第8話
インフィニティーは水鏡第1部からの続きです。
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・・・・・・・九州の神社の池 周辺・・・・・・
ふとあまねの気配がしたような気がする。
「あまね!!」
大声で叫ぶ龍宮。
「おお…怖い怖い…」
そういいながらヒトガタを取り、降りてきたのは紫藤だ。
あまねに対する態度とは違い皮肉たっぷりだ。
「まさかお前が女一人いなくなるくらいで、大声で探し回るほど取り乱すとはな…」
龍宮の様子をニヤニヤしながら見つめる紫藤。
「何をしに来た!」
イラついている。あまねの異変を感じ、やってきたのだが、いくら探しても気配を感じられないのだ。
「わたしだってあまねのことは心配だ、だからといって盲目的に探し回っても仕方がないだろ?それで状況把握してきた」
「どうやらこの神社へは状況的には嫁いできたようだぞ」
「な…なに?」
そんな話は始めて聞く。
「あまねの神社にごり押しして断れないよう、一応1年の修行という表向きにして、強引につれてきたようだが…」
「……」
「…あまねを帰れなくするために…あまねを襲ったらしい」
「!!」
龍宮は驚き、次の瞬間瞳を光らせ怒りで拳を握る。
「…あまねはその途中で逃げ出して池に身を投げた…と…」
紫藤はたんたんと語る。
「…下衆な…人間め!!あまねはどうした!」
怒りを隠せない龍宮は紫藤に詰め寄り胸元を掴む。
「最後まで聞け!それが…池に身を投げたとたん、光が池いっぱいに広がりそれが消えた後、それっきりどこにもいなくなったらしい」
「どういうことだ!」
「消えたんだよ!池の中もくまなく探したらしいんだが…」
「…消えた?」
「あの野郎…神隠しだって言ってたな…もしかすると魔物か…別のものか…あまねはつれていかれたのかもしれないな…」
紫藤は辺りを見回しながら気配を探ってみる。龍宮は紫藤の襟を放し、放心状態だ。
「まただ・・・また私は失ってしまうのか・・・朱音の時のように・・・」
水の中に身を投げた話を聞いて朱音のときのことがフラッシュバックしてくる。
「さっき・・・あまねがいたような気がした。目が合うと掻き消えてしまって幻かと思った・・・もしかしてあれはあまねなのか?・・・どうすればいい!どうすればあまねを取り戻せる!」
朱音を失ったときの喪失感はあたり一体を壊滅状態にするほどすざましかった。
それのとき思い出し紫藤に助けを求めるほど激しく動揺している。普段の冷静な龍宮には考えられない。
「それは…分からん」
紫藤が顔をそらし悔しそうな顔をする。
≪わかっていればお前に言う前に連れ戻しに行ってるよ≫
心の中でつぶやく。
紫藤はあまねのことをあきらめたわけではない。あまねは自分を満たしてくれた。満ちた状態でもなお共にいたいと思う少女なのだ。
本来なら一人で探すのだが、二人の引き合う力の強さに、悔しいが龍宮のそばにいたほうが、あまねを見つけるチャンスが高そうなのも事実だ。
動揺して使い物になりそうに無い龍宮に、自分の調べたことを報告して少し目を覚まさせようとしたのだ。
もちろん神社の坊ちゃん誓詞にはあまねに手を出したお礼は十分しておいた。
しばらく足腰も立たず抜け殻状態だろう。
紫藤は紫藤なりにあまねのことを想っているのだ。