プロローグ
寒い……何も見えない……。
冷たい床の上にでも寝そべっているのだろうか。
閉じた瞼の上で光が薄く射している感触があるから、恐らく仰向きなのだろう。
「……ん……に……ってしまうのか」
「もう……とに……戻れん……」
二人、男の人の声がする。多分、大人だ。
「やるわよ……わね?」
今度は女の人の声。さっきから知らない声ばかりだ。それに皆の声が聞き取りづらい。
小声で喋っているんだろうか。
自分の意識がはっきりしないせいだろうか。
それにしても、ここはどこなのだろう。
目が開かない……というより、身体の全部が動かない。
夢の中にいるみたいだ。
それなら、この金縛りみたいに手足が固まってるのも納得できる。
このまま目が覚めたとしたら、不安で大声を出しながら起き上がるんだろう。
でもきっとそうじゃない。
わかるんだ。この冷たい空気を知っている。
いつもこの空気を吸っていた。
いつから吸っていたのかは知らないけれど。
知ってるけど、知らない場所。
いつも居るけど、来たことがない場所。
「おい! ……達が……ぞ!」
四人目……また知らない男の人だ。
とても眠いけれど、なにか大変なことが起きている気がする。
ねぇ、あなた達は誰?
僕は……誰?