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涼やかな星  作者: CWP代表取締役ディノニクス
エピソード・ゼロ
6/11

ラムウとリンナ②


二人で同じ時を


ラムウはその夜、リンナ家の宿屋兼料理屋〈クールスター〉のリンナの部屋で一晩中リンナを介抱していた。何度も何度も、リンナは辛い記憶を思い出しては吐き出していた。その背中を『大丈夫大丈夫!』と言いながらラムウは摩っていた。そして、明け方にリンナは泣き疲れて眠った。リンナが起きるまでずっとラムウは寝ずに見守っていた。ラムウはずっと、微笑んだまま愛しい人の寝顔を見守っていた。

リンナが目を覚ましたのは夕暮れ時だった。前日の事件でラムウが人間でないことを知ったが、そのことでラムウに対する見方が変わるようなことはなかった。ただ、ファルクディアの呪いから救ってくれた上、一晩中介抱してくれたという点でリンナはラムウに対する感情をはっきりと自覚した。

それから数年後にリンナとラムウは結婚し、その数年後にはリンナとラムウの間に一人の女の子が産まれたのだった。その、満たされた日常が崩れたのはそんな時だった。

ラムウとリンナは〈クールスター〉を二人で営みながら慎ましく暮らしていた。いつまでしても、リンナはラムウの正体を聞かないので、ラムウから、自分は吸血鬼と人のハーフだと告白した時リンナは『ね?吸血鬼と人のハーフでも不老不死なの?』と尋ねた。それに対しラムウは否定をした。『いや、違う。人間の数倍丈夫で自己修復能力もある、身体能力は吸血鬼のそれだけど、寿命も、老化も人間と変わらないよ。』するとリンナは、『じゃ問題ないじゃない。二人で同じ時を過ごして、同じぐらいの時に終われるならそれでいいじゃない!』と照れくさそうに笑った。


ラムウ・V・ドラクルという男


ある夜、買い出しのために店を出たリンナはそれきり帰ってくることはなかった。その日リンナの他にも後二人、村から人が消えていた。が、村が一丸となって探しても見つからなかった。だがラムウはリンナとの別れを認めはしなかった。したくなかった。ついに、結ばれたというのに居なくなるなど認めはしなかった。だが幼い娘を一人を放って、あてもなく探すなどできることではない。ラムウが思い詰めていると店の扉が開く。そして、ズカズカと中に入ってくるのはラムウの友人のゼアルズだ。とゼアルズはラムウに真剣な目で言った。

「リンナさんが居なくなった日、村のもんじゃない五人の男がでけぇ荷車引いてきて、夜にゃ大荷物積んで出てったんだとよ!そんでよぉ、その荷物に長い赤茶色の髪の毛が数本付いてたらしいんだよ!村であの髪の色の女が後、二、三人いるはずなんだけどいねぇんだよ!さらに、みんな目の色は〈澄んだ青〉‼︎

どうだ!コイツァ偶然の事故か?違うッ!誘拐だろ!」

「…なっ⁉︎」

「フッ、お前のことだ『俺が見つけたいのはリンナだけだ!』とか言ってその二人の情報を気にもしなかったんじゃ…いや違うな。リンナさんがいなくなったショックで二人のこと知らなかったろ?」

「あぁ、全然知らなかった…」

「だろぉなぁ?そしてさらに二つ情報はある!一つ!五人の男は皆フード付きのマント姿で、目の色が緑‼︎二つ!五人の男は王都の方角に向かって村を出た‼︎どうだい?探すあてにはなったろ?さあ!行っといで!」

「けど、エレナが…ほっとくわけには…」

「おい?今エレナのこと『いなきゃよかった』ぁなんて思っちゃいねぇよな?」

「馬鹿野郎!んなこと思うわけねーだろ!この子にあるリンナの面影が、リンナがいなくなってからの一週間を俺が生きていけた理由なんだ!そして今、一週間生きてきたことでリンナの行方が分かった!」

ラムウの目は希望に満ちてはいなかった。いつの間にかまた目が赤くなっている。その赤は、怒りと希望の入り混じった複雑な色合いをしていた。

「おいおい?分かっちゃいねだろ?」

「いや、王都の緑目の連中には心当たりがある。エルフって知ってんだろ?」

「あぁ、けどエルフはそんなことする種族じゃ…」

「エルフを捕まえて生命情報を書き換えた〈ゴブリン〉ってのを作ったやつが王都の裏社会に潜んでるんだ。そいつが青目茶髪の女を集めてんのかも知んねー」

「ゴブリンって、あれじゃねーか!二、三年前のユーピテル連合国との戦争ん時に滅茶苦茶な活躍したやつらの名前だぜ?」

「そうだよ。そのゴブリンは、言わば生物兵器なんだ!…エレナの面倒見てもらってもいいかい?それにゼアルズ、お前料理得意だったよな?」

「エレナちゃんなら任せな!それにこの店も俺が面倒見てやるよ!」

「ああ!ホンッッッッッとにありがと!あとさ、もう二つ頼みが在るんだけど…」

「なんでも言え!お前は愛するリンナさんの為に戦って来い!」

「ありがとう!それで頼みなんだけど…エレナにはお前が父親だって言ってくれ、もしかしたら俺は戻って来ないかもしれないから」

「ゴブリン作った奴ってそんなやばいのか!

おい⁉︎」

「少し考えたらわかるだろ?国の兵士として戦争に出たんだぞ?この国に徴兵制はない!てことはだ!ゴブリンは立派に王国騎士団の騎士なんだ!つまり!作った奴は王国政府のに繋がりがあるか、下手したら政府の命令で作った可能性もあるんだよ!」

「つまりお前、リンナの為に国に喧嘩売る覚悟したってことか?………ん?もしかしてお前さ、政府のお偉いさん達何人か殺すつもり?エレナの父親を俺ってことにしろってのは、もし捕まってもエレナには関係がないようにするためか?」

「その可能性も……ある」

ゼアルズはラムウの目が赤く光ったように見えた。

「だがおい、もし村の皆がお前の嘘に協力したとしてもこの子に流れる血は?吸血鬼の血はどうする?」

「あ!どうしよ?」

「そうだ!俺にいい案がある!お前さ、人を吸血鬼に出来る?」

「ああ出来る…っておい?もしや?」

「そうそのもしやだ!俺を吸血鬼にしろ!」

「えっ?でも辛いよ?吸血鬼の生活は!ハーフの俺の血を飲んだなら多分ハーフより薄いクウォーターってとこだと思うけど…それでも夜は出来るだけ外で星や月の光を浴びとかないと昼間日光に対抗するだけの対抗力がないから注意だよ?」

「あぁリョーカイ!さっ!飲ませてもらうけどいいよな?」

「わかった。」

ラムウは台所の果物ナイフで手首を切って、グラス一杯の血を出した後でその傷を修復した。

ゴクッゴクッ

ゼアルズは一気に飲み干すと笑顔でラムウの肩を叩いて言った。

「言って来い!」

ラムウはゼアルズの優しさと勇気に感動しながら、涙篭った声で返事をする。

「あぁ!行ってくる!」

そのまま走り出すラムウに、ゼアルズは背中を向けて心の中で呟く。

「大好きなダチと、昔惚れた女の間に出来た子だ、ぜってーに幸せにしてやるさ。」


そしてラムウは王都に潜入し、リンナを探し始めた。



ラムウとリンナ①②

この過去篇は今後の話の流れにおいてとても重要な話になっています。

また、「この二人いったいなんなんだよ」と思っていた方もこの話を見て「成る程ね」となるわけです。

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