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ある夏の彼の覚醒と遺された道標  作者: 富士江 三蔵
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第5話

仏壇の蝋燭ろうそくを持ち出して中央に据え、車座になっての本格的な雰囲気を演出したのは良かったが、彼らの“怖い話”はどこかで聞いたような都市伝説めいたものばかりで思いのほか盛り上がることはなかった。


「・・なんかイマイチだったね・・」


「さっきの番組で結構怖いやつあったからな・・」


「やっぱり映像のインパクトには負けるね・・」


意気込みあふれての怪談大会だっただけにケイタ以外には消化不良の空気が漂う。


「あ、あのさ、神棚の勾玉まがたま?っていうの?あれになんか映ってたやつ怖かったじゃん。そこの姿見と廊下の突き当たりのでっかいやつで合わせ鏡やってみねぇ?」


もう寝ようと言いかけたケイタの前にシンゴが新たな企画を提示する。彼の性格上、盛り上がりに欠けたままの雰囲気を明日に持ち越すことはできない。


「え~!? なんか出るんじゃない?」


ミカは怖いながらも好奇心を覗かせる。


「向かい合わせの鏡はそれぞれが反射しあって次々に互いを映し出すんだけど、それは光りの速さと同じなんだよ。光速ってのはロマンだね。地球から五百光年離れてる星があれば五百年も前の過去を俺らは今眺めてるんだからすごいよな。古墳なんかでよく鏡が出土するけど鏡っていうのは大昔からその神秘性やパワーを儀式や信仰、占いなんかに使って・・」


「分かった分かった。リョウヘイ、鏡は昔からすごい!・・じゃあ決まりな。姿見運ぼうぜ。」


「やだよ。めんどくさい。」


「・・あれ、ケイ君、怖いの?」


ここにきてシンゴが母親の呼び方でケイタをからかう。


「そうなの?ケイ君か~わ~い~い!」


ミカもそれに乗って場を盛り上げにかかる。いまだに弄られ慣れしていないケイタには苦手な場面である。


「こ、怖かねーよ!鏡の位置とかがずれて親からクレーム来るの俺なんだからな!それが嫌なんだよ。」


実際、ケイタは合わせ鏡など怖いと思ったことはない。あんな薄っぺらいものが向き合うだけで悪魔だとかが出るなんてナンセンスにもほどがある。


「大丈夫、ちゃんと直すから、な。カリカリしないで思い出作り思い出作り・・」

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