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Truth  作者: 黒華夜コウ
【一章】薄月夜の邪念
19/40

P.18

 翌日。

 朝になって……と言っても、太陽はすっかり昇っていたが、目覚めたロイスは急いで台所の方へ向かった。

 昨日の事があってか、体中が怠い。

 台所へと向かいながら、ロイスはやけに痛む顔の横を擦ってピアスを着けたままだった事に気付く。

 台所では食卓の椅子に、ネフィ、ラージ、ゼアが揃っていた。ベレッタは裏庭で洗濯物を干している。

 取り敢えず、ロイスはおずおずと空いている席に着いた。

 それから少し遅れてヴェンが来たところで、まずゼアが切り出した。

「昨夜の件ですが……」

 そこから先は、ロイス達が説明した。

 ヴェンが隠し通路を見つけた事。昨夜、二人でその通路を探索した事。それを抜けた先で野盗と出くわし、戦った事。

 ロイスの発光については語る事はしなかった。

 自分自身でもどう説明すれば良いか解らなかったからだ。ヴェンも見るには見ていたと思うが、やはりそこの言及は難しかったのか交戦した事実だけを伝えるのみであった。

 ゼアはどうなのだろう?

 チラリと彼の方をみやるが、口を開きそうな気配は無い。

 ゼアが駆け付けたのと発光が止まったのはほぼ同時であった事から、ギリギリ目撃していなかった可能性も有る。

 今は出来るだけ簡潔に、事の顛末を述べるべきなのだろう。

 一通り話し終わった後、ヴェンが付け足した。

「そういや、あいつらの仲間が親父に何か言ってたなぁ。何だったっけか。ロイス、覚えてるか?」

「儂にか? 何と?」

 ヴェンに投げられ、ロイスが記憶を辿ってたどたどしく答えた。

「確か、闇が訪れた……って」

「あー、それそれ。長い銀髪の野郎でよ。結局そいつだけ逃しちまったんだよな。えーっと……」

「……ジャクア」

 ポツリと、ロイスがヴェンの言葉に加える。

「そう、ジャクアだ」

 ヴェンは身振り手振りで説明した。

「こう、変な所から武器取り出してさ。強いかどうかっつーより……やりづれぇヤツだったな、ありゃ」

「何……」

 ラージは絶句していた。

 ネフィまでもが、深いため息を吐いている。

「あの男」

 ゼアが口を開いた。

「かなりの使い手でした。私がいながら逃してしまうとは……申し訳ありません」

 ラージは動揺しているようだった。

「いや良い、良いのだゼア。この子達を守ってくれた事、感謝する……それとヴェン、話がある、付いてこい」

 ヴェンは訳も解らないまま渋々、といった感じで、ラージと共に寝室の方へ行った。

「ロイス、お前にも話がある」

「え?」

 いきなりのことで、ロイスは思わず訊き返してしまった。

 ネフィは真剣な眼差しで、ロイスを見ていた。

 ロイスもまたネフィをじっと見返す。

「単刀直入に言う。この町を出ろ……今すぐにだ」

 ロイスは一瞬、ネフィの言っていることが理解出来なかった。

 ただ、ネフィの口調には厳しさが強く出ている。

 睨むような眼差しが真っ直ぐロイスに突き刺さった。

「え、今……何て」

「この町を出ろ、と言ったのだ。戻って来る事は許さん」

 ネフィは言葉を繰り返すと席を立つ。

 勘当、という事なのだろうか。

 あまりにも突然過ぎはしないだろうか。

 それ程までに父を怒らせてしまったというのなら、それ以上は何も言えない。

 厳格そうな父親だ、とは常々周りからは言われて来た。

 冗談を言うような性格でも雰囲気でも無い。

 でも、こちらの言い分を、せめて口を開く間を与えてはくれないだろうか。

「ネフィ殿!」

 珍しく、ゼアはネフィに対して咎めるような口調で言った。

「ゼア、後のことを頼む」

 それだけ言って、ネフィは家から出て行く。

「ロイス……」

 ゼアは心配そうにロイスを見た。

 ロイスは呆然としていた。

 何度だって怒られることは覚悟していた。だが、まさかそれよりも重たい通知を受けるとは思っていなかった。

 その後、後を追おうと外へ出てみたが、父の姿は見当たらなかった。

 考えてみれば、今更会って何を言えばいいのか解らなかったが、それでもちゃんと話がしたかった。

 沈んだ気分で家に戻る。ゼアも探しに行ってくれていた為、家にはラージとヴェンの声しかしなかった。つまり、母もいない。

 あちらもあちらで何か口論になっているようだったが、ロイスの頭の中にはまるで入って来なかった。

 自分の部屋に戻ると、少し頭の中を整理してみる。

 もしかして、本当に勘当されたのだろうか。

 そんな考えが強まって、気持ちが更に沈んだ。

(前向きに考えてみるか……ようやく外に出れるんだし)

 暫く顔を合わせない方が良いかもしれないな、と思ったロイスは、覚束ない足取りで旅支度を整える。

 支度といっても、服を羽織って、携帯出来る食料を詰め込んだ小さな荷袋を腰に付けただけなので大した時間は掛からなかった。

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