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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

魔王と1人ぼっちの少女

掲載日:2018/11/18

まさかのいつも投稿している話のおよそ10倍の

量になってしまいました……

果たして短編とは一体笑



そしていつもと違う感じに話が進んでいきますが

どうかお付き合いください!!


ではどうぞ

むかしむかし魔界の最深部にヴァルクという

それはもうとても強い魔王がいました。



ーー短く揃えられた赤髪


ーーその銀髪から見える2本の角


ーーそしてとてもがっちりとしている体格にぴったりと

あっている漆黒の鎧


姿こそ角がある以外は普通の人間と同じですが

強さは桁違いでした。

どれぐらい強いかと言うと


ーー彼が一度怒ったら魔界の地図が書き換わるぐらいの

地形が変化する


ーー纏っているオーラで全ての魔法、武器が効かない


ーー唸り声だけで相手を吹き飛ばす


ーーいくら強力な魔法を連発しようと尽きない魔力


などなどありえないぐらいの強さを持っていました。

そしてその強さを持って沢山のパーティを

返り討ちにしてきました。

そして今日も……


「魔王ヴァルク!! 勇者である俺がお前に引導を

渡してやる!!」


と戦士数人が魔王に勝負を挑んできました。

今回のパーティは戦士と魔法使い、僧侶、武闘家という

オーソドックスなパーティでした。


「ふん……やってみるがいい……」

今まで何度言ったか分からないセリフを言いながら

座ったまま戦闘の体勢を取るのでした。



その数分後……


「たわいもない連中だ」


と呟いた魔王の視線の先には倒れている一行。

今回も魔王の圧勝でした。


ーーいくら魔法使いが強力な魔法を撃ったところで

魔王には一切のダメージが与えられず


ーー僧侶が回復魔法で一行を回復させようにもそもそも

一発で相手を倒してしまっては回復が意味をなさず


ーー戦士が接近戦をしようとも腕の一振りだけで

戦士を倒してしまう。


そのため彼らは戦闘らしい戦闘をさせて

もらえなかったのです。


「魔王の情けとしてせめて人間どもが住んでいるところまで

転移魔法で送ってやるか……」


と魔王は転移魔法を使い、一行を魔界から一番遠い

人間達が住む街まで飛ばしました。

徹底的に攻撃しますが決して殺しはしないという変な性格を

している不思議な魔王がこのヴァルグでした。

そして彼らがいなくなった後、魔王はふと呟きました。


「誰か……誰か……我の退屈を紛らわせる者はいないのか」


そうなのでした。

ヴァルグが魔王になってから随分長くなりますが

彼と満足に戦えた者はおらず、大体すぐに終わってしまうため

ヴァルグはとても退屈していました。

そして彼が倒す度に転移魔法で人間達が住む世界に送りますが

誰一人魔王に再び戦いを挑もうとする者はいませんでした。

それぐらい彼の強さは桁違いなのでした。

ーー歴戦の勇者がたった一度の戦いで心が折れてしまう程。


「つまらん……この我の飢えた心を満たす者は出て来ないのか

せめて我を椅子から立たせてみせよ」


「ーー勝負よ魔王!!」


「ん……?」


と彼が声のした方を向くと、そこには……


「このユキナが魔王ヴァルグに引導を渡してあげる!!」


随分可愛らしい女戦士がいました。


ーーセミショートの茶髪


ーー大きな目などそれぞれのパーツが互いに邪魔をせず

配置されている整ったら顔


見た目にまだあどけなさが残る可愛らしい戦士が

小さな剣を魔王に向けていました。


「珍しいな1日に2組も来るとは……」


「まさか私よりも先に1組来ていたなんて……

でも私が勝つ事には変わらない!!」


「ほう、随分威勢がいいのだな小娘よ」


魔王が子供扱いをすると彼女は顔を真っ赤にして


「小娘じゃない!! ユキナよ!! これから貴方を倒す者の

名前よ!! よく覚えておきなさい!!」


と大声で言いました。

流石に名乗られて名前を覚えなかったのは悪かったと思った

魔王は今言われた名前をしっかりと頭の中で覚えました。

……この魔王は変に律儀なところがあるのです。


「ほうユキナというのか……面白い。

来るがいい。 せめての情けとして一撃は受けてやろう」


「その情けが命取りになっても知らないわよ!!

じゃあ行くわ!!」


と言うとユキナは魔王に向かって走り出しーー


コテン


「あれ?」


ユキナは走り出した途端、さっきの戦闘で壊れた石像の

かけらで転んでしまいました。


「はっ?」


つい魔王がそういってしまうぐらい彼にとっては驚きでした。

何故なら魔王の咆哮で尻餅をつく者は今までいたが

石に躓いて転ぶなんて今までいなかったからです。


「やるわね魔王……!!」


「我は何もしてないが……」


ただ勝手にあっちが自滅しただけだと思うのだがと魔王は

思いましたがそんな事を言う気になれませんでした。



「いいわ……私を本気にさせて事を後悔させて

ーーぎゃふ!!」


今度は立った瞬間に別の石で転びました。


「……」


これには魔王も言葉が出ませんでした。

まさか石に二度も躓く者が出てくるとは。

しかも魔王の前で。



「よくやるわね魔王……」


「もう一度言うが我は何もしてない」


「うるさい!! 私の必殺技で魔王を倒してみせる!!」


「……果たしてそれは撃てるのか?」


ここまで来ると必殺技の威力云々に必殺技がまともに

撃てるのかという事が心配になった魔王でした。


「う、撃てるわよ!! 今に見てなさい!!

これが私の必殺技!! くらえーー!!」


とユキナが持っている剣が光り出したと思うと彼女は

その剣を持って再び走り出しました。


「……おいユキナよ」


「命乞いは聞かないわ!!」


「足元を見るがいい」


「足元? あっ

ーーぎゃぁぁぁぁぁぁぁ〜〜!!」


ユキナが足元を見た瞬間、彼女の身体は穴に落ちました。

まぁ落ちたと言っても精々彼女の膝上ぐらいの深さですが。


「遅かったか……」


試しにユキナがどうなったのか気になり魔王は椅子から立ち

落ちた穴の方に向かいました。

なお魔王が戦闘中に椅子から立ったのは彼が魔王になってから

初めての事でした。


「うぅ……うぅ……うぅ……うぇぇぇん……」


と先程ユキナが落ちた穴から泣き声が聞こえ出しました。

泣き声の主はもちろんユキナでした。


「だ、大丈夫か……?」


その様子を見てあの魔王ですら心配になり声をかけてしまう

ぐらいでした。

魔王が声をかけるとユキナは穴から手を出して、そして

全身が穴から抜け出すと


「私まだ負けてないもん!! まだいけるし!!」


その大きな目に涙をたっぷり溜めて涙声で言ってきました。


「い、いや……その泣いている顔で言われても

説得力が皆無であろう……」


その様子はあの魔王が若干申し訳なくなるぐらいでした。

ちなみにもう一度言いますが魔王は何もしていません。

これまで全てユキナが勝手に自滅しているだけです。


「ゔ、ゔるさい〜〜!! わだじまだ大丈夫だじ!!」


「いやもうやめておけ……」


「いぐわ〜〜!!」


と泣きながら再び剣を構えて魔王に向かって来ると今度は……


「ふぎゃ」


先程の穴と少し離れた場所にある別の穴に落ちました。

これも先程の穴と同じ深さですがユキナには効果は抜群らしく


「うえぇぇぇぇぇん〜〜!!」


再び泣き出しました。


「何をしているんだ…?」


魔王は今目の前で起きている事に思考が追いついて

いませんでした。

そしてさっきユキナの実力を魔法を使って見たのですが……


「これは弱い……」


「弱いっでいゔなぁ〜〜!!」


今までこの魔王の前にきたパーティの中でもダントツの

弱さを誇っていました。

これほどの弱さだと腕の一振りどころか手を少し動かした

だけでも倒せてしまうぐらいでした。

逆によくここまで来れたと魔王が賞賛してしまうぐらいの

弱さでした。


「ユキナよ……」


「何よ!!」


「もう負けを認めたら……」


「まだまげでないもん〜!!」


「はぁ……お前は何故そこまでしてーー」


「ユキナ!!」


「……ユキナよ、何故そこまでして我に刃向かう?」


「だってあんたに勝てば沢山の賞金が手に入るんだもん!!

村のみんなだって喜んでくれる!!」


「お前の村か……」


確かにユキナ達が住んでいる場所では魔王を倒したら多額の

賞金が貰えるというのは話に聞いていましたがそれよりも

魔王は彼女が言っていた事が妙に気になり、ユキナが

言っていた村を魔法を使い見てみる事にしました。

この魔法を使うとその場所でどんな会話が行われているのか

分かるようになります。

目の前で泣きべそをかいているユキナはほっといて魔王は

その村での会話などを全て見ました。


「おい、おまーー」


「ユキナ!!」


「ユキナよ。お前は村から捨てられたぞ?」


「えっ?」


「今、ユキナの村の連中がしていた会話なんかを見ていたら

大半が“やっと厄介者がいなくなった”って言っているぞ」


「そ、そんな……」


「本当だ。我は魔王だが嘘はつかん。

なんなら会話を聞かせてやろう」


ユキナがいなくなった後の村での会話を聞いていた魔王は

彼自身もつい同情してしまうぐらい酷い会話でした。

……およそこんな大人になっていない少女に聞かせては

いけない様な内容までありました。

ただユキナは何かを察したらしく


「やっぱりね……」


とさっきまでの勢いはどこにいったのか握っていた剣を地面に

落とすと力なく腕を下ろしました。


「お前……」


「前から分かっていたの。あの村では私はお荷物でいらない

人間だって……」


というとユキナは自分の生い立ちを話し始めました。

生まれ時は両親はいたものも、彼女が生まれてから数年後

村に盗賊が来て、その際に戦闘で死んでしまったと。

その後、ユキナは親戚をたらい回しにされて村のどこにも

居場所はありませんでした。

だがユキナはたまたま他の村人に比べて剣と魔法を使う事が

出来たため、今回の魔王討伐に名乗りを上げたのでした。



「今回私が頑張れば村のみんなも私を認めてくれるかなって

思ったんだけど……もう無理」


「……」


「もぅ嫌だ……生きている意味なんてないよ」


「……」


「魔王」


「なんだ」


「1番強い攻撃で殺してもらえない?」


「……なんだと?」


魔王はユキナの発言に驚きました。

今まで命乞いをしてくる人はいましたが殺してと言われたのは

初めてであり、そしてこんな少女がその発言をした事に

驚きを隠せませんでした。


「今さら村に帰っても臆病者扱いされるだけだしどこにも

私の居場所はないんだもん……だったら殺してよ」


「お前はそれでよいのか?」


「別にどうも思わないよ」


「見返したいと思わないのか? 自分を腫れ物扱いした奴らを

見返したいなんて思わないのか?」


「出来るならしたいけど、もうどうでもいいよ」


「ふん、ならしてやろう。

ーーこの我が直々にお前を鍛えてやろう」


「えっ?」


「聞こえなかったか? 我が直々に鍛えてやろう。

そして我に勝ち、栄誉を自らの手に掴みとってみよ」


魔王は何でこんな事を言ったのか自分でも分かりませんでした。

ーー自分を倒す者が欲しかったのか


ーーもしくはこの少女を哀れに思ったのか


「でもあんたに何も良いことはないはずよね……?」


「ふん、魔王になると誰も対等に戦えなくなって暇であってな

ならば我が直々に鍛えてやって最強の戦士を育ててやる。

そうすれば我の暇も解消する。

そしてお前は我を倒せば多額の賞金と名誉が手に入り

村の連中を見返せる。

ーーどうだ、悪い条件ではないだろう?」


「私はいいけど……あんたは、いや貴方はそれでいいの?」


「魔王に二言はない。お前はどうする?」


彼女は少し考えるそぶりをした後、決意を決めたのか

魔王の方をまっすぐ見て


「私はそれでいいわ。鍛えて貴方に勝つ!!」


と宣言をしました。


「ふっ、面白い。ならば我が我自身を打ち負かすように

徹底的に鍛えてやろう!! ユキナよ、これからは我の事を……

どう呼んでもらうか……」


どうでもいいことに悩む魔王でした。


「なら“ししょう”なんてどう?」


「“ししょう”か……うむ、良い響きだ。

ならばこれからは我を“ししょう”と呼ぶがいい!!」


「うん、分かったわ!!これからよろしくねししょう!!」


とその時の弾ける様な笑顔をみた瞬間、魔王は何故か心の中で

安心感が湧きました。


(む……? 何故ここで安心するのだ我は? まぁいい。

これから日々の暇つぶしができたのだから楽しくなるな)


ーーこの瞬間、魔王に自分を倒す為の弟子が出来ました。





そして次の日から魔王による魔王を倒す訓練が始まりました。

魔王の城に庭で魔王とユキナがいました。


「まず我を倒す云々の前に体力を強化しないといけない。

もちろん耐久も大事だが、速さ、力も大切である」


「うんうん、それで?」


「まずは我から逃げてみせよ」


「つまり鬼ごっこ?」


「そっちではそういうのか……10秒やる我から出来る限り

遠ざかってみせよ」


「うん、分かった」


「なお我は1秒であそこまでいけるからな」


と魔王が指をさしたのはかなりここから遠い場所にある

庭から城に入る為の門でした。


「えっ……嘘でしょ? あんな場所まで……?」


「我は嘘をつかん。今日の訓練は我が10秒数えたあと

再び10秒数えるまで逃げてみせよ」


「ちょ、待っーー」


「1、2、3……」


「うわ〜んカウトダウン始まったよ〜〜!!」


「ーー10、フハハハハ!! 我から逃げてみせよ!!」


結局、この日は1秒も持たなかった。



そして別の日


「今日は力を鍛える」


「分かった!! 何をするの?」


「ここに岩がある」


「うわぁ〜硬そう」


「割れ」


「えっ?」


「割れ」


「いやいや無理でしょ、明らかに人間の住んでいる場所にある

岩より硬いって」


そうなのです。

今、彼らの前にある岩は人間が住んでいる世界の岩よりも

何倍も強度がある岩でした。


「割れ、その中に今日の昼飯が入っている」


「酷い!! 今日のご飯は無いに近いじゃん!!」


「さぁ割ってみせよ。そして見事昼飯を勝ち取って見せよ」


「この訓練は恨むからね!?」


「フハハハハ!! 割ってみせるがいい!!」


この日、岩が割れたのは夜になってだった。



なんていう魔王の無茶振りに近い訓練をユキナは文句を

言いながらも決して諦めすに取り組みました。

実は鬼ごっこではいつももよりかなり力を弱めて追いかけ

岩の際も、最初に割れる様に細工を施してありました。

魔王も人間であるユキナに最初から全力を出したらまずいと

思ったのか彼女の事を思ってレベルに合った訓練を組んで

実践していました。

そして数年後……


「師匠!!」


城の門が勢いよく開かれるとユキナが走って

魔王の元に来ました。


「ユキナか、どうした?」


「見てください師匠、今日は民衆を苦しめる役人を

傭兵共々倒してきました」


とある村に重税を課していた役人と数十人の魔法使いを含む

傭兵を1人で相手にしていたらしく、それでも彼女には傷1つ

ついていませんでした。


「うむ、よくやった」

魔王は自分が育てた弟子が活躍するととても嬉しくなりました。

あの頃に比べてユキナはとても強くなっていました。

日々の魔王直々の訓練と彼女の諦めない不屈の心があり

冒険者の中でもトップクラスまで登りつめました。

何せ魔王仕込みの身体能力と元々ユキナが先天的に持っていた

刀の才があり凄い速さで近づき、刀による重たい一撃を

食らわしてくるのですから他の冒険者とは明らかに次元が

違っていました。

そんな目覚ましい功績をあげている中でついたあだ名は

“閃光の戦乙女”とか“戦女神”でした。

そして成長したのは見た目の方もであり……


「どうしましたか?師匠」


「……気にするな」


「分かりました」


初めて城に来た際は可愛らしいという印象でしたが今では


ーー長く伸びた綺麗な髪を後ろで結んでおり


ーー高身長でスレンダーという


とても綺麗な女性になっていました。

性格も優しくて落ち着いた性格になっており、周りからの

信頼も厚い凄腕の剣士にまで成長していました。

……あの転んで泣いていた少女がここまで成長するとは

魔王もとても驚いていました。


(今のこの姿をみたら、ユキナを捨てた村の連中はどう

思うのだろうか? クハハハ、笑いが止まらない!!)


「師匠?」


「む? どうした?」


「何か面白い事があったのですか?」


「……笑っていたのか?」


「はい、笑っていました」


「気にするな、ユキナが来た時の出来事を思い出して

いただけだ」


「あ、あの頃の私は忘れてくださると……!!」


「む、そうか。やめておこうか」


何故か彼女が嫌がることはする気が起きない魔王でした。

どうしても彼女が泣く姿を見ることはやる気が

起きませんでした。

何故その様な気分になってしまうのか魔王は自分でも

分かりませんでした。彼女が目の前に現れてから

不思議な感情を抱く様になりましたがこの感情が

どういうものか魔王には分かりませんでした。



「それで師匠……」


「どうしたユキナよ?」


「また求婚されてしまいました……」


と申し訳無さそうに言ってくるユキナ。

彼女が冒険者として名が広まるにつれ、彼女の美貌に惹かれた

世の男性が次々と求婚してきました。

村の普通の男性から、一国の騎士団長や大教会の司祭

またある時は王国の王子に至るまででした。


「またか……ユキナの美しさなら仕方ないが」


「ま、またそんな事を言って……でも今回も断りました」


「というかユキナの条件を満たしている男性などいるのか?

“私よりも強い男性”っていないだろう……」


「だって私より強くないと夫らしくないです」


「逆に今までお前より強かった男性はいたのか?

我は将来ユキナが結婚できるか心配だ」


「いましたよ、1人」


「ん? いただと……」


魔王にとっては驚愕の真実でした。

まさか我が彼女より強い人物がいたとは、そしてまさかその

人物の事を彼女が幸せそうに言うものですから。


「えぇ今まで私が生きていた中で私よりも強い人は1人だけ

いるんですが……その人はかなり鈍化です」


「……そいつは大層羨ましい。こんな美人の好意を受け止めん

とは我が直接手を下してやろう……!!」


魔王は魔力が高まっていくのを感じました。

自分の弟子の好意を無下にするなど許せなかったからです。


「し、師匠落ち着いてって」


「……ユキナに言われたら仕方ないな」


と高まっていた魔力を抑えました。

抑えていく中で魔王は考えていました。



ーー人間で彼女よりも強い人物などいるだろうか?

いたなら真っ先に自分を倒しにくるだろう。


ーーでもそんな人物は今まで来なかった。


ーー現実的に考えて彼女より強いのは自分だけだろう。


(ユキナが我を……? ふっ、ありあえんな。

ユキナにとって我はこれからの幸せな人生を送る為に

倒さないといけない相手であろう。 そんな都合の良い

話があるものか……)


そう考えていると魔王は不意に悲しい気持ちになりました。

彼女に幸せになって欲しいと思う反面、他の男が隣にいると

何故かモヤモヤした気持ちになるでした。


「それよりもユキナよ」


「なんですか?」


「お前が魔王の城に来ていいのか? ここに来てばかりだと

お前の名に傷がつくぞ?」


なんせ自分は倒されるべき敵なのだからそんな敵と一緒に

いたらユキナが何を言われるか分かりません。

しかし彼女は首を横に振り


「いいですよ、他からの印象なんて。私にとってはここが

“帰る家”なんですから」


「そうなのか?」


「はい、師匠はどんなにきつい訓練であっても最後まで

私の面倒を見てくれました。更にここに帰ってくれば

必ず師匠がいますからね」


「……ここが我の城だからな」


「はい、だから周りの人がどう言おうとも私はここに帰って

きて必ず“ただいま”と言います。例え師匠が帰って来るなと

言ったとしてもです」


「……強情だな」


「それは師匠の弟子ですから」


なんて口では文句を言っていますが心の中ではユキナの一言が

とても嬉しかった魔王でした。

魔王はこの彼女の成長をこれからもずっと近くで見ていたいと

心の中で思っていました。


ーー出来れば自分を倒すなんて言う昔彼女とした約束なんて

忘れてしまいたい


ぐらい今のこの穏やかな日常は心地よいものでした。





とある日

その日はユキナは依頼がなく、魔王とお茶をしていました。


「やっぱり師匠のいれたお茶は美味しいですね」


「フン、魔王であるもの茶ぐらい上手く出来ないなど

あっていいはずがないだろう。

ーーほれ茶菓子だ」


「ありがとうございます」


と口では言いますが彼がお茶をいれるのが上手いのは

ユキナがまだ幼い頃に、何か好物があるかと聞いた際に

彼女がお茶と言ったからであり、それから魔王は日々

秘密裏に練習をしていました。

……無論、茶菓子の腕もですが。


「ところで師匠」


「なんだ」


「私、実はーー」


「ーー待て、ユキナ」


「師匠……?」


「この気配は……まさか」


ととある気配を感じ、いつもの様に魔法を使いその気配が

感じた場所の映像を映し出しました。

そこは……


「私の生まれた村じゃないですか。でも何で……?

ーーえっ?」


そこに映し出されたのはユキナの生まれた村に徐々に

近づいていく大きな竜でした。

大きさでは山程の大きさの竜が迫っていました。


「やはりこの気配はあやつだったか……」


「師匠は知っているのですか?」


「知っているのも昔あれは我が一度倒した竜であるからな。

あれは教会の連中の竜であろう」


「教会の人達の?」


「あぁあれは昔、教会の連中が封印を解き放って

我に送ってきた竜でな、無論勝ったが中々の強敵でな

倒すのに苦労したものだ」


「でも何で今そんなのが……」


「ユキナよ、お前に求婚したきた奴の中で大司教の馬鹿息子が

いなかったか?」


「ええ、いましたね

ーーまさか!?」


ユキナは何かに気づいたらしく、魔王を見ました。


「多分、その馬鹿息子が封印を解き放ったのだろう」


「何でそんな事をしたのですか!?」


「お前に振られた腹いせだろうな。あの馬鹿息子は

自分の思い通りにならない事は嫌いだからな」


「でも何故それを生まれ故郷に……?

私に文句があるなら私自身に向ければ……」


「そんなのは簡単であろう。

ーーユキナの故郷を襲えば、自分になびくとでも思って

いるのだろうな、全く馬鹿馬鹿しい……」


「自分の欲望のために無関係な人々を襲うなんて……!!

人の風下にもおけません!!」


と顔を怒りで真っ赤に染めたまま自分の刀を手にとり

外に出て行こうとするユキナでしたが門の前に魔王が

立ちふさがりました。


「師匠どいてください!!」


「いかせん」


「どうしてですか!!」


「あの竜は今のユキナでは勝てない。あいつと一度戦った

我が言うのだからやめておけ」


「やってみなければ分かりません!!」


「それよりもあの村はユキナ、お前を捨てたのだぞ?

何故その村の人間どもを助ける?」


「それは……」


「我は知っている。人間は自分がピンチになったらなりふり

構わず助けを求める。例えそれが自分達が迫害した人物で

あってもだ。そんな者のためにお前が傷つく必要はない」


いつもならユキナの頼みは大体は引き受けますが今回は

いくら彼女の悩みであっても断るつもりでした。

竜の強さもありますがそれよりもユキナを半ば追い出した

連中のために彼女が傷つく姿を見たくありませんでした。


(こんな者のためにお前には傷ついて欲しくないのだ。

だから分かってくれ……!!)


ここまで言えば彼女も諦めると思いましたが彼女は

魔王を真っ直ぐに見ると何かを決意したかの様に

口を開きました。


「では師匠は私が戦いを挑んだ際に殺さなかったのですか!!

師匠なら私なんてすぐに殺せましたよね」


「それはだな……」


「師匠にとっては単なる気まぐれかもしれませんでしたが

私にとっては今の私の戦う理由が出来たのです!!」


「我はそんな事など……」


「あの時、師匠が私を助けてくれたからこそ今の私が

あります!! だから私は困っている人がいたら助けます!!

ーーあの時の師匠が私にしてくれた様に!!」


「……なんだと」


あの時は自分の暇潰しのために助けたつもりであったのに

まさか彼女にそこまで影響を与えていたとは……

と1人で驚いていると


「すみません師匠!!」


魔王が彼女に言われた言葉に驚いているとその隙を狙って

いたかの様にユキナは門を突破しました。


「ユキナ、行くのではない!!」


「すみません師匠!! 今回だけは師匠の命令破らせて

いただきます!!」


とまさに閃光のごとく凄い速さでユキナは魔王の元から

去っていきました。


「ユキナよ……」


魔王は彼女が行ってしまった方に手を伸ばしましたが

手を下ろしました。





魔王の城を飛び出してきたユキナは自分の生まれ故郷に

着くと竜の元に向かいました。

改めて真下でそのサイズを見ると本当に大きいと思いました。

そこではユキナが着く前から竜の足止めをしていた戦士達が

いました。


「ユキナさんだ!!」


「お前らユキナさんが来たぞ!!」


彼女が来た途端、歓声があちこちで聞こえてきました。

その中でユキナは近くにいた1人に話しかけた。


「皆さん、お疲れ様です。今の状況は?」


「はい、村の人は続々に避難していますがまだ村には

人々が残っています」


「そうですか……なると……

皆さんは村の方々の避難を助けてあげてください」


「待ってください、ユキナさんは……?」


「私はこの竜を足止めします。その隙に皆さんを!!」


「ですが……」


「私でも長くはもちませんから早く!!」


色々な修羅場を乗り越えてきた彼女には分かりました。

この対峙している竜が今の自分よりも明らかに格上であると。

ーーそしてそう長くは持ちこたえる事は無理であると。


「……分かりました、ご武運を!!」


と村の方に向かう冒険者達を見送ると彼女は自分の腰に

挿してあった刀を抜き



「さてやりますか」


と彼女は竜に向かって走り出しました。





グホォォォ!!



「これは……ちょっとまずいですね……」


何せ竜の鱗が硬すぎて彼女自慢の剣技が全く意味をなさず

尻尾の薙ぎ払いやブレスに手も足も出せませんでした。

幸いな事に竜自体の動きが遅いので何とか避けていますが

今度はユキナの体力的に限界でした。



ガァァァァ!!


と再びユキナに向けてブレスを撃ってくる竜。


「全くしつこいですね!!」


とブレスを避けて一息をつこうとした瞬間、彼女目掛けて

竜の尻尾が迫ってきました。



「ぐっ……!!」


刀で防いだお陰で直撃とはなりませんでしたが近くにあった

木に強く叩きつけられました。


「ガハッ……!!」


あまりの痛さに動けないユキナ。

痛さの他に今までの疲れもあるのかしれませんが、指1本も

動かせる体力もありませんでした。

そんな彼女に竜は確実にトドメを刺そうと近づいてきました。


「すみません師匠……言いつけを守らずに……」


グホォォォ!!


「まだ自分の思いを師匠に告げていないのに……

私は死ぬのですね……悔しいです……」


ユキナが死ぬ前に思い出したのは自分をここまで育ててくれた

師匠であるヴァルクでした。

彼女は何故師匠の顔が思い出したのかは分かりました。

ーー何故なら師匠の事が好きだからです。

死ぬ前に愛しい人の事を思い出したからです。


「師匠……すみません……」


竜からトドメのブレスが放たれる時、彼女は目を閉じました。

だがその瞬間……


ガァァァァ!!


突如竜は叫び声をあげました。


「ーー馬鹿者が」


「えっ……」


「だからあの竜はお前にはまだ早いと言ったであろう」


「あぁぁ……!!」


その1番聞きたい声が聞こえた瞬間、ユキナは思わず

そう、声をあげました。


「久しいな竜よ、我は貴様が何をしようと構わないのだが

我が弟子に手をあげるならあの時と同じように再び

倒してやろう……!!」


「師匠!!」


「ユキナよ、少し待て。回復をかけてやろう」


と魔王が言うとユキナに向けて回復魔法をかけました。

流石魔王と言うべきかさっきまで傷だらけであったユキナの

身体から傷はなくなりました。


「師匠……」


「いくぞ」


「えっ?」


「今回は我が協力してやろう。たまには弟子に協力するのも

師匠である我の役目であろう」


「いいのですか?」


「魔王に二言はない。

ーー行けるな? 行けないとは言わせない」


「え、えぇ……行けます!! 師匠がいれば私はまだ

立ち上がれます!! 何度でも!!」


と言い、再び刀を構え出すユキナ。


「フン……では行くぞユキナよ!!」


「分かりました!!」









そしてしばらくして


「や、やっと勝ちましたね……」


「あぁ」


と2人の前にはさっきまで暴れていた竜が倒れていました。

かなり手強かった竜も2人の連携もあって何とか

倒す事が出来ました。


「師匠」


「どうした?」


「先程は言いつけを守らずに飛び出してすみません……」


「何を今更……勝てたので良いであろう。

これでお前の名声も更に上がるな」


「そんな……私よりも師匠のお陰である気が……」


「馬鹿者、我は魔王だ。人間から嫌われる存在の名声が

上がってどうする。ユキナは頑張ったのだから誇れ。

我もお前の名声が高まれば嬉しい」


「師匠……」


というと彼女はその大きな目から涙で出てきました。


「おい、待て何故泣くのだ?」


今までの自分の行いに彼女を泣かせる行動があったのから

振り返りますが全く思いつきません。


「あ、あの時、死ぬかと思った時に師匠の顔がよぎって……

もう終わりかなって思ったら、し、師匠がきてくれて……」


「お、おい泣くな。我はここにいるであろう」


さらに泣くものですから魔王は慌てました。


「だから今、こうやって会えているのが嬉しくて……!!」


「ユ、ユキナよ」


「は、はい……えっ」


魔王はユキナを抱きしめました。

何故自分がそのようにしたのか分かりませんが何故か

そうしなければならないと直感で思いました。


「お前はよく頑張った。誇ってよい。

我もお前がここまで強くなってくれて嬉しい

お前は誇れ自分を」


「わ、分かりました……あ、あのお願いがあるのですが」


「言ってみせよ」


「もう少しこのままでいてもらえませんか?」


「我なんかでよければ」


「師匠だからいいんですよ」


と魔王はユキナに言われるがまま抱きしめていました。

そしてしばらくすると不意に彼女は


「師匠」


「どうした?」


「私は師匠に言いたい事があります。

聞いていただけませんか?」


「よい、許可しよう」


「ありがとうございます。

私は魔王ヴァルク、師匠の事がーー」


と顔を真っ赤にしながら魔王に何かを言いかけている彼女の

後ろで竜が口を開きました。

魔王はその状態に気づきましたがどうやら彼女は

気づいていないようでした。


「くそっ!!」


魔王は彼女をブレスの射線上から飛ばしました。


「えっ、師匠?」


ユキナが後ろを振り向いた瞬間には魔王はブレスに

包まれていました。


「師匠ーー!!」












「ユキナか……」


「師匠!! ねぇ師匠!! しっかりしてください!!」


魔王はあの後、魔法によって竜を返り討ちにしましたが

自身もブレスをまともに食らってしまました。


「ユキナよ、無事か……」


「私は無事ですよ!! 待っててください!! 村から

回復魔法を使える人を呼んできますから!!」


「よい、いらん……」


「待っててくださいね!! 今すぐ呼んでーー」


「ーーもう無理だ、回復魔法は意味を成さん」


「どうしてですか!! あっ、師匠は自分で回復を使えるから

ですよね!! そうでしたら是非つかーー」


「ユキナよ、分かっているのであろう?」


「師匠は冗談が好きなんですから、こんな時まで」


「ーーもう我は死ぬ」


「……ッ!!」


「お前なら分かっているだろう?

ーー我の魔力が尽きかけているのが」


「し、師匠は魔王ですからそんな事は……」


「ここ最近……いやずっと前、お前と出会う前から徐々に

自分の力が衰えているのが分かった」


「嘘ですよね……?」


「魔王は嘘をつかない……それに自分の身体の事だ。

自分が1番分かっている……

あの竜に勝てたのはユキナの助けがあったからだ……

礼を言うぞ……」


「待ってください!! ま、まだ見込みはあります!!

私が助ける手段を探しますので……!!」


「もう良い」


「待ってくださいねもう少し……」


「もう良いとーー」


「私が嫌なんです!!」


「ユキナ……?」


「師匠がいなくなったら私はまた1人になります!!

そんなの嫌なんです!!」


「大丈夫だ……お前の周りには……沢山の……仲間が

出来たではないか……もう1人でないな……」


あの頃に比べて今はユキナを慕う人たちが彼女の周りに

いました。もうひとりぼっちであったユキナでは無いと

魔王は思っていました。


「私には師匠、貴方が必要なんです!!

貴方さえいてくれたらそれで十分なんです!!」


「何故……そこまで我に拘る……」


「貴方が好きだからですよ!! 師匠の事が!!」


「なんと……」


「私がいくらアピールしても全く気づいてくれないし

今回の竜を倒せたら言おうと思っていたのに!!」


と彼女から言われて魔王の中で何かが落ちました。


「そうか……我はそうだったのか……」


「し、師匠?」


「今ごろ分かるのか我は……遅いであろうな……」


「何をですか!!」


「ユキナよ」


「もう話さないで!!」


「ーー我はユキナ、お前を愛している」


「えっ?」


「今、分かった……我がお前をあの時助けようと思ったのも

最近変な気持ちになっていたのも……ようやく理解できた。

そうか、そうか……これが“愛している”という感情か……」


ーー何故自分がユキナの事をこんなにも大事に思ったのか


ーー求婚の話が聞こえる度に胸がモヤモヤしたのか


ーー彼女の笑顔を見るだけで嬉しくなるのか


ーーあぁ……そういうことか。


「我は大分前からお前の事を愛していたのだな……」


と自分で認めてしまうと不思議と笑みがこぼれました。

ですが魔王には遅すぎました。

まさか自身が死ぬ寸前にその感情を理解するなんて

そう思うと魔王は別の意味で笑みがこぼれました。


「師匠行かないで!! 私を1人にしないで!!」


「心配するな……我がいなくても……お前は大丈夫であろう」


「嫌なの!! もう1人になるのが!!」


「泣き虫だな……お前にはこれをやろう……」


と魔王は自分の首にかけていたネックレスを取り

ユキナに渡しました。


「これは……?」


「我からの餞別だ。これがあれば魔王を討伐したと

認められ、多額の賞金をもらえるだろう……」


「賞金なんかよりも私は貴方が欲しいの!!

お願いだから生きるのを諦めないでよ!!」


「魔王に生きろとは……今まで初めて言われたぞ……

そもそも魔王が死ぬ事で泣く者がどこにいる」


「私は貴方が魔王じゃなくて1人の男性としてーー」


「ユキナよ」


「嫌だ聞きたくない!!」


「この数年は今まで生きていて1番楽しかったぞ……」


「嫌だ!! 嫌だ!!」


「我の生き甲斐……いや我の愛しい人よ……」


「もう話さないで!! お願いだから!!」


「愛している……そして……我のために涙を流してくれて

……我を愛してくれ……て」


「師匠?」


「……」


「師匠……? 起きてくださいよ?」


「……」


「いつものように稽古一緒にやりましょうよ?」


「……」


「お茶しましょうよ、私お菓子作るの上手くなりましたよ?」


「……」


「私強くなりましたよ? 多分、師匠から一本を取れるぐらい」


「……」


「ねぇ師匠、また褒めてくださいよ?

“よく頑張った”って“誇れ”って」


「……」


「……師匠、起きてくださいよ」


「……」


「……ッ!! 起きてよ師匠!! いつものように

私に何か言ってよ!! お願いしますから!!」


「……」


ユキナがいくら呼びかけても魔王は満足そうに

微笑むだけでした。



「師匠!! 起きてよ!! ねぇったら!! 師匠!!

嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


夕焼けの森に1人の泣く声が響きました。

そしてその傍らには満足そうに微笑みながら死んでいる

魔王の姿がありました。


ーー死ぬ寸前に自分が欲しかった物が手に入ったその笑みは

とても満足そうにそして幸せそうでした。



魔王ヴァルクが死んでからしばらくして……


あの竜を解き放った司祭の息子は罰として平民まで

身分を落とし一生牢屋の中に入る事になりました。

そして竜討伐の最大の功労者であるユキナは

竜と魔王討伐の賞金を受け取るとどこかに静かに

いなくなってしまいました。

彼女が去った後でも所々で凄腕の女剣士が悪を退治していると

噂が流れていますが、真相は彼女のみしか知りません。



そしてユキナは今どこにいるのかというと……


「ふぅ……ただいま」


彼女は魔王の城にいました。

既にここには彼女が好きな人はいませんがそれでも彼女は

帰ってくる度に必ず“ただいま”と言うのでした。

もしかしたら返事が返ってくるかもしれないという

一握りの希望を持ちながら。


「師匠、今日は盗賊を倒しましたよ。あの竜に比べたら

もう簡単すぎましたよ」


そして今日も彼女は返事が返ってこないと分かっていながらも

話しかけるのでした。


「特にあの数人を一回で斬り伏せた時の私はとても

かっこよかったと自画自賛できますよ。

ーー寂しいですよ師匠」


というと彼女は泣きそうな顔になりました。


「帰ってくる度に“ただいま”って言ってもしかしたら

師匠がいるかもしれないって期待して、そしていなくて……

しかもこの城って1人で住むには広すぎますって。

ねぇ師匠、寂しいですよ。私は貴方に褒めてほしくて

ここまで頑張ってきたのに褒めてくれる人がいないなんて

私には辛すぎますよ……」


「ーーそれはすまんかった」


「そうですよ。本当酷いですよ……

ーーえっ?」


彼女が驚いて後ろを見るとそこには……


「久しいなユキナよ」


「し、師匠!?」


そこには彼女がこの世で1番大事な存在ーー

ーー魔王ヴァルクがいました。


「あぁ師匠だ」


「もしかして幻覚……」


「待て待て我は生きている。幻覚では無い」


「じゃあ

ーーえい!!」


と彼女は試しに魔王の元に抱きついてみました。


「おっと……」


「ほ、本当の師匠だ!! でも何で!?」


「あぁ実は死んだあとな……冥界で暴れてな

無理矢理生き返らせるように脅迫した」


この魔王は自身が冥界に着くと途端に今まで暴れてなかった

鬱憤を晴らすが如く、暴れました。

その結果、冥界の王がお手上げとなりほぼ無理矢理に

自身が生き返るのを認めさせました。


「師匠貴方はどこまで規格外なのですか!?」


「すまん、どうしてもお前に会いたくてな。

冥界の王とやら相手に暴れた」


「……師匠は生きているのですよね?」


「あぁ我は生きている」


「本当ですよね?」


「魔王は嘘をつかん」


「……もう二度と私の前から消えませんよね?」


「うむ、約束しよう」


「……ッ!! 師匠!!」


「どうしたユキナよ」


「寂しかったよ!! ずっと1人で頑張ってきて!!」


「あぁ」


「私1人で頑張りましたよ!! 各地で悪さをしている

連中を懲らしめたりして師匠の弟子の名に恥じないように

精一杯頑張りましたよ!!」


「知っている、魔王だからな」


「だったらこれからは私の側にずっと永遠にいてください!!」


「あぁ我はずっといてやろう」


「約束ですからね」


「あぁ約束してやろう」


「師匠!!」


とユキナは笑顔……とは言いにくいですが自分が出来る

最大限の笑顔で魔王に抱き着きました。

そんな彼女を魔王は嬉しそうに抱き返しました。



これ以降魔王ヴァルクとユキナは歴史の表舞台には二度と

出てきませんでしたが、人の噂によると2人は

魔王の城にて末永く幸せに暮らしたそうです。




〜〜fin〜〜

さて楽しんでいただけたでしょうか?


今回は魔王と少女の話を書きましたが

まさかここまで長くなるとは……

つい筆が進んでしまい気がついたら

短編とは言えない文字数になっていました。


楽しんでいただけなら幸いです。



読んでもらっただけで嬉しいのですが

もしご感想などをもらえたらさらに嬉しいです!!



最後にこの作品を読んで下さった方々に

最大の感謝を!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 珍しい視点ですよね。三人称なんですけど、まるで童話の語り部のような……。 改行で、やや気になる部分がありましたが、ストーリーは最高でした。 最後に 『二度も泣いちゃったじゃないですか~、…
[一言] 執筆お疲れ様でした。二人の別れのシーンでちょっとうるってきちゃいました。いつもの雰囲気とは少し違った部分もあって新鮮でしたし、とっても面白かったです!! 次回作も期待しながら待っています!
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