2.5/SP+5



「……来たな」


体育祭のスタートラインよりも、文化祭の開店よりも、

今この瞬間のほうがずっと緊張していた。


「やってやる」


息を止め、画面の“購入”ボタンに指を置く。

タップの音がやけに大きく響いた気がした。


資産の数字が減り、代わりにチャートが動き出す。

消費ではなく、挑戦。

それが俺にとっての“努力の新しい形”だった。


汗ばんだ手をズボンで拭いながら、もう一度画面を見つめる。

自分の中で、何かが静かに切り替わっていくのを感じた。


(逃げるな。ここで踏み出さなきゃ、一生“現状維持”だ)


心臓が跳ねる。

光のパネルがゆっくりと閉じていく。


――そして、指が動いた。


俺は、次の一歩を押し込んだ。



※【 】内は今回上昇分

【現在のステータス(十月中旬・投資決意後)】

・名前:佐久間 陽斗

・年齢:16

・身長:168.1cm(+8)

・体重:62.0kg

・体脂肪率:15.0%

・筋力:21.9(+1.5)

・耐久:21.7(+0.5)

・知力:14.2(+1.5)

・魅力:26.7(+3.0)

・資産(現金):198,000円(+2000/日)

・投資中:10,000円(評価額:10,700円/利益+700円)

・総資産:208,700円

・SP:22.0 【−6】

・スキル:12(展開可能)【+1】

・称号:注目の存在/ヒーロー

・特別イベント:水城遥との関係(進行中)

ここまで来てくださった皆さんに感謝!感想を書いていただければ、めちゃくちゃ嬉しいです!

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