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拾われ令嬢の恩返し  作者: 絵山イオン
第3部 第5章 ルイスの試練

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202/205

ローズマリーのためなら

 その後、俺はウィクタールの要望通り、彼女を連れ、ライドエクス侯爵領へ向かった。

 そして、ウィクタールが彼女の祖父に俺のことを懇願した結果、俺は士官学校で騎士を目指すこととなる。

 貴族と結婚するに見合う立場になれということだろうが、俺には好都合だった。

 騎士になったら、貴族令嬢と結婚できる。

 ロザリーに見合う男になれるのだから。

 


(くそっ、五年前のこと思い出しちまったじゃねえか)


 狭い部屋でウィクタールと二人きりになりたくなかった理由、それは関係を持ったあの日のことを思い出してしまうから。


「……まだ、ローズマリーのことが好きなんでしょ?」


 返事をしないでいると、ウィクタールが核心をついてくる。


「いいや、俺はーー」

「うそよ。誤魔化さないで」


 いつもの癇癪だろうと、俺は愛の言葉を囁こうとした。

 だが、今夜のウィクタールはそれに騙されなかった。


「あなたの上着から、ローズマリー毒殺未遂の真犯人ついて書かれてた手紙が出てきたわ」

「っ!?」


 俺は上着のポケットを漁る。

 そこに入っていた手紙と証拠はなくなっていた。


「他にも、トキゴウ村の襲撃の資料もあったけど……、ルイスがペットボーン公爵領で試験に挑んでいたのは、ローズマリーとヴィストン第二王子との婚約を破棄させるためなんでしょ」

「ウィクタール、手紙と証拠をどこにやった」


 それらを抜き取って隠したのはウィクタールだ。

 彼女は俺の狙いを全て理解した。


「返してくれ。あれは、トテレスさまの依頼で取ってきたものだ」

「破棄したら、ルイスはローズマリーのところへ行っちゃう。そんなの嫌!」


 俺の話を全く聞いてくれない。

 仕方なく、俺は身体の向きを変え、ウィクタールの方へ向く。

 密着していると、ウィクタールが震えているのがわかる。

 これは寒さからの震えではない。俺を失うかもしれないという恐怖からの震えだ。


「私は……、ルイスと家族になりたいの」


 ウィクタールの細い指が俺の頬を触れる。

 彼女の甘い吐息がかかり、互いの唇が触れ合う。

 いつものキスではない、五年前のような熱いキス。


「ウィクタール……」


 ウィクタールの言う通り、俺はロザリーを諦めていない。

 ロザリーとの約束を果たすためには、ウィクタールが隠した証拠が不可欠。

 でも、ウィクタールはトテレスの依頼だと告げても話を聞いてくれなかった。


(ウィクタールから手紙と証拠を取り戻すには……、いや、でも俺はロザリーを裏切りたくない)


 手紙と証拠を取り戻す方法。

 それはウィクタールの望みを叶えること。

 この場で彼女を抱くこと。

 だが、それはロザリーを裏切ることになる。


「ルイス」


 ウィクタールは俺の手を自身の胸元に誘う。すべすべして柔らかい素肌の感触がして、考え事から現実に引き戻される。


「私、五年前より大人になったよ」

「……」

「お医者様の話だと、今夜、赤ちゃんを授かりやすい日なの」

「だから、ペットボーン公爵領に来たんだな」

「ええ。結婚してから……、なんて待てないから」


 ウィクタールは俺と家族になりたがっている。俺との子供を欲しがっていた。


「ねえ、ルイス」


 ウィクタールは俺の耳元で囁く。


「ローズマリーのためなら、ルイスは私と愛しあうでしょう?」

「ロザリーのため……」

「このまま何もなければ、ローズマリーはヴィストンと結婚して、愛し合うことになるのよ」


 ペットボーン公爵邸に忍び込む前はとても怖かった。ここに何もなければ、ロザリーはほかの男に抱かれる。

 ロザリーが他の男のものになる。

 俺は何度もその悪夢をみた。

 ここで何もしなければ、悪夢は正夢になる。

 ウィクタールはふふっと、妖しく笑う。


「私、ルイスとの赤ちゃんが欲しい。叶えてくれるよね?」

「叶えたら、手紙と証拠を返してくれるな」

「ええ。約束する」

「……わかった」


 ロザリーが知ったら、ショックを受けるだろう。俺を罵り、嫌われるかもしれない。

 でも、これはロザリーのため。

 俺は覚悟を決める。

 ウィクタールを床に寝かせ、彼女の上に乗る。

 俺は服を脱ぎ、裸になる。


(真っ暗でウィクタールの顔が見えないだけ、救いだな)


 洋灯が消えた馬車の中は真っ暗で、ウィクタールの姿がはっきりと見えない。


(ごめん、ロザリー。これは、お前のためなんだ)


 心の中で、ロザリーに謝り、俺はウィクタールと五年前のように愛し合った。 


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