17 合格発表
題名とあらすじをちょこっと変えました!
今日は学校の合格発表の日だ。
順位によってクラスが分かれる仕組みになっている。
「そんじゃ行ってくるわ」
「兄さん、行ってらっしゃい」
「「「「行ってらっしゃいませ」」」」
家から学校まではさほどかからない、だいたい歩いて15分といったところだ。
俺は、街の見てないところを見るために、少し遠回りしている。
この道のりだと30分くらいで着くだろう。
俺は、朝からやっている、珍しい店を発見し、入ると、俺と同じくらいの年齢の赤髪ロングでカチューシャをつけた女の子がカウンターの前で何やら店員と揉めていた。
「お願いじゃ! あと100ゴールドだけでいいんじゃ! 妾の顔に免じて負けてくれんかの?」
ゴールドというのはこの世界の通貨で、1ゴールド1円という風に地球と同じ感覚だ。
へぇ、有名な人っぽいな……
「お嬢ちゃん、妾の顔って、見たこともない子の顔でどうやって免じろって言うんだい?」
「知らん人かよ!」
「「はっ!」」
どうやら俺に気づいたようだ。
しょうがないな、助けてやるか。
「こんにちは、100ゴールドくらいなら出しますよ」
「本当か?! ありがとうなのじゃ!」
そう言って満面の笑みを作った。
よく見ると可愛いな。
「それで、何を買うんですか?」
「このパン屋さんの、メロンパンが絶品だと、友達に聞いてきたのじゃ!」
「へぇ、ここパン屋さんだったんですか〜」
さっきまで揉め事に気が行っていて、よく見ていなかったが、よく見ると、どれも美味しそうでとてもいい匂いが漂ってくる。
「それで、ここのパンはいくらだったんですか?」
「400ゴールドなのじゃ」
「たかっ!」
「それだけ美味しいってことじゃろ」
「なるほど、それじゃ俺にもひとつください」
「待ってて、今できたてのパンができるからね」
そう言ってパン屋のおじさんは厨房の奥に消えていった。
待つこと3分……
「できたよー」
「美味しそーなのじゃ!」
本当だ、表面の黄金の輝きに伴い、できたて特有の香ばしい香りが食欲をそそる。
これは絶対に美味しいぞ!
2人で一斉にかぶりつく。
「「ん〜〜〜〜!」」
うまい! 美味すぎる。
外はカリカリ、中はふわふわ。
この絶妙なハーモニーがたまらん!
俺たちはあっという間に食べ終えてしまった。
「ふう、美味しかった。 そういえばどうして、朝からこんなところにいたんですか?」
「学校の合格発表を見るついでによったのじゃ。 そういえばお主こそどうしてここにあったのじゃ?」
「俺も合格発表を見るついでに来たんですよ」
「そうじゃったか! 同年代なら、敬語はやめんか?」
「そうだな、こっちの方が楽だしな」
「うむ! そっちの方が良いぞ! さっきまでのお主は少しぎこちなかったのじゃ」
そうか? 俺の演技は完璧のはずなんだけどな……
「そうか、じゃあ、せっかくだし2人で見に行かないか?」
「そうじゃな、妾はミヤビじゃ!試験には少し自信があるのじゃ」
「へぇ、俺はカナタ。 試験はまあ、ぼちぼちかな」
俺たちは店を出て、学校に向かって歩き出した。
歩くこと10分、学校の合格者の一覧表には人だかりができていた。
俺とミヤビは一旦別れて自分の名前を探すことにした、
「さーて、俺の名前はっと……お、あった……よし!」
そう言って俺は小さくガッツポーズした。
「あったのじゃ! って、カナタ?」
すぐ隣にはミヤビがいる。
俺の見ている場所は一番上のSクラスだ。
ミヤビも宣言通り結構強いらしい。
「ミヤビもどうやらSらしいな」
一覧を見るとミヤビはなんと5位になっていた。
「も?」
そう言って、合格者一覧表に再度目を向けるミヤビ。
どうやら俺を見つけたらしく、油の刺し忘れたロボットのようにギギギギと首をこちらに回す。
「い、い、い、一位ぃ〜?!」
「どうも、一位です」
そう俺、カナタ・イングラムは合格者一覧表ではなく、その上にドンッとでかく名前が載っていた。
しかし、カナタは一位になった嬉しさより、母さんに滅される恐れがなくなったことの嬉しさが最も大きかった。
「どうやったら1位になれるんじゃ?」
「そりゃあ、俺がやったことといえば試験官倒したのと、筆記を全問解くことぐらいかな」
まあ、一番確実だよな。
「試験官って、あのラクス・ラインフォードじゃよ!」
「誰? あの金髪イケメン?」
「えぇ…… じゃ、じゃあ筆記の最期の問題はどうしたのじゃ? 流石にあれは無理じゃろ!」
「ああ、あれは母さんのユニークスキル、殲滅魔法のことなんだ、息子の俺が解けて当然だよな」
「お、お主、今なんて?」
「ん? 母さんのユニークスキルの殲滅魔法のことか?」
「殲滅魔法ってあの殲滅の魔女の魔法じゃよ……お主家名は?」
「だから、殲滅の魔女は母さんで、家名はイングラムだ!」
「な、なんじゃとぉーーーーーー!!」
ミヤビが壊れた。
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