表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

 ― 芙蓉 ―

 不思議な空と白い花が迎えてくれる『芙蓉』。

 重い荷物を持っていようが、何も気を使わない案内人の浮世感。

 中心の東屋で、翁とDr.と会った。

「おやおや、これはお土産かな?」

「別にあげてもいいですけど、ノウトへ行かせてくれたら、で」

「地味に難しいこと要求しますね」

 ルイを椅子の上に置く。

「とりあえず、倒すことは出来ました。翁、ありがとうございます」

 アンリは青の翁に礼を言った。

「いや、がんばったの」

 うんうんと首を振りながら、お茶を飲んでいる。

「紫の。僕にお礼はないのかい?」

「そうですね。特には」

 黄のDr.は、眼鏡を指でくいっと上げ、フンっといじけて見せた。

「それで、彼女は手当てをしたほうがいいと思うのですが」

「おや、いいのかい? 次にチャンスがあるとは思えないけど」

「ええ。かまいません。そのときはまた修行しますよ」

「じゃあ、緑の淑女に頼もう。ちょっとーーーー」

 Dr.は常に控えている女性を呼んだ。この人たちは虹でもなく人でもないのだろうか。

「淑女にすぐ来てって伝えておいて」

「じゃあ、それまで乾杯しようかの。ほい。おめでとさん」

 他に誰もグラスを持っていないのに、翁が一人で飲んでいる。いや、あれってお酒じゃなくてお茶なのでは。

「さあさあ、座ってご飯でも食べてお茶も飲め」

 テーブルに、豪華な食事を並べてくれた。おなかがすいていたことを思い出し、話半分で早速食べ始めた。少しルイに悪いなと思いつつ。

「わたくしを急かしておいて、自分たちは悠々と食事ですか」

 淑女さんがもう来た。名前わからないのって不便だな。会釈だけして食べ続ける。

「食べたきゃ食べていいですよ」

「結構です。用とは何ですか?」

「コレ」

 Dr.がルイを指す。

「赤の。ずいぶん壊れていますね。紫の。あなたのせいですか?」

「あ、はい。すむまへん」

「服を破かずに、傷をつけたり骨を折ったり。器用ですね」

「は、はぁ……」

 淑女はルイを検分している。

「いいでしょう。ちょうど使いたい薬品もあったので、引き受けます」

「ほねはいひまふ」

「紫の。口の中を綺麗にしてから話しなさい。それから、あなた方からの接触は一切禁止です。では」

 アンリは一気に喉のものを流し込んだ。

「あ、俺、運びます」

「不要です」

 緑の淑女は、ルイをハンドバッグのようにして抱えて行った。

「マジか」

 心の声が漏れるようになった自分に初めて気が付いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ