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第39話 攫われるのが仕事です

 俺たちはレオニック(四次元ポケット付き銀髪ゴスロリ人形)を仲間に引き入れて森を脱出したのだった。


「……ここがてめーらの家かぁ? ボロ小屋じゃねーか」


 辺りが夕暮れを少し過ぎた頃、ようやく森の側の管理小屋に帰ってこれた。そこで開口一番これですよ。

 まさかボロ屋敷に住んでた奴に酷評されるとはね。別に自分の家じゃないからいいけど、少々もやっとしてしまいますな。


「まあまあ、ミナトはこう見えても街の領主の娘と顔見知りなのよ! その気になれば全財産を奪うことだって不可能じゃないわ!」


「ほう、支援者としては悪くねーな。期待せずに待つとするか」


 ナチュラルにゲス会話をする2人はとりあえず放っておく。何だか疲れたし今日の所はさっさと寝るとするか。

 明日は……そうだな、都会に来たんだし魔法道具店を眺めつつ、仕事も探すか。支援者として愛想をつかされない程度にな。


*


 翌日、俺たちは早速街へと繰り出していた。


 肩には人形を乗せ、足元には狼。そして少し後ろに少女が2人。うーん、自分で言うのもなんだが少々おかしいと思う。冒険者パーティーというより道化師御一行って感じだな。


 それにしても、朝早いというのに街の人はみんな元気だな。のどかな雰囲気だが、どこかバイタリティにも溢れている。


「ふーん、戦争が終わったってのは本当みてーだな。戦場なら真っ先に死んでそうな奴らが間抜け面晒して歩いてやがる」


 ……どこに平和を見出してんだよ。穏やかに暮らす人々を批判すな。


「ん? なんだあれ?」


 なんとなくギルドの方角へと向かっていた俺は、入り口に人だかりができていることに気付いた。

 中に人がたくさんいるのは珍しくないと思うが、外まで溢れるのを見るのは初めてだな。


「ははーん、きっとモーニングセールね! 何か美味しいものでも安売りしてるんだわ!」


「ギルドでか?」


「セールなんてその気になればどこでもできるわよ! よし、突撃!」


 ルリカは突撃の号令を上げ、1人でギルドに突っ込んでいった。

 遅れて俺たちも人だかりの最後尾につくが、筋骨隆々のおっさん共が立ちふさがり、中の様子も碌に見えないな。

 ルリカの姿も見えなくなっている。きっとどこかで肉壁に阻まれているのだろう。


「くそ、全然見えないな……」


「ミナト、オレの体を持ち上げろ。中の様子を見てやる」


 なるほど、それはナイスアイデアだ。赤ん坊を高い高いするように、わきの下に手を回して空中に持ち上げる。

 この位置なら何とか中の様子が覗けそうだ。


「ままー、あそこにいるお兄ちゃん、お人形さんを持ち上げてるよー?」


「しっ! 見ちゃいけません!」


 散歩中の親子連れから心無い声が聞こえてくる。だが今は目の前に集中だ。


「どうだ、中の様子は?」


「なんか執事みてーな奴がいるぜ。声は聞こえねーがな」


 ……執事? 俺の知っている執事と言えば、ここの領主に仕えている人だけだが……。

 また何かあったのだろうか? 残念ながらここからじゃわからないな、漢たちの汗と涙を掻き分けながら中に突き進んでいるルリカの反応を待つか。


「ミナトー! ちょっとこっち来て!」


 噂をすればルリカの声が聞こえてきた。ちょっと背伸びをすると、筋肉の山の中から細い手が突き出ている。

 ここを越えていかないといけないのか? と思っていると、モーゼの奇跡のように肉の山が割れ、奥への道ができた。


「悪いな、兄ちゃん。気付かなかったぜ!」


「英雄のお呼びだぜ、行ってやんな!」


 冒険者たちは何故か俺の姿を見てフレンドリーに話しかけてくる。俺にはおっさんの友達はいなかったはずだけど。

 だがその理由は中に入ると理解できた。


「ミナト様! ちょうどいい所にいらっしゃいました!」


「あ……やっぱり執事さんか」


 中にいたのはやっぱり伯爵家に仕える執事であった。……そろそろ名前聞いとこうかな、不便だし。

 

「お、落ち着いて聞いてくださいませ! お、お、お嬢様が、攫われてしまいました!」


「またかよ!」


 この短期間で2回も攫われるなんて。ピーチ姫かよ、全く。

 という事はまた救出の依頼をするためにギルドへやってきたってことか。人だかりができていたのを見ると、もう説明も終わって出発直前だったのかもしれない。


「はあ、わかった。俺たちも協力するよ」


 正直呆れてしまったが、元々いい仕事が無いか探しに来たこともあるし、再び協力するとしよう。


「ありがとうございます! 本当に何とお礼を言っていいか……!」


「おう、兄ちゃんがまた行ってくれるってよ! これで安心だな!」


「やれやれ、オレたちの出番はなしか! 頑張りな、兄ちゃん!」


「え? 俺たちだけ?」


 俺が行くと言った瞬間、何故か張りつめていた空気が緩み、あれだけ群がっていた他の冒険者も和やかな雰囲気であちこちに散らばってしまった。

 いや、絶対大人数で助けに行った方が良いと思うんだが。助けに行くのは伯爵令嬢だぞ?


「ミナト、やったわね♪ 私が先に来て、ミナト1人で充分よって吹聴した甲斐があったわ」


 お前のせいかよ!


「……どうせ俺たちだけで助けて報酬を独占しようって腹だろ?」


「分かってるじゃない。さあ、早速ゴーよ!」


 はあ、仕方ない。精々伯爵家に恩が売れるよう頑張るとしますか。

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