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11 別れと定番

いつか、感想をもらえる日が来るといいのですが……

今日は俺たちの王都への旅立ちの日だ。

俺たちというのは俺とレインだけではない。

妹であるアメリアも一緒だ。

リアは、王都の冒険者学校には通わず、1年、王都で暮らすそうだ。

父さんと母さんはついてこないが、心配はない。

父さんと母さんは俺たちのために一軒家を数ヶ月前から建ててくれていたのだ。

俺もリアも、家事はある程度学んだため、生活に支障はないと思う。


「ライラ、俺たちの子供がついに親離れをするぞ……」


父さんが涙目だ。


「ええ、あなたこんな時は笑って見送ってあげましょう」


母さんはいつも通りおっとりとしていて優しく微笑んでいる。


「父さん、母さん今まで本当にありがとう。 俺、強くなってくるよ」


「おじさん、おばさん、こんな私を受け入れてくれてありがとう。この5年間本当に楽しかったわ」


「父さん、母さん、本当にありがとうございました。 この日のためだと思うと、この5年間、寝る間も惜しんでした地獄の修行が報われた気がします」


「ああ、頑張れよお前たち! お前たちは自慢の子供たちだ!」


父さんが涙をこらえながら俺たちを力強く後押ししてくれる。


「あなたたち、持つものは持った? 特にカナタ、あなたは戦闘においては油断はしないけれどたまにおっちょこちょいなことがあるから……」


「大丈夫だよ、母さん」


「あと、言葉遣い、きちんと丁寧にしなさいね」


そう、俺は神官に対する態度を母に見られてからというもの、戦闘の修行と一緒に言葉遣いの訓練も受けていた。 全く、いい歳して恥ずかしいものだ。


「ああ、善処する」


長話をしたって仕方がない。


「そんじゃ俺たちは行くよ」


そう言って俺たちは馬車に乗り込む。

この馬車は2週間前、王都から届いたものだ。

うちから王都へは、まる二日も、かかるのだが、この世界の馬は優秀で、目的地までの道のりを覚えていて、勝手に動いてくれる。


「うぅ……が、頑張れよぉーー!」


父さんが涙を垂らしながらも、無理やり笑顔を作って手を振っている。

母さんは、やはり笑顔で手を小さく振っている。

そして、馬車が走り出し、俺たちも2人が見えなくなるまで手を振り続けた。


馬車が走り始めて大体2時間が経った。


「おい、リア? 大丈夫か?」


「大丈夫です、兄さん…………うぷっ」


「うんわかった、大丈夫じゃないな。 ほら、酔い止めだぞ」


「ありがとうございます。 兄さん」


リアはどうやら乗り物が苦手のようだ。


「このぐらいで酔うなんて、まだまだね」


と、 人の形態のレインがやれやれというように両手を挙げ首を振っている。


「だっ、大丈夫ですこれぐらい。 兄さん、やっぱり薬は結構です」


そんな雑談を繰り返していると、俺の常時発動の索敵魔法に害意のある6人の集団が反応した。

馬が急に止まった。

馬も囲まれていることにやっと気づいたようだ。


「そこの馬車、止まれ!」


俺は馬車を降りる。


「こんにちは、私たちに何か用ですか?」


俺だって好んで戦闘をしているわけではない。

ここはとりあえず丁寧な口調で穏便に済ませたい。


「お前、いい女連れてるじゃねぇか、そいつらおいてったらお前は許してやんよ」


そう言って、下卑た笑みを浮かべている。

どうやら、言葉のキャッチボールすらできないらしい。

俺の家族に手を出そうとする奴は許せない。


「レイン、〈大剣(ブレード)


レインが青白い光と帯を纏い、青と白の大剣と化す。


「レイン、殲滅だ」


「ふふっ♪ 罪人が敵だと力が湧き出てくるようだわ」


俺がレインを操作しようとするが何故か、いつもより軽い気がする。

これはレインのユニークスキル、〈断罪〉の効果なのだろうか。

一瞬にして盗賊の1人を縦に真っ二つにする。

1人、2人、次々と斬り伏せる。

反撃する隙は与えない。

そして最後の1人、一番豪華な装備をしているリーダーであろう奴だけが残った。


「わ、悪かった! 俺が悪かった! もうしない! あるものも全部置いて行く! だから、助けてくれ!」


「お前は自分の家族を殺そうとしたやつに命乞いされて、ハイそうですかってなるか?」


「頼む!」


「レイン、断罪だ」


レインが無言で男に迫り、その巨大な刃を振り下ろす。

赤い返り血がレインの白い剣身に降りかかる。

人間に戻ったレインはいつになく妖艶な顔でほんのりと頰を赤らめていた。


「兄さん、すみません。 何もできませんでした。」


「気にすんな、リアは酔いが覚めるまで寝てろ」


「ありがとうございます。 ですが心配にはおよびません少し楽になりましたので」


「そうか? きつかったら言えよ」


(兄さんはやっぱり優しいです。)


「ん? 今なんか言ったか?」


「いえ、何も?」


「?」


「全く、兄さん鈍感なんだから……」


「??」


妹の言うことがよく分からなかったが、あまり気にせず、再び馬車を走らせたカナタであった。

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