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拾われ令嬢の恩返し  作者: 絵山イオン
第3部 第3章 オリオンの束縛

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特別な講師

 マリアンヌと再会した私は、一緒に校内へ入った。

 音楽科二学年の始業式は、私が参加するため、別室で行うことになっている。

 騎士たちとは、校内に入るところで別れ、私とマリアンヌは指定された部屋まで一緒に歩いた。

 

 

「あの、チャールズさまはどうしたのですか?」

「始業式。さっきまで一緒にいたんだけど、ローズマリーの所に行きたいって、私から離れたの」

「その……、結婚の件ですが」

「チャールズさまは気落ちしていたけど、気にしないで」


 私は婚約者のチャールズについて聞く。

 マリアンヌとチャールズは入学前に結婚する予定だったが、彼の祖国マジル王国が戦争に敗戦したため、ご破算になったらしい。

 私も招待客として呼ばれていたのだが、中止の連絡が届き、心配していたのだ。


「正直、私はほっとしているの。チャールズさまのこと、少しずつ知れるから」


 マリアンヌは自身の婚約者のことを良く思っていない。

 だが、婚約者として歩み寄ろうとしている。

 きっと二人は良い夫婦になれるだろう。


「よっ、二人とも」

「グレン!!」


 私たちの前に、制服姿のグレンが現れた。

 グレンとは客間での一件きり、会っていない。

 彼の兄ヴィストンに叱られた後、何をやっていたのだろうか。


「ローズマリー、この間はありがとうな」

「あの後……、どうなったの?」

「ヴィストン兄さんに怒鳴られただけ。うん」


 第二王子の事を話題に出すと、グレンの声のトーンが一段階落ちた。

 こっぴどく叱られたのだろう。

 

「……相当酷かったのね」

「結果、家出から留学に変わったから。それに戦争も終わったし」


 グレンはカルスーン王国から来た留学生となったため、学費の心配をしなくてもよくなった。奨学金にこだわらなくてもいいのだ。


「ローズマリーはどうだったんだ?」

「私は――」


 私はマリアンヌとグレンにフォルテウス城の出来事を話す。

 一日で三回ドレスに着替えたとか、スケジュールが緻密に決まっていて、自由な時間が起床と就寝時間しかないなど。

 友人と話が出来て、晴れた気分になった。


「あら、わたくし以外の三人は、仲良しですのね」

「……リリアンさま」

「残ったのは、マリアンヌとグレンと……、ああ、編入した噂の王女様ですわね」


 少し遅れて、リリアンがやってきた。

 リリアンは態度や振る舞いは堂々としていたものの、彼女は一人で、いつもそばにいる取り巻きがいなかった。あの人たちは最終試験に落ちたのだろう。


「邪魔でしょうけど、二年間よろしくあそばせ!」


 リリアンはわざとらしい一言を私たちに投げ、先に教室へ入って行った。

 

「うっわ~、嫌な奴」


 リリアンがいなくなった後、グレンは率直な感想を述べる。


「私たちも入りましょう!」


 マリアンヌに引かれ、私たちも教室に入る。

 教室には四組の机と椅子が横一列に並んでおり、教壇に私たちの担任の先生が立っていた。


(あっ、クラッセル子爵の後輩の――)


 その先生はクラッセル子爵の後輩。

 私がマリアンヌとして潜入した時、実技試験官の一人だ。


「四人とも、二学年への進級おめでとう」


 机にそれぞれの名前が書かれている。私たちの席のようだ。

 左から、私、グレン、マリアンヌ、リリアンの順。

 私たちは起立した状態で、先生の話を聞く。


「僕は君たちの担任のキリアインだ」


 キリアインは私をじっと見る。


「今年はローズマリー王女が在学している。注目されるだろうが、気にせず、個々の能力を伸ばすように」

「はいっ!」


 皆の返事が重なる。

 私が在学していることで、音楽科二学年は注目されるだろう。

 私の姿を見るために、他学年の生徒がここに来るかもしれない。

 キリアイン先生はそれを見越して、私たちに鼓舞した。

 

 コンコン。

 誰かのノック音が聞こえる。

 キリアインはコホンとわざとらしい咳払いをする。


「このクラスはそういった事情もあり、特別講師を呼ぶことになった」


 パンッと廊下にいる人に向けて、手を叩く。

 それを合図に、一人の男性が入ってきた。


「っ!?」


 男性の登場に私たちは息を呑む。


「メヘロディ国立楽団のピアニストをしております、プレスト・コン・アレガロと申します。お見知りおきを」


 私たちの特別講師が、神の手であるブレストだったからだ。

次話は6/23(日)7:00更新です!

お楽しみに!!

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