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拾われ令嬢の恩返し  作者: 絵山イオン
第1部 第6章 立ち向かうロザリー
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真相

 リリアンから耳飾りを返して貰ったマリアンヌは、それをポーチの中へしまう。


「ロザリー、私がここへ来て、驚いたわよね」

「はい! お姉様はどうしてここに、それにその制服はーー」

「聞きたいこと、沢山あるわよね」

「はい! 他にもあります」


 不敵な笑みを浮かべるマリアンヌに聞きたいことは沢山ある。

 突然、私の前にチャールズと共に現れたのか。トルメン大学校の制服を着ているのか。実技試験で選択した曲を知っているのか。聞きたいことは山ほどある。


「それは、俺が答えるよ。マリアンヌは試験の方が大事だろう?」

「……あ、ありがとうございます。チャールズさま」

「ロザリー、さあ、こちらへ」


 チャールズの言う通り、マリアンヌは実技試験の結果を待っている。

 私はチャールズの後をついていった。



 一学年の教室の廊下。

 二人きりになれたところでチャールズの歩が止まる。私もそれに合わせて立ち止まった。

 

「さて、君はーー」

「ロザリー・クラッセルと申します。チャールズさま」

「そうだね。マリアンヌの妹のロザリーだね」


 チャールズはそう言うと、私との距離を詰めた。

 窓際に追いやられ、逃げ場を失ってもチャールズは私に近づく。彼の指が私の頬に触れ、首元に触れる。


「な、なにっ!?」


 私の制服に手を伸ばしたところで、チャールズに声をかける。

 振り払おうとしたそのとき、私の首にかけてあるチェーンを引っ張り、ネックレスの飾りが露わになる。


「あっ……」

「トゥーンでデートしたマリアンヌは、君、だよね?」


 チャールズに貰ったネックレス。

 私は制服の下に隠して付けていた。

 いつチャールズに会って、ネックレスのことを確認されたらと思い、肌身離さず付けていたのだ。


「ご、ごめんなさい! これには事情があって―ー」

「はは! 怒ったりしないよ」

「……いつから、私がマリアンヌではないと気づいたのですか?」


 私はチャールズに問う。

 チャールズはどこかで私が本物のマリアンヌではないと気づいたはず。


「……君が家族の話をしたときから。その前から引っかかっていたけれど、確証はつかめなかったからね」

「そう、ですか……」

「とてもマリアンヌにそっくりだった。君の秘密は誰にもバレていないさ」


 自分のことをチャールズに伝えたときから、彼は気づいていたんだ。

 私は顔をあげ、チャールズを見上げる。彼はまだ私の身体に密着していて、耳を澄ませば息遣いが聞こえてくる。彼の胸をトンと軽く押し、離れてほしいという意思を彼に伝えた。


「このままでいたい、と言ったらどうする?」

「っ!! か、からかわないでください!!」


 私はひゅっとその場にしゃがみ、素早く横にそれ、チャールズから離れた。

 キッとチャールズを睨み、彼から視線を離さないようにする。


「君の正体を知った俺は、クラッセル邸に手紙を送った。それがきっかけでマリアンヌとの文通が始まったんだ」

「そう、ですか……」

「マリアンヌは君が学校生活になじんでいるか、とても心配していた」


 マリアンヌとはお土産と共に手紙を送ったきり。

 クラッセル子爵から返事は来たけれど、マリアンヌからは全く返ってこなかった。

 マリアンヌに心配させまいと、嘘の内容を書いて送ったからだろうか。文通をしても、本当のことを教えてくれないと思った彼女は、私に返信することを止め、チャールズを介して私の様子を聞いていた。

 気遣いが裏目に出てしまったようだ。


「そんなときに、君が実技試験で苦戦していることを聞いてね。マリアンヌと共に助けたってことさ」

「先輩とはいえ、私が決めた曲を知っているなんて―ー」

「君、選択曲を誰かに教えていないかい?」

「えっと、先生と……、あっ」


 『”落ちる太陽”だな? 変更はないよな』

 私が決めた曲をしつこく確認してきた人がいた。


「あいつ、俺に頼み込んできたんだ。君と一緒に演奏をしてくれ、とな」

「グレンがーー」

「そのとき、自分の実技試験とタッカード公爵の件で手こずっていたんだが、まあ、上手く行って良かった」

「その節は感謝いたします」


 実技試験当日に都合よく助けてくれたのは、グレンがチャールズに私の選曲を伝え、一緒に演奏するよう頼んでくれていたからだ。

 グレンはチャールズのことが大嫌いなのに、私のために頭を下げてくれるなんて。


「チャールズさま、真実を教えてくださり、ありがとうございました」

「君は婚約者の妹、俺にとって助けるに値する人だ」

「……」

「君たちのことは、俺が守る。これから、ずっと」


 マリアンヌがチャールズの婚約者となったことで、彼は心強い味方となる。

 それはとても良いことなのに、胸の中がチクリと傷んだ。

 切ない。どうしてこんな気持ちになるのだろう。


「さーて、そろそろ結果が出る頃だろう。マリアンヌの元へ戻ろう」

「はい」


 疑問は晴れないまま、私とチャールズはマリアンヌの待つ、試験会場へ戻った。

 

 

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