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お母さんは自分勝手

 沢山の楽しかった思い出が、いわゆる「走馬灯そうまとう」のようになって、胸の中を駆け抜けます。

 オチャコにとっては、チャバタおばさんも、牛おじさんと同じように大切だと思う親戚です。以前、お母さんから聞いた話によると、父親が日本人、母親がアメリカ人で、日本国籍を持っています。太平洋を航行する豪華客船の中で、台風が接近する時に産声を上げたそうです。青い瞳と金色の髪、丸々と太った容貌なので、オチャコが初めて会った時、「まるでアメリカのドラマに登場する大農場に住むおばさんみたいだわ」という独特の印象イメージを受けました。

 チャバタおばさんの本名は茶幡ちゃばた佑香ゆうかだから、正しい呼び方は「茶幡のおばさん」かもしれないけれど、オチャコたちは「の」を省略しています。()()()を感じられるからです。

 茶幡家は、埼玉県熊谷市で「武州ぶしゅうファーム茶幡」という黒毛和牛農家を営んでいます。佑香さんの他に子供がいなかったので、今から五年前、オチャコのお母さんの弟さんが婿入りして、牛おじさんになったのです。


「あたしもお見舞いに行くわ」

「ダメよ」

「どうして!」

「なにかとバタバタするから、子供がいたら迷惑を掛けちゃうのよ」

「もう子供じゃないわ! 電車だって大人料金を支払うもの」

「そうねえ、余計な出費が増えるから、大人しくお留守番してなさい。大人だから一人でも平気でしょ?」

「もおぉ~、子供だって言ったかと思えば、今度は大人扱いをするなんて、いつもお母さんは自分勝手だよっ!」

「ああそうですか。これは失礼を致しました、小さな大人さん」


 お母さんは、スマホでお父さんに緊急事態を伝えてから、着替えなど、あわただしく外出の準備を始めるのです。

 散歩に出ていたお父さんが帰宅して、急ぎ仕度を済ませます。


「オチャコ、お昼は自分で作るか、なにかコンビニで買ってきなさい」


 お母さんが戸棚の引き出しを開いて、「モオカード」というプリペイド式カードを取り出して、オチャコに手渡します。未使用の五百円券です。


「買い物に出るなら、戸締りをしっかりなさいよ」

「知らない人がきても、うかつに扉を開けてはいけないよ。こわい狼かもしれないからね」

「分かってる。というか、狼なんてくる訳ないでしょ!」

「それもそうだな。あはは」

「車には気をつけるのよ。変な人にもね」

「もおぉ~、分かったから!」


 お父さんとお母さんは、埼玉県熊谷市へ向かいました。

 お家の中が静まり返ります。数分も経たないうちに耐えられなくなったので、オチャコは、モオカードを持って外へ飛び出るのです。

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