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ある夏の彼の覚醒と遺された道標  作者: 富士江 三蔵
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第13話

不意に明るさのある世界が視界に飛び込む。対面する自分は不思議なものに感心するように自分を凝視している。


『実家だ!』


瞬間的にそれを察知したケイタは助けを乞うために叫ぼうとしたがやはり体の自由はきかない。


『おい!・・』


俺が悪かった。助けてくれ!そう続けたかったがものすごい速さで対面する者との距離は離れていく。

ケイタはその時これが合わせ鏡をした場面だと悟った。


『みんな!騙されるな!そいつはおれじゃない!!俺を元に戻せ!代われ!代われ!代われ!代われ!代われ!代われ!代われ!・・』


念じることしか出来ないケイタは必死で続けた。だが、瞬く間に光のある世界は遠くなり、また彼に闇の世界が与えられた。


次に気がつくと彼は廊下の突き当たりの鏡の前に戻っていた。


『なんだ、夢だったのか。』


ほっと胸を撫で下ろし、皆の元へと暗い廊下を歩き出す。


『?』


そこでケイタは違和感を覚えた。誰の声もなく、どの部屋からも光すら漏れていないのだ。不安が彼を早足にさせる。得体の知れない状況から彼は静かにリビングのドアを開ける。すぐさま照明のスイッチを入れるが反応はない。


『まさか停電か?』


そう思いながら部屋内を見回る。暗さには目が馴れていて、うっすらと辺りは見える。

すぐに耳鳴りのような静寂しじまが広がると不安になり、彼は客間へ向かう。一旦ドアノブを捻るがそこはミカだけの部屋であることを思い出し、隣の客間へと移り、ドアを叩く。


「シンゴ!リョウヘイ!」


『!?』


自分の声がおかしい。発声しているのにその声が自分の頭に響かないのだ。耳に水が入ってしまった状態をさらにひどくした感じだ。音がないのか、耳が聞こえなくなってしまったのか判然としない。


もう一度彼らを呼んでみたが返事はない。ドアを開けて中に入ったが彼らの姿はなかった。


『コンビニにでも行ったのか?』


胸のざわつきを抑えられず、ケイタは外へ出た。


外にも異変があった。外灯も見渡せる家々も灯りが一つも点いていないのだ。あれだけ騒がしかった虫の声もない。星はなく、空から仄かに地を照らす月は縦に二つ並び、それぞれが目を疑うような速さで相反した月食を繰り返している。


『シンゴ、リョウヘイ、ミカちん、頼む!みんなコンビニに居てくれよ!』


祈るような気持ちでケイタは走った。


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