16 ルンの勘違い
「ただいまー」
俺がドアを開けると満面の笑みでメイドのルンが待っていてくれた。
「おかえりなさいませ! カナタ様!」
「ああ、ルン、風呂沸かしてくれないか? 俺は、部屋にいるからさ」
いつもは、セバスに言うのだが、ちょうどいいし、ルンに頼む。
「えっ?! 私に?! ……それって……その……あれですよね。 わかりました!」
頰を赤らめてモジモジしている。
ん? 何が「あれ」なんだ?
俺が聞こうとすると、ルンはすぐに風呂場へ向かってしまった。
「なんなんだ?」
すごく嫌な予感がする。
俺は、その後特に気にすることもなく部屋に向かった。
「兄さん!」
「おお、リアか、ただいま」
「大丈夫でしたか? お怪我はされてませんか? 筆記試験は解けましたか?」
「そんなに問い詰めるなって、大丈夫。 相手はバッチリ倒したし、筆記全部解けた。 あ、そうそう、最後の問題、母さんの殲滅魔法についてだったぞ」
「よかった……。 って、母さんの殲滅魔法も出たんですか……」
「ああ、ありゃ俺たち以外解けないだろうな」
「はい、すると学校には母さんたちの知り合いがいる可能性が高いですね」
「たしかにな。 あと、俺が倒した試験官も俺が母さんと、父さんの息子だと知っていた」
「2人ですか……まあ、それは学校に入ればわかることですし、今言っても仕方がないことでしょう」
「そうだな、じゃあ、俺部屋に行くわ」
「はい、受験受かるといいですね」
「ああ、受かってないと俺が滅されるからな……」
「?」
リアは頭の上に疑問符を浮かべていた。
まあ、世の中にはわからない方が幸せなこともある。
部屋ですることもなくゴロゴロすること10分。
コンコン
「カナタ様、お風呂の準備が整いました」
「ああ、わかった」
俺は部屋から出て言う
「さてと、行きますか」
「はい、イキましょう」
ん? なんでカタカナ?
俺の部屋は二階のため、階段を降りる。
ルンがついてくる。
さらに、大広間を抜ける。
ルンがついてくる。
脱衣所に入る。
ルンがついてくる。
「なあ、ルン、風呂場までついてこなくてもいいぞ……って、え?!」
ルンがメイド服を脱ぎ始めた。
なぜか脱ぐスピードが異常に早く、もう下着を脱ごうとしている。
「ま、まてまてまて! なんでお前が脱ぐんだよ!」
「そ、それはもちろん、カナタ様の夜のお相手をさせていただくためでございます!」
そんなことを言っている間に、下着まで脱いでしまった。
「はあ?! お前、何言ってんだよ!」
俺は急いで目を手で覆い隠す。
結構でかいな……じゃなくて!
「えっ? 私にお風呂を沸かさせたのはこう言うことじゃないんですか?」
「話、飛びすぎだろっ!」
どうやら俺の嫌な予感はこのことだったらしい。
そう、ルンは大の勘違い屋なのだ。
ルンは家事などメイドの仕事は完璧なのだが、勘違いが激しすぎる。
「そんな……期待させておいて酷いじゃないですか!」
「いや、お前が勝手に勘違いして、勝手に期待したんだろーが!」
「うぅ……じゃ、じゃあせめて、お背中ぐらいは、流させてください!」
いや、それも結構危ない気がするんだが……
まあ、女性にこれ以上恥をかかせるわけにもいかないしな……
「わかった、それなら頼む」
「やったーーー!」
「やりました〜♪ 勝ちました〜♪」
勝ったとか負けたとかじゃないんだと思うんだけど…… ま、いいか。
「それじゃよろしく」
「はい!」
そう言って俺たちは、風呂に入ろうとするが、
バン!
「それじゃあ、よろしく。 ……じゃないわよー!」
扉を勢いよく開けたのはレインだ。
ヤバイ。
「レイン様?! どうしてここに?!」
「そりゃあ、あんな大声で脱衣所で男女が叫んでたら誰だって気づくわよ」
「いや、レイン、これは色々と訳があるんだよ!」
「へぇ、メイドとはいえ、裸の男女が脱衣所に一緒にいるのにどんな訳があるのかしらねぇ〜。 」
「いや、それはだな……」
「そうです。 これは私が悪いんです!」
ドタドタドタ!
「どうかされたんですか?! って、えっ?!」
さらに増援としてリアまでやってきた。
ああ、また厄介なことになった……
「あぁ、あのぉ、その、えぇと……」
ルンがしどろもどろになっている。
結局、説得するのに、リオンさんの援護もあり、30分かかった。
ルンは、裸のまま、レナさんに引きずられて行った。
「先が思いやられな」
「あなたのせいでしょうが」
「ええ、兄さんのせいです!」
「ハイ」
俺は何も言い返すことができなかった。
少しでも、おもしろいと思ったり、武器のセンスとかあると思ったら、ポイント評価お願いします。
感想、お待ちしております。
返しますんで!