第4話 魔法道具の確認
俺は無事、1人で宿を確保することに成功した。
「よし、出てこいルリカ!」
「……はっ! あんた、また私をカードに……!」
俺はカードを掲げ、ルリカを召喚する。
そう、俺の作戦は、ルリカをカードに封印してチェックインすることだ。こうすることで1人分の宿代が浮くし、もしバレそうになっても再びルリカにカードに戻って貰えば証拠隠滅だ。うーん、我ながら小賢しい作戦。
「そう怒るなって。こうやって宿も無事に借りれたんだし、問題ないだろ?」
「問題大ありよ! 1人用の部屋を借りたせいで、ベッドが、その、1つしかないじゃない!」
ルリカはベッドを指差し、顔を真っ赤にして怒っている。だが、そこも解決策は考え済みだ。
「確かに。じゃあ寝る時はカードに戻そう、それなら良いだろ?」
「良くないわ! カードの中、狭いのよ!」
……狭いのか。それは申し訳なかったな。やっぱり金を稼いで、2人部屋を借りれるよう頑張るしかないか。
『あのー、お客様ー? 今女性の声が聞こえてきたんですがー?』
「し、しまった! ルリカ、カードに戻れ!」
「え? きゃああー……」
どうやら騒ぎ過ぎたようで、店員が扉の向こうから声をかけてきた。
慌ててルリカをカードに戻し、扉を開けて迎え撃つ態勢を整える。
「な、何の用ですか?」
「あれー、おかしいですねー? 先ほど女性の声が聞こえてきたと思ったのですがー?」
店員はずかずかと部屋に入ってきて、隅々まで確認していく。
「あっはは、気のせいですよ。俺、モテないし! 携帯に登録してある女性も母親だけだし!」
「そうですかー? 何言ってるかわかりませんが、他のお客様に迷惑ですから静かに過ごしてくださいねー?」
適当なことを言いまくったが、何とかごまかすことが出来たようだ。
店員が完全に去ったのを確認して、再びルリカを召喚する。
「うう、また私をカードに……。こうやって私は一生、あんたの都合で出し入れされるのね」
「……誤解を生む表現は止めろ」
「それで、これから何するの?」
「うーん、そうだな」
色々あったが、今日の所はやることはもうないな。あとは適当に過ごして暗くなったら寝るとしよう。精神的に疲れた気もするのでぐっすり眠れそうだ。
「そうだ、バッグの中身を確認しないとな」
そう言えばバッグの中身を確認しきれていなかったことを思い出した。明日から金策に走る必要がありそうだし、役に立ちそうなものが無いか確認しておかないとな。
俺はバッグをひっくり返し、ベッドの上に魔法道具を全て広げる。じゃらじゃらといろいろなものがこぼれてきた。
「ちょっと、なにこれ!? まさか全部魔法道具!? なんでこんなにたくさん持ってるのよ!」
「餞別に貰ったんだけど、俺もこんなにたくさんあるとは思わなかったな……」
魔法道具の強さは『スライム銃』で確認済みだ。これだけあれば、一攫千金を狙えるぐらい強い魔法道具もあるかもな。
……とにかくまずは1つ1つ中身を確認していこう。
「まずは……これは、カメラか?」
最初に手に取ったのは、小さな箱だ。丸いレンズと小さなボタンが付いており、完全にカメラにしか見えない。
説明書を見ると、『メデューサ印の撮像機』という名前のようだ。これで撮影された生物は石に変化してしまうらしい。
「恐ろしい魔法道具ね……。こんなの見たことも聞いたこともないわ」
「うーん、危険だしいざという時にしか使わないようにするか」
俺は誤ってボタンを押さないように気を付けながらバッグの奥底にそれをしまう。
それにしても、スライム化の次は石化か。柔らかくなったり固くなったり忙しいな。ちなみに今のは下ネタではない。
「次は、『女神の滴』? 状態異常を回復してくれる薬、か……」
俺は次に手のひらサイズの小瓶を取り出す。丸い小瓶の中には透明な液体が入っている。イメージ的にはポーションって感じだな。
「あ、それなら知ってるわ! 冒険者向けのお店でも1万イェンぐらいで普通に売ってるわよ」
要するに"なんでもなおし"ってことなのだろうが、結構お高いな。説明書を読むと、これは今までのとは違い使い捨てらしい。
きっと誤射してスライム化や石化したときに使うのだろう。
だけど、消耗品だともったいなく感じてしまうな。俺はエリクサーとかわざマシンとかは最後まで取っておく派だったからな。
「残りもポーションみたいね。こっちはピンクの液体、もう1つは茶色い液体が入ってるわ」
「……俺より先に見るなよ」
別に減るモンじゃないが、自分の物を先に他人に見られるともやっとするよな。
それはさておき、残りの2つの説明書も確認しよう。
「ピンク色の方は、『ロリータ・ポーション』というらしい。飲むと肉体が5歳児に戻るようだな」
「……何に使うのよ、それ」
「俺に聞かれても知らないな。もう1つの茶色い方は『ギャロップ・ポーション』……飲むと馬に変身するらしいぞ」
「ふーん……。この2つは使い道がよくわからないわね」
どうやら俺の持っていたバッグの中身はこれで全部らしい。『女神の滴』だけ5つあるためこれでかさ増しされていたようだ。
しかし、それだと困ったことになった。俺はてっきり炎を纏った剣とか、雷を操る杖とか、いかにもな魔法道具があると思ったのに。
こんな地味な魔法ばっかじゃ、せいぜい護身用にしかならないじゃないか。
「ポーション類はともかく、他のは凄い魔法道具ばっかりよ! 銃とか撮像機なんて、凄い価値がありそうよ!」
俺の静かなショックとは裏腹に、ルリカは嬉しそうに説明書を眺めている。たしか自称トレジャーハンターだったし、彼女にとっては価値があるのかもしれないな。
だが、こんなに喜んでいるのを見ると、なんだか俺も価値がありそうな気がしてきたぞ。
「……本当に凄いのか?」
「凄いなんてものじゃないわ、貴重な魔法道具は100万イェンを超えることも珍しくないんだから! 説明書もついているし売ったらきっと凄い値が付くわよ!」
どうやら中古ゲームのように説明書が付いていると価値が上がるシステムらしい。あいつら、箱なし説明書なしだと平気で1500円ぐらい引いてくるからな。
「ああ、お宝がこんなに一杯、素敵だわ! 私なんて今まで『てつの剣』しか見つけたことないのに!」
……あれって魔法道具だったのか。てっきりRPGの初期装備かと思ったぜ。ドロドロに溶かしちゃって済みません。
「興奮するのはいいけど、それは俺のだからな? 勝手に使うなよ?」
「わ、わかってるわよ」
彼女は名残惜しそうにバッグに魔法道具と取扱説明書を戻す。
そんなに貴重なら盗まれないようにしなくちゃな。バッグにしっかり封をし、ベッドの脇に優しく置いておく。
「よし、魔法道具の確認も終わったし、今日の所は寝るかな」
本日最後の仕事も終えたとこで、明日に備えて寝るとしよう。明日からは本格的にお金稼ぎをする必要がありそうだしな。
「ちょ、ちょっと! まだ夕食を食べてないわよ!?」
「お金もないし今夜は飯抜きで。俺も疲れてるし」
「じゃあ私にお金を返しなさいよ! 元々私のお金よ!」
「だめだ、今日は我慢だ。これは命令な」
「くうう~、栄養不足はお肌の大敵だって言うのに……!」
彼女はしぶしぶといった感じで、布団に潜り込んできた。……こちらに背中を向け、出来るだけ距離を取っているみたいだが。
「あ、そうだルリカ。俺みたいなやつが働くにはどうすれば……」
「すー。すー」
……もう寝てんじゃねーか。さっきの怒りは何だったんだ。
まあいいか、俺も寝るとしよう。もう限界だ……。




