星 ~烏戸通の妹~
主人公の烏戸通くんはくじゃくが中二のときに制作した中で屈指の人気を誇ったイケメンキャラです。
その人気故に、こんなスピンオフ的短編ができました。
中学二年生の私の文章をどうぞお楽しみください。
「一番星見ぃつーけたっ!」
千加の声が聞こえた気がした。
幻聴。千加はもういない。
千加は俺のたった一人の家族だった。今はそう思う。俺と千加はそれぞれ家族のない者同士として出会い、いつの間にか周りからは「兄妹」と呼ばれるようになっていた。千加も俺のことを「お兄ちゃん」と呼ぶようになった。
俺だけがそのことを理解できずにいた。
俺は星空を見上げた。何も遮るもののない川岸で。ただただ美しいだけの星空。
川の水面に映る星も綺麗で、それを見るのが好きだった。
千加も好きだったのだろうか。日が暮れるとずっと空を見上げていた。いつも一番星を探していた。見つけるたびに喜んでいた。いつだったか、その理由を聞いた。
「一番星はお兄ちゃんに似てるの。だから千加、大好きだし、安心するの」
そう言って、笑った。
千加の親類が見つかり、別れて一年ほど経ったとき、千加の親類の一人が俺を探しに来た。
千加が不治の病にかかったという知らせだった。
俺が行くと、その気配を察したように、千加は目覚めた。
「お兄ちゃん……」
そう言って無理に笑った千加を夕暮れの明るい光が照らしていた。千加は窓を見ていた。しばらくすると、何かを見つけたようで、俺に向かって微笑んで、ゆっくりと震える手を上げ、空を指さした。
「ほら、見て……一番星だよ、お兄ちゃん……」
「……ああ」
「どうして……泣いてるの……?」
水滴が落ちていた。そして千加の手を握っていた。
「私……幸せだよ。お兄ちゃんが見守ってくれてるから……」
「……ああ」
「……ありがと……」
「……千加」
もう無理をするな。そういうつもりだった。
「一番星……みぃ、つけ……た……」
俺は千加の顔を見なかった。窓の外を見た。すべり落ちるのを拒絶して強く握りしめた手の指さす方向にある一番星を見た。
二つ目の星が出ている。
そうか……
「二番星というのかは知らないが……見えるか、千加?」
語りかけてみた。
返答はない。
「千加、星は好きか?」
ずっと疑問に思っていたことだったが、きいたことがなかった。
「……ああ」
少し滲んだ空を見たまま、呟いた。
「俺も……星は好きだ」
静かに時間が過ぎていった。
千加の親類が入ってくるまで、俺は千加の手を握り空を見たまま動かなかった。
「俺と一番星のどこが似ていたんだ?」
千加にきいてみたかった。何を思い、あの星を見ていたのかを。
死者に語りかけるなど、ただの理にかなわない感傷だ。
ただ、人間であるうちは思うがままに生きようと思った。
死後の世界がどのようなものなのか、おぼろげにだが分かっている。
人間としての記憶は消されるかもしれない。だから思うがままに生きる。
あの時流した涙のように。




