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Truth  作者: 黒華夜コウ
【一章】薄月夜の邪念
7/40

P.6

 その夜。

 明かりを消して本格的な眠りの体勢に入っていたロイスは、不意に誰かが来た事を悟り、目を開けた。

 扉をノックされたためだ。

 ロイスは、ノック以降何の呼び掛けも無いことに疑問を抱きながらも、そっと扉を開けた。

 そこに立っていたのは、暗がりでも燃えるように真紅の髪をした男だった。

「ちょっと、中いいかよ」

 ロイスが答える前に、ヴェンは足を踏み入れていた。

「な、何だよ」

 困惑気味のロイスをよそに、ヴェンは躊躇い無くベッドに腰を下ろす。

「さっきの話の続き、まだ言ってなかったろ?」

 ヴェンの言葉で、ロイスはああ、と思い出した。

 訓練所を出た際に、言いそびれた話のことを言っているのだ、多分。

「えーと、確かお前の別荘がどうのって……」

 年下のロイスに「お前」よばわりされても、ヴェンは怒った様子も無かった。

 いや、他の何の面識も無い年下に対してなら、また態度は変わっていたかもしれない。

 ロイスとはヴェンはここ何年かの間、ラージがこの町を訪れる度に会っている。

 似た境遇というのも手伝ったのだろうが、特別仲が良かったわけだ。

 そのためかヴェンはロイスには、呼び捨てで呼んでも良い、と言っているのである。

「いや、実は別荘は関係ねぇんだ。ほら、あれのもうちょい奥に、今使われてない家……在るだろ?」

 マグレブの住民であるロイスは勿論知っている。

 周囲の建物と比べ、一層大きなその建物には昔から誰も住んでいない。

 大きさだけなら恐らくロイスの家より上の筈だ。

 幼い頃一度入ろうとして、街の人に危ないから、と怒られたことを覚えている。

「でも、あの家って確か立ち入り禁止だったよな」

 町の人が言うには、家自体が崩れやすくなっているからだそうだ。

 その割には未だに取り壊す気配も無いし、かと言って再建築するような様子も無い。

 奇妙な家ではあった。

「だけどよ、そう言われると行きたくなるだろ? それで昨日……」

「まさか、入ったのか!?」

 ロイスはつい、声を大きくした。

「しっ! 親父達が起きちまうだろ。とにかく、俺はあの家を探索したんだよ。隅から隅までな」

 ロイスは、半ば呆れたように半開きになった口で疑問を投げた。

「で?何か見つけたのか?」

「よく訊いてくれたぜ。そうだ見つけたんだよ。その家の地下に隠し通路があって、しかもそこから風が流れてたんだ。怪しい匂いがプンプンするだろ!? いや、するな。こりゃもう行くしかないよな!」

 自分の言葉に自分で鼓舞されながら、興奮してヴェンは立ち上がった。

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