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第57話 解体のお時間

 まるでスターシップ・トルーパーズ張りの体内爆殺を決め、ついに巨大ダンゴムシの討伐に成功したのだった。


「よし、出てこいダリア、ルリカ!」


 一件落着という事で、俺は退避させていた2人を呼び出した。


「あれ、ここは外、ですか?」


「ミナト、あんたまた私の許可なく出し入れして……って、きゃああっ、何でこいつも外にっ!?」


「しょっぱなから騒がしいな。体内から爆発させてやったんだ、もう死んでるって」


 カードの中にいたせいで事態を掴めていない2人は、動かないダンゴムシを見て悲鳴を上げている。いや、悲鳴を上げたのはルリカだけだが。


「し、死んでるの? 本当に? 急に動き出したりしない?」


「いや、そこまでの確証はないけど」


「なんじゃなんじゃ、騒がしいのう」


 死体の周りでうだうだしていると、長話の老人が参戦してきた。外で爆弾をぶっ放したので音を聞きつけたのだろう。


「あ、色ボケ。あんた、よくも私たちを騙してくれたわね! ドラゴンを探しに行ったらこんなのが出てきたわよ!」


 ルリカは現れた老人に、大きな死体を見せる。とんでもないデカさのダンゴムシ、流石の老人もびっくりするに違いない。


「こ、これは、間違いなくアーマードラゴンじゃあっ! お主たち、まさか本当にやり遂げるとは……!」


「へ? ドラゴン? これが?」


 どう見ても虫なんですが。ダリアがトカゲ族最強とか言ってたし、俺と異世界の認識も合ってるはずだけど。


「確かに灰色の体ですし、大きさも大体情報通りです。これがアーマードラゴンというのも妙な説得力がありますね」


 ダリア、まさかの裏切り。どこに説得力を見出したというのか。

 しかし、よく考えれば地球にもトンボをドラゴンと呼ぶ奴らがいるわけだし、英語圏の人々とセンスが近いとも言える。


 まあ、たまたま倒した奴が目的のものだったことを素直に喜ぶべきかもしれないな。


「よし、それじゃあ解体だな。……明日の朝から」


 もう既に空には月が昇っているし、俺自身も走ったせいで足が生まれたての小鹿のようになっている。

 今日はとりあえず放置して、明日から解体作業を始めることにした。


*


 翌朝。昇り始めた朝日が寂れた村とアーマードラゴンの死体を照らしており非常に幻想的だ。


「じゃあさっさと解体を始めようか。ルリカ、手伝ってくれ」


「いや、無理でしょ」


「もう死んでるから大丈夫だって」


「そう言う問題じゃないの! じゃあミナトは死んだゴ〇ブリなら食べれるってわけ!?」


 ……話が飛躍しすぎだろ。誰も食えとか言ってないし。

 まあ、大体予想はしてた反応だ。解体は俺がやって、剥がした鱗を綺麗にするとこだけ頼むとするか。


「よし、じゃあ早速解体剣で……。あ、あれ、上手くいかないな」


 俺は剣をずぶっと突き刺し引きはがそうとするが、全く鱗が剥がれない。切る側から密着してしまうのだ。


「その剣は貫通する厚さのものしか切れないぜ? うるさい女の首を叩き落した時、切断面を合わせたら接着されただろ? 完全に断ち切れないとすぐに密着しちまうんだよ」


 なんてこった、解体剣を名乗りながら肝心の解体ができないなんて。

 仕方ない、ナイフで地道に剥がしていくか。俺は関節に差し込んだ刃をちょっとずつ移動させて、アーチ状の鱗を少しずつ剥がしていく。

 無事鱗の周りを一周すると、少しぐらつき始めた。このまま持ち上げればきれいに剥がせそうだ。


「ダリア、反対側に回ってくれ。いっせーので持ち上げよう」


「はい、ミナト様。初めての共同作業ですね」


 ダリアの言葉は聞こえなかった振りをして、掛け声と共に鎧を持ち上げる。立派なアーチ状のそれは、ねちゃーっと糸を引きながら持ち上がった。


「いやああぁぁーっ! なんかねっとりしてりゅぅぅっ!」


 余りの光景にルリカは呂律が回っていない様だ。確かになかなかのグロ画像ではある。だけど日本人である俺は納豆でねちょねちょしたものに耐性があるので問題ない。


「よし、まずは1枚無事に採れたな。ルリカ、こいつの洗浄を頼む。それぐらいはやって貰うぞ」


「うう、何か肉片みたいなの付いてるんですけど……」


 俺は鱗をひっくり返すと、ルリカの所に滑らせる。とても軽く滑らかな鱗は片手でも引きずるのは簡単だ。

 ルリカは村にあった井戸まで引きずっていくと、水を利用してそれを洗い始めた。


「くぅー、ぬるぬるしてるっ! それになんか臭いーっ!」


 やや離れたところからルリカの悲鳴が断続的に聞こえる。確かに一晩放置したせいか、腐葉土のような嫌な臭いが漂い始めていた。だけど日本人である俺は納豆で臭いものに耐性があるので問題ない。


「じゃあ俺たちは2枚目に着手するか!」


「はい。あと7枚は鱗が獲れそうですね」


「頑張れよー」


「ほっほっほ、やはり若者は元気があっていいのう」


 いつの間にか村長と人形が、まるで野球観戦をするおっさんのように酒を片手に持って声を投げかけてくる。

 全く気楽なもんだな。見られていると作業がしにくいし残りも早く終わらせよう。


 ……結局、2日目は鎧の解体と余った箇所の処分で潰れてしまったのだった。


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