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拾われ令嬢の恩返し  作者: 絵山イオン
第1部 第1章 拾われたロザリー
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ひとりぼっち

 幼いころの私、ロザリーは首都の借家の小さな部屋に住むただの女の子だった。


「お母さん! 見てー!」


 私は小さな家にお母さんと二人で暮らしていた。

 お母さんは針と糸を使って真っ白な布に模様を付けており、私が声をかけると、その手を止めてくれた。


「ロザリー、絵を描いたの!」


 私は紙に書いた絵をお母さんに見せる。二人で町に出かけた時の絵を描いたのだと思う。

 お母さんは手を止めて、私の絵を見る。


「私とロザリー……、黒いのはピアノかしら? じょうずに描けたわね」


 家族とピアノを描いたことは覚えている。ピアノを描いたのは、あの時、私と同い年ぐらいの女の子の指が素早く鍵盤を叩き、大人と変わらない演奏に感動したから。

 ピアノを弾いていたのは、お姫様のようなふわふわしている青いドレスを身に着けた、金髪の女の子。

 彼女は小さな体をめいいっぱい広げて演奏していた。

 自然と身体が跳ね上がるような軽快な音色が耳に残っている。


「ほんと!?」

「ええ。あの時、ロザリーと同じくらいの女の子が上手に弾いていたわよね」

「ロザリー、あの子みたいにピアノが弾けるようになりたい!!」

「ピアノ……、ねえ」


 当時の私は、あの女の子に憧れ、ピアノを弾けるようになりたいとお母さんにお願いしていた。

 私の絵を褒めてくれるお母さんだったが、ピアノを習いたいとねだると、お母さんの言葉が詰まる。


「ごめんね。ピアノは偉い人たちが弾くものだから……」


 私の国ではピアノや楽器は特別なもので、裕福な家庭や貴族しか触れることの出来ないもの。生活するのがやっとな家庭には縁のないものだということは、当時の私には理解できなかった。

 あの女の子のようにピアノを弾きたいと私がねだるたび、お母さんが悲しそうな声をしてたのはなんとなく覚えている。


「ピアノ弾きたい~」

「ロザリー、ごめんね」


 わがままをいう私の頭をお母さんが優しく撫でてくれる。


 でも、私はその感触をもう覚えてない。

 一年前、お母さんは私の目の前で犯人に刺し殺されてしまったから。

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