生まれ変わっても。
あなたは、来世の存在を信じますか。
人一人ずつに魂が宿っているなら、同じ魂の人を愛するのは。
それは、それは。とても宝くじの1等を3回ぐらい続けて引くよりも、随分低い確率だと思いませんか。
こねる。こねる。
百均で買ったさらさらな物体。魔法の砂。
砂は手に取ると零れ、砂粒になり、決して掴めず。
受け皿のようにして掬わなければ、手のひらに残ることは無い。
叩いてみると、ふつうに硬い。かと思えば、指1本のうえに、丸めた砂の塊を乗せてみると、すぐ、自重で崩れる。
水で固めなくても押せば固まり、力を加えなければ脆くなる。
不思議だなあ。
不思議なのは、この歳で砂遊びしている、わたしのほうか。
頭の中は空回りしている。
こねり、お城も作れず、小山も造らず。
丸めて、指一本に乗せて、さらさらと崩れていく。
さてそれは、人生かな。
わたしという存在を語るに、欠かせない人がいる。
わたしの、ともだちの、ともだちくらいにいる、疎遠なひと。
なあくん。
なあくんは、親戚だ。第四等親族ぐらい。
それでいて、ともだちのしろはちゃんの、ともだち。
遠い人間だ。
まいにち。彼のことを考えている。
きっと、遠い昔から。
はるか遠い昔。あれ、そうだったかな?
きっとっていうからには、違う気がしてくるけど。
まあ、なんだかんだ、やっぱり、きっと。
きっとが正しい。
私が生まれるより前から、彼のことを考えている。
なんでだろう?おかあさんのお腹にいる時から。
彼がいることを知っていたし、わたしが最初に呼んだ名前は、
ぱぱやままの名前じゃなくて、彼だった。
なあくん。
彼、遠いところに住んでいるのに。
きっともう会えないような、そんなところ。
死んだら会えるかもってぐらいのところに住んでいる。
どこで知ったんだろう。
どうして呼んだんだろう。
わたしは、彼の影響をとっても受けている。
彼の好きなぱーぷる色をまとって、彼の大好きな三色団子を、まいつき、欠かさずに食べる。
「会ったことあるの」
友達に相談して、そーやって聞かれるけど、無い。
写真は見たことある。顔はたくさんみた。
声は、わかんない。
覚えてないけど、たぶんお腹の中で、聞いたことがある。
コントラバスのように低くて、口調がとっても優しい。
そんな妄想もしてます。
しろはちゃんがなぁくんの写真を取りだした時。
わたしのこころは、砂みたいに、ぱらぱらと零れて、あー!無くしちゃったって、泣きわめいたのを今も覚えている。
2年前ぐらいのあのひ。
大好きだったんだと思う。
いちども見たことの無いひと。
でもね、気付いたの。
あなたの存在が、私の中にずっといた。
あなたと会うために生きてきたんだなあって、写真を見てそう思ったの。
アルバムの中の写真を見ながら。
あなたには刺激が強いからと、ままには棺のなかのあなたをみせてもらえなかった。
棺のなかはみせてもらえなくて、ただ、鶏肉がやけたようなお腹のすく匂いがする骨を、壷に一欠片入れた。
運命ってあるのかな。
わたし、どうして泣いているんだろうって、その時はなんも分からなかった。
わたしはここにいるよ。
あなたのことを少しも覚えていないけれど、あなたのことを愛した形跡は、わたしの魂にあって。
わたしはこどもで。
脳みそも、考えるちからも足らなくて。
泣いちゃって。
来世でもあいすよ、って。
その次は、その次の人生は、どうなの。
かんがえてなかったかもね。
わたしも、かんがえてなかった。
魔法の砂遊びをして、すこしして。
前世の記憶か、なんか、そういうのがあったんだろうなとわたしは考えていて。
このままなあくんのこと忘れられなかったら、一生ひとり??ってぜつぼうしたりして。
でも人って浮気性ってよく聞くし、浮気すればいいんじゃない?っておもって。
あなたのことを愛す以外考えられないって大人びた口調で、魂が語りかけてきて、わたしってあきらか、びょうきじゃん!!!っておもったんだよね。
かなしいとか寂しいとか苦しいとか、それを置いて、なあくんのことを愛してる自分のことを誇りに思ってて、へんなきもちがして。
なあくんに彼女はいたのかな。
なあくんは幸せだったのかな。
なあくんはわたしをさがしてくれたのかな。
なあくんは、おぼえてくれていたかな。
しょうじき、ぜんぶわかんない。
しったら、苦しくなることもあるから、しりたくないし。
よのなか、前世のこと覚えてる人なんてほとんどいないから、きっとなあくんも忘れてるに違いないし。
でもわたしは、生まれる前からなあくんがすきで、おばあちゃんになってもなあくんを愛すのかなっておもった。
なあくん、おぼえてる?
生まれ変わったら、ふたりでいっしょにでーとしようって。
私にはその記憶しかないけど、ゆめは、まだ、叶ってないよ。
18さいになりました。
今日も王子さまは生まれ変わってこない。
とんでもなくかわいいわたしの思春期を、花の女子高生をぜんぶ、過去の人にささげてしまったわたし。
それで、その人生を歩んでいることは、あまり後悔してない。
男の人も、女の子も、きょうみでなくて。
生きているのも別に苦しくなくなって、それもまあ、わるくない。
このお話は終わるのに、物語の終わりのように、あなたは目の前に現れてくれない。
それでもわたしは、笑っている。こわいね。
今世であなたに会えなくたって、また来世に会いたいの。
来世であなたが記憶を取り戻さなくても、その次に。
あなたの大好きな海で、たったひとり、いきるよ。
大好き。
読んでいただき、ありがとうございました。




