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拾われ令嬢の恩返し  作者: 絵山イオン
第3部 第2章 アンドレウスの偏愛

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親子で夢を語らう

 翌朝。

 目覚めた私は、ルイスがいたほうへ顔を向けた。

 その場にルイスはおらず、ベランダの窓も閉まっていた。

 昨夜は夢のような幸せな時間を過ごせた。


「おはようございます。ローズマリーさま」


 定刻になるとサーシャが私の部屋に入ってきた。

 両手に、私のドレスや化粧箱を抱えている。

 

「いい夢を見られたようですね」

「えっ!?」

「とても良い笑みを浮かべていましたので」


 サーシャに言われ、私は両頬をおさえる。

 口元が今まで以上に緩んでいたのかしら。

 図星を突かれ、私はサーシャに背を向けた。


「では、ドレスに着替えながら今日の予定についてお話いたしますね」

「ええ。お願い」


 私とサーシャは午後の公務に向けて、身支度を整える。



 ルイスと再会した夜から、二週間経った。

 その間、私はメヘロディ王国の王女としてアンドレウスと共に、数々の公務をこなした。

 要人との顔合わせに、領地を治める貴族たちの嘆願、政の参加など休む間もなかった。

 空いていた時間をヴァイオリンの練習にあて、編入に備えていたのもある。

 指導者がクラッセル子爵ではなく、楽団一のヴァイオリン奏者に変わったため、慣れるのに苦労したが感覚は取り戻せたはずだ。


「ローズマリー、明日から学校だね」


 夜、私はアンドレウスの部屋に呼ばれた。

 明日、フォルテウス城を出てトルメン大学校に入寮する日だ。


「本当は君をトルメン大学校に連れて行きたくない。でも、ヴァイオリンを続けたいんだよね」


 アンドレウスは最後の最後まで、トルメン大学校の編入について難色を示している。


「はい。音楽が大好きですから」

「……休日は帰って来てほしい」

「善処します。難しい時は手紙でお伝えしますね」

 

 手紙で伝えなければ、毎週、大学校の前に馬車を置いて迎えにくるだろう。実技試験のこともお構いなしに。

 

「時間があったら……、絵も描いて欲しい」

「絵を教えてくださる約束でしたのに、私が疲れて眠ってしまい……、お父様に教えてもらう時間を作れませんでしたね」

「いいや。今回は詰め込み過ぎたから仕方ないよ」

「お父様は、公務の後、自室で絵を描かれているのですか?」

「寝る前に少しずつ、ね。王様になってからはそこしか自由な時間が取れないから」

 

 立てかけてある製作途中の絵を見る。

 私とアンドレウスが広間で並んでいる立っている絵。

 周りには私たちを歓迎してる貴族たちが描かれている。

 お披露目会の一面のようだ。

 まるで、絵の中に私たちがいるような描写で、素人の私でもかなりの腕前だというのがうかがえる。

 絵のそばに様々な色の絵の具が置いてあることから、現在は絵に色を付ける工程のようだ。


「お父様の絵……、素敵です」

「昔は時間を忘れるほど没頭していたんだけどね」

「そうなのですね」

「この絵も、君が学校へ行く前に完成させたかったんだ」


 昔、それはアンドレウスが王子だった頃のことだろう。

 アンドレウスが描いた絵は、王宮や美術館に飾られている。

 背景画・人物画・抽象画どれも一級品だった。

 

「完成、楽しみにしています」

「そう言ってくれると、作業もはかどるよ」


 アンドレウスはポンと私の頭の上に手を置き、優しく撫でてくれる。


「僕は親子で絵のことを語るのが夢だったんだ」

「お父様……」


 夢見心地に語るアンドレウスの傍ら、私はうつむいた。

 アンドレウスにとって、”親子”と呼べるのは娘の私だけ。

 その夢に二人の兄たちはいない。

 国王の私に対する偏った愛情はどこからくるのか。

 私はまだ、アンドレウスに聞けずにいた。

今回で第2章が終わりました。

次章からトルメン大学校編に戻ります。

音楽科二学年に編入したローズマリー。

彼女の学園生活はいかに!!


次話は6/16(日)7:00更新です!

お楽しみに!!


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