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クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双  作者: 四郎
第一章:数値が証明する“信じる力”

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第22話 文化祭の戦場、その先に待つ“自由行動”

文化祭の朝――。

校門を越えた瞬間、空気がいつもと違うのが分かった。

カラフルな看板、屋台から漂う甘い香り、体育館から聞こえる軽音のギター。

校舎全体がまるで祭りの熱に包まれている。

普段は眠そうな通学路も、今日だけは足取りが軽い。


俺たちのクラスは「喫茶店」。

机を寄せてテーブルを作り、黒板にチョークでメニューを書き、

入口には段ボールで作った看板とメニュー表を立てた。

白いエプロンを腰に巻き、鏡の前に立った瞬間――

いつもより、少しだけ胸が張れた。


(……変わったな、俺)


昔なら、自分の姿なんて気にも留めなかった。

でも今日は違う。自分の立つ場所が、ちゃんとある。


「開店でーす!」

クラス委員の声が響くと同時に、拍手と笑い声があがる。

ガラス越しに見える最初の来客。廊下の向こうまで列が伸びていた。

その瞬間、心の奥に火が灯った。

――俺たちの文化祭が、始まった。



午前中は、思っていたより順調だった。

俺は会計係としてレジを守り、釣り銭を素早く渡し、注文の計算も抜けなくこなす。

暗記力スキルのおかげで、メニューと価格は頭にすべて入っている。

レシート代わりの伝票も整っていて、客の流れもスムーズ。


「佐久間、計算早っ!」

「いや助かるわー!」


笑顔で声をかけられるたび、胸の奥で小さな達成感が弾けた。

数字の正確さが、ちゃんと人の役に立っている――その事実が嬉しかった。


だが、昼が近づくにつれ、教室は一変する。


「佐久間! ホールが全然足りない!」


振り返ると、入り口の外まで長蛇の列。

廊下はお客で埋まり、通路では立ち止まる親子、

注文を待つ人、料理が届かず不安そうに席を見渡す客。

ざわつきが不満に変わり、クラスメイトの顔に焦りが浮かぶ。



【クエスト発生】

・内容:接客を手伝い、客の流れを改善せよ

・報酬:魅力+0.5/SP+3



(……やるしかない)


俺は前線へ飛び出した。


「二名様、こちらの席へどうぞ!」

「三名様は奥のテーブルです、椅子を追加しますね!」


声を張り上げ、身振りで誘導する。

会話術スキルが、確かに動いているのが分かった。

焦りが消え、声が通る。動線の渋滞が、少しずつ解けていく。


だが、それでも混乱は完全には収まらない。

子どもを抱えた母親が、困ったように立ち尽くしていた。


「奥の席なら、ベビーカーのまま入れます!」

「ありがとうございます、助かります!」


隣ではスーツ姿の男性が腕時計を見ていた。

「お待たせしてすみません。こちらのメニューだけでも、先にご覧ください」

軽く頭を下げると、男性は笑って頷いた。

その一瞬の笑顔に、緊張が少しほどける。



【スキルショップ】

・SP10 → 笑顔強化Lv1(自然で疲れにくい笑顔を保てる/魅力+1補正)

・SP5 → 魅力+1(ステータス直接上昇)



(……今の俺に必要なのは、これだ)


迷わず、両方購入。


【スキル購入:笑顔強化Lv1(SP-10)】

【スキル購入:魅力+1(SP-5)】


頬が自然に上がり、呼吸が整う。

焦燥の中でも、不思議と落ち着いていた。


「お待たせしました! 奥の席へどうぞ!」

「ありがとうございます!」


返ってくる笑顔が増える。

教室の空気が、さっきまでの混乱から温かさに変わっていくのがわかった。

小さな子どもがレジ前で真似をして、「いらっしゃいませー!」と叫ぶ。

客席から笑いが起き、クラスメイトの表情にようやく余裕が戻った。


【クエスト達成/魅力+0.5/SP+3】


(……よし。やり切った)



閉店後。

片付けを終えると、教室中から自然に拍手が起きた。


「佐久間、マジで助かった!」

「今日のMVPは間違いなくお前だって!」


背中を叩かれるたび、くすぐったいような誇らしさが胸に広がる。

いつも無関心だったクラスメイトが笑ってくれている。

それだけで、今日の疲れなんて吹き飛ぶ気がした。


そのとき――。


「佐久間くん!」


入り口の方から、あの声がした。

振り返ると、水城遥が立っていた。

黒髪が夕日に透け、両手には紙袋。教室中が一瞬でざわめく。


「今日の接客、本当にすごかったよ」

「え、あ……ありがとう」


彼女の笑顔を直視できず、思わず視線を逸らす。

「悠真もね、『いらっしゃいませ!』って真似してたよ」

「悠真が……?来てたのか」


思わず笑いが漏れる。

多分、“スキルの効果”なんかじゃない。

純粋に、心の底から嬉しかった。


「これ、うちのクラスの焼き菓子。差し入れ」

紙袋を受け取ると、甘い香りがふわっと広がった。


「ありがとう」

「ふふ……頑張ってる姿、かっこよかったよ」


胸が高鳴る。

文化祭の喧騒が遠くに霞んで、彼女の声だけが鮮明に残った。



※【 】内は今回上昇分

【現在のステータス(文化祭一日目・夜)】

・名前:佐久間 陽斗

・年齢:16

・身長:168.1cm(+8cm)

・体重:62.0kg

・体脂肪率:15.0%

・筋力:18.7(+1)

・耐久:18.5

・知力:13.7(+1)

・魅力:20.2(+2.5)【+3】

・資産:168,080円(+2000/日)

・SP:3.0【+3】

・スキル:早食いLv1/資産ブースト(+2000/日)/暗記力+10%/身体強化Lv1/恐怖心克服Lv1/瞬発力アップ(小)/スタミナ持久力+1/会話術Lv1/笑顔強化Lv1

・特別イベント:水城遥との出会い(進行中)



(数字は伸びた。でも――今日の一番の成果は、

“人の役に立てた”って実感だった)


机の上に焼き菓子の包みを置き、スマホの画面を閉じる。


(明日は文化祭二日目、自由行動……)

(遥と悠真と回る予定だけど……なんか、緊張するな)


胸の奥が少し熱くなる。

“数字の努力”の向こう側に、初めて感じる――心の鼓動。

俺はそのまま、静かに目を閉じた。

読んでいただき、ありがとうございました!ぜひまた遊びに来てください。

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― 新着の感想 ―
いやぁ、歳上はちょっと難しいんじゃないかな? 僕はクラブで一つ上の先輩女性達に可愛がられたが、いつも弟扱い。
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