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拾われ令嬢の恩返し  作者: 絵山イオン
第3部 第5章 ルイスの試練

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みんな、ローズマリーのことばっかり

今回はウィクタール視点のお話です

 ローズマリーがライドエクス侯爵邸で療養を始めてから、丁度、一週間が経った。

 その間、私、ウィクタールはローズマリーの存在を煩わしく感じていた。


「みんな、ローズマリーのことばっかり!」


 自室に入った私はドレスを脱ぎ捨て、下着姿になり、ベッドに飛び込み、不満をぶちまけた。


「ここは私の家なのに!」


 家族と大切な人の関心が私ではなくてローズマリーに向いているから。

 ここ一週間、ローズマリーを中心に動いている日常が気に食わない。

 その不満を父にぶつけたら、小一時間説教された。

 母と弟に向けたら、呆れられた。

 元々、私は弟のように期待されていない、出来損ない。

 そんな私でも肯定してくれたのが、元従者のルイス。

 ルイスは幼いころから私とオリオンの世話をしたり、遊んでくれた。兄のような存在。

 嫌だったヴァイオリンやダンスや礼儀作法の稽古だって、ルイスが励ましてくれたから頑張れた。

 伸ばしている髪だって、容姿やスタイルだって、ルイスが『人形みたいに綺麗な女の子が好き』と言ってたから、彼の理想に近づけるように努力した。

 なのに、ルイスは私に振り向いてくれない。


「ルイスが屋敷にいるのに……、ルイスは私よりもローズマリーの相手をしてる」


 ルイスはローズマリーしか見ていない。


「ルイスは私のものなの」


 私はまだルイスとの結婚を諦めていない。

 昔からルイスはカッコよかったけど、成長した彼は物語の王子様のように背が高く、顔が整っている。すれ違えば女性たちが立ち止まってルイスの姿を見ようと振り返るほどに。

 ルイスは性格も容姿も良い。彼に足りないのは家柄だけ。

 私は父にルイスを婚約者にして欲しいと何度も頼んだ。

 始め、父は私とルイスの婚約を認めてくれなかったけど、私がルイスと特別なことをしたら、意見を変えてくれた。

 ルイスだって、私との婚約の話を「考えさせてほしい」と先送りにしていたけど、断りはしなかった。

 このまま押し切れば、ルイスは私の夫になる。

 そう思っていたのに、ルイスは指輪を付けて、私との婚約をきっぱり断った。


 ―― 俺は指輪を贈った相手と結婚します。だから、ウィクタールさまとの婚約の話はなかったことにしてください。


 今でもはっきり覚えている。

 とてもショックだったから。

 でも、ルイスの婚約者は一向に姿を現さない。

 私に頑なに会わせないことから、実在するかも怪しい。

 もしかしたら、父の作り話かもしれない。

 私がルイスではなく、他の男性に目が向くようと仕組んだのではないか。


「どうして私の思うように進まないの?」


 ルイスに見合う女性になるために、私は頑張った。

 それなのに、ルイスは例の婚約者に目移りしている。

 婚約者の件は追々暴くとして、今の問題は、ルイスが私よりもローズマリーを優先していること。

 いつも私の味方だったのに、ローズマリーのことになると、態度が変わる。


「ルイスには私だけみててほしい」


 私はベッドに寝転がりながら、ルイスへの想いを募らせる。


「ルイス……」


 私が大切な人の名を呟いたその時だった。


「どういうことですか!」


 父が廊下で騒いでいる。

 冷静沈着な父にしては珍しく慌てている。

 私は父の話を聞くために、ベッドから起き上がり、部屋のドアをそっと開けた。

 廊下の様子を垣間見ると、父はフォルテウス城から来た大臣と話していた。

 父は大臣から貰ったであろう書面を握りつぶし、不満そうな顔を浮かべている。私を説教する顔と似ている。


「夜会を欠席しろというのは!」

「ローズマリーさまの身の安全のため、夜会の参加人数を減らすというお達しが出たのだ」

「それに私が該当すると? 婚約者の父であるこの私が?」

「落ち着けライドエクス。そなたの気持ちはよくわかる」


 怒りの感情をあらわにしている父を大臣が諫める。


「ここだけの話だが……、ローズマリーさまの飲み物に毒を盛ったのは、そなたの部下である可能性が浮上した」

「なに!?」

「賭け事で借金が積み重なり、金に困っていたらしい。何者かがその弱みに付け込み、犯行に加担させたそうだ」

「……」

「陛下は個人の問題として片づけるらしい」

「そうか」

「夜会の欠席だけで済むのだ。後に陛下がそなたにこの件を話すだろうが……」

「わかった。私はローズマリーさまの警護に集中しよう」


 それで父と大臣の会話は終わった。

 私はそっと部屋のドアを閉じ、父の不幸を喜ぶ。


「お父様が失敗するところを見られたなんて、今日は気分がいいわ」


 それに、今日で忌々しいローズマリーがこの屋敷からいなくなる。

 ルイスを独り占めできる。


「警護と言ってたから……、もうじきローズマリーとお父様がいなくなるわ」


 私は脱ぎ捨てたドレスを身に着け、堂々とした気持ちで部屋を出た。


「ルイス、待っててね。すぐ、行くから」


 私はご機嫌で、屋敷のどこかにいるルイスを探す。

 

次話は10/30(木)7:00更新です!

お楽しみに!!

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