2 暴走
2話まで、キャラ作ったのですが、次の話から関係無くなります。
感想お願いします。
なんだこれ?! どうせデマだろう。
俺は念のため京華の安否を確認することにした。
「おーい! 京華ー! どこだー?」
返事はない。
次に、従者に聞くことにした。
「なあ、京華を知らないか?」
「はい? ああ、京華様なら先ほどお出かけになりましたよ」
あの手紙に、信憑性が増してきた。
心臓がバクバク鳴り始め、額の汗が止まらない。
俺は、家から飛び出した。
理由は何故だ? 何故、俺じゃなく京華を狙う?
そんな疑問が頭の中に際限なく広がっていく。
「くそっ! くそっ! なんでだっ?!」
攫う理由も、何故、京華なのかもわからない。
1つ思い当たるとしたら、相沢の家の女性には、妖術が使えないことである。
だがそれは、妖術を相沢家の人が使えることも含め、一般人には知られていない。
とすれば答えは1つ。
犯人は相沢家の人間だ。
だけど何故だ? やはり分からない。
そして、裏山の頂上に着いた。
そこにいたのは、手首に縄をくくりつけられ、木に
吊り下げられた京華だった。
「京華!」
京華は薄目を開くと、
「おにぃ…さま」
と今にもすぅっと消えてしまいそうな声で呟くように言った。
きっと睡眠薬でも飲まされたのだろう。
そして、京華は、また意識を落とした。
走って近付こうとすると、近くの茂みが微かに不自然な揺れ方をした。
咄嗟に振り返ると、
「?!ッ。 なんであなたがっ?!」
そこにいたのは、俺の実の兄、長男の相沢時矢だった。
「よぉ、彼方。これも全部お前のせいなんだからな。」
下品な笑顔で見下すように言う。
「俺のせい?」
俺も反発するように殺気を出しつつ、怒気を込めた目で言った。
「ああ! そうさ! お前さえそんな能力に目覚めなければ俺が後継者になっていたのにな!」
「そんな理由でこんなことをしたのか!」
「そんなことだと? お前ふざけるなよ! 今まで俺がどんなに努力したと思っているんだ! それをお前はぶち壊した!その後も、死ぬ気で修行を積んだ! 親父にも何度も頼んだ!でも…ダメだった。」
そんなに苦労してたのか…
「わかった! 後継者の権利はお前にやる。 だから、京華を離せ!」
「はぁ! もうおせぇーよ! もういいんだよ! お前の生きていることが嫌になるくらい悔しがる顔を見れればよ! 」
なんだ、ただの自暴自棄じゃないか…
こんなのに少しでも同情した俺が馬鹿だった。
「〈全員、今すぐうでを組み、地面に頭をつけろ!〉」
だが、誰も言魂に反応しない。
「残念だな!ここにいる全員、耳栓をつけているんだよ! 俺が会話をできたのは、この10年間で編み出した読唇術のお陰だ」
そう言って時矢は、京華に近づき、懐からナイフを取り出す。
あえて妖術を使わないのはいたぶるためだろう。
そして、京華の服を縦に切り裂く。
京華の成長段階の少し膨らんだ胸や、美しい白い肌が晒される。
いつのまにか、周りを武装し、下品な笑みを浮かべている大人に囲まれる。
会議の時、俺が後継者になるなることに反対だった奴らだ。
「俺、妹でもいけちゃうんだよなー」
瞬間、ギリギリだった俺の中の何かが、切れた。
左手に黒い紋章が浮き上がる。
「〈黙れ〉」
「はあ?だから無理だっ…むぐっ!」
何故、届かないはずの彼の言葉が届くのか……それは、彼が無意識の内に、[言魂]の本当の使い方を知ったからである。
[言魂]、それは、言葉を魂に刻む術。
例え、耳を塞ごうとも届く。
今のは一瞬だけ黙らせるつもりで刻んだ。
「〈爪を剥げ〉」
左手の黒い紋章が頰まで伝う。
時矢は、言われた通り、震えながら左手を右手の人差し指にもっていく。
「やめっ……ひっ、ひぎゃぁーーーー!い、いでぇー!いでぇーー!じぬぅーー!やべろぉーー!」
顔が涙と鼻水でぐしょぐしょになっている。
「はっ、滑稽だな。どうした? 俺の悔しがる顔が見たいんじゃなかったのか?」
「やめっ、やめでぐださいぃー! 謝る、あやばるがらー!」
もう、こいつの顔すら見たくなくなってきた。
「お兄様! ダメです!」
俺を止めようとする声……京華が目覚めたようだ。
しかし、もう遅い、京華をこんな目に会わせて、負けそうになったら、命乞いをするような奴を、生かせてはおけない。
そして、言魂の発現以来、聞こえなくなった謎の声が頭に響く。
「やめた方がいいよ。それをしたら戻れなくなる。ああ、もう遅いか。 ごめん、止めてあげられなかったよ」
「〈自害しろ〉」
時矢は血だらけの震える手で自らの首を絞めた。
「じにたくない!止めろ! 止めうぐっ……」
バタッ!
時矢が倒れたのと同時に気づく。
俺の手足が真っ黒に染まっている。
人を殺したい。 屈服させたい。
ありとあらゆる欲求が身体を駆け巡る。
「うぐっ!……がっ!ああがぁぁぁぁーーーーー!」
そして意識が途切れた。
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気づくと目の前には、父が立っている。
その手には血の滴る刀。
意識が朦朧として、焦点が合わない。
胸を見下ろすと、真っ赤に染まっている。
どうやら俺は、あの刀で斬られたようだ。
「…まない……俺…こうすること…できなかった。許……くれ………」
視界が揺らぐ中、京華の涙でぐちょぐちょの顔が見えた。
「お兄様!…にい……ま!お兄……」
ああ、俺、死ぬのか。
最後に見れたのが妹の顔で良かった。
目の前が真っ黒に染まる。
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気づくとそこは神殿のような場所で、3人の神々しい人(?)が立っていた。