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初恋は儚く散るのが世の理

深夜0時を回った頃、愛知県のとある住宅街にて1人の少年が死にものぐるいで走っていた。

家と家の間を通り抜け、空き地を横断し、小川をとびこえる。


それは、まるで何かから逃げている様でもあった。


しかし、走っているのは彼ただ1人だけ。人や動物、機械などが彼の後を追う姿は見受けられない。


だが、それは「普通の人」が見た場合である。


では「普通でない人」が見ると、なにが見えるのだろうか。


彼らには、首にロープをぶら下げた、生気の感じられないサラリーマン風の元人間に追いかけられている少年が見えるに違いない。


その元人間…つまり幽霊はその少年を取り殺そうとしていた。


少年の肉体から滲み出る、蜜のごとき香りが幽霊を狂わせる。

どうしてもこの子供の魂を食べてしまいたい。

今食べなきゃいつ食べるの?今でしょ!


そんな考えがその幽霊を悪霊に変えた。


◆◆◆


少年は全力で走っていた所為か、体力が尽きようとしていた。

その反面、疲れなどとうに忘れた悪霊は少年の体力が尽きるのを今か今かと待っていた。


そして、ぐんぐんとその距離が狭まっていき、悪霊が手を伸ばせば届く距離まで近づいた時、少年は死を覚悟した。

そして、すがるようにして神に祈る。


その時、少年の背中から丸い光が現れる。

光は少しずつ人の形になって行き、ついに光は白いワンピースを着たツインテールの少女の姿となった。


悪霊は、光から現れた少女を警戒して飛び退く。

しかし少女はその距離をもろともせず、悪霊に手を翳しなにやら呟く。

瞬間、悪霊は光になって爆散した。


少しの静寂の後、少女は振り向き優しく笑い、フッと消えてしまった。


この瞬間、少年は恋に落ちた。


◆◆◆


あれから、3年が経ち無事高校受験も終わり、俺、一条明は布団の上でゴロゴロしていた。


3年前のあの事件から、既に数十回も幽霊に追われている。

今生きているのは、例の初恋の少女が助けてくれたおかげである。


しかし、恋に落ちただけでなにも進んでいない。

数十回も会っているのにも関わらず。

それには理由があり、彼女に声を掛けようとするとすぐに消えてしまうのだ。


しかし、ポジティブな俺は「恥ずかしがり屋なところも尚よし。」などとほざいている。


そして、1つ気づいたことがある。

俺と同じで、彼女も年相応に成長していると言うことだ。

初めての見た時より色々と大きくなっていた。


ツインテールの彼女の事を考えながら俺は、天井を見る。


「はぁ。あの子名前なんて言うんだろ。…何にも知らないなぁ、俺。…ん?なんじゃありゃ」


と、俺は天井にある小さなシミに気づいた。

俺の部屋は綺麗に整頓されており、週に一回は雑巾掛けをするのでほとんど汚れなどはない。

その際天井も見て、必要であれば長い柄のついたモップで拭いている。


そして、その掃除をしたのは昨日であり、シミをつける様な事などしていないし、雨漏りもしていないので少し不思議に思ったが、来週掃除しようと放っておいた。


◆◆◆


1週間が経ち掃除をしようと雑巾を絞っていた時、ふと、シミのことを思い出し天井を見上げる。


するとそこには、前よりだいぶ大きくなり、まるで人の頭を上から見た時のようなシミがあった。

しかし、少しびびっただけでモップですぐに取れたのでそこまで気にはしなかった。


その日の夜、何かの気配を感じとりふと目を開ける。枕元にあるデジタル時計には午前2時と表示されていた。

少し嫌な予感がしたので天井のシミのあったところを見る。


そこには、今日掃除して消したはずのシミが黒々と存在していた。

いや、ただのシミではない。

シミの周りから中心にかけて緩やかに盛り上がっている様に見える。


目が闇に慣れてきたのでよくシミを見て見ると、その盛り上がりは人の頭の様に見えた。


いや、あれは頭だ。

その証拠に所々から長い毛がはみ出ている。

どうやら女のようだ。


そして、その女は少しずつ出てきているみたいだ。

俺は逃げようと考え、布団をどけようとする。

しかし、体が動かない。金縛りにかかっていた。


天井女は少しずつ出てきて、遂に頭が全て出た。

しかし、それでは止まらず首から下も出てきている。


頑張って体を動かそうとするが、全く動かない。

試行錯誤しているうちにも女は天井から少しずつ出てくる。

そして、女の顔が目の前に来た。


俺の部屋の天井は意外と高いので、天井からぶら下がった場合、こんなに下までは来ないことを考えると、女はものすごく長いと想像できた。


目の前にある女の顔には眼球がなく、眼球があるはずのところには深い闇があり、顔色は土気色で、頰が異常なまでにこけていた。


そして、女の細い指が俺の首にかけられ、締められる。


と思った瞬間、女が光となって爆散した。


その光の向こうに、初恋の女の子がいた。

女の子が微笑み、いつもなら声を掛けて引き留めようとするが、なぜだか今日は体が勝手に動いた。


そして、彼女の細い腕を掴んだ。

幽霊って触れるの!?

などと吃驚したが、触られた女の子の方が俺らかに吃驚していた


「やっと…やっと、貴女と話すことができます。」


そう言い、今まで考えていた彼女に聞きたいことを口にしようとした。


が、それは彼女の泣き顔を見てしまったことで抑止された。


「なんで…なんで、話しかけちゃうかな…。ダメなのに。頑張って我慢してたのに…。もう、会えなくなっちゃうじゃない。」

「え?それって…どういう…こと?」

「私ね、実はあなたのお姉ちゃんなの。」


その言葉に対して口を出そうとすると、彼女は手を挙げそれを抑止し、話を続ける。


「わたしね、あなたの物心がつく前に死んじゃったの。でも小さかったあなたの事が心配で心配で成仏できずにいたら仏様が「彼と口を聞かないと約束できるのなら、彼を守るための力を貴女に授けましょう。でも、彼と話してしまえば貴女は二度と彼には会えなくなってしまいます。どうかお気をつけて。」って言われたの。だから、今まであなたと話せなかったの。……でも、最後に話せてよかった…。……これからも、元気でね。」

「ま、まって!だったら俺も…」


そこまで言うと彼女は俺の唇を人差し指で抑える。


「わたしの分までしっかりと生きなさい、明。途中で投げ出したりとかしたら許さないんだからね!ちゃんと見張ってるから!」


と、彼女は泣きながら無理矢理笑顔を作る。

その笑顔を見て俺は気づいた。

いつも、笑顔で消えていたのは、話せない辛さを俺に見せない為だと。


「じゃあ、私もう行かなきゃ。じゃあね………大好きだったよ。」


彼女は光となって消えた。

俺は疲れるまで泣き、そのまま眠った。


◆◆◆


朝起きると、俺は泣き過ぎて腫れた目を気にしながら母の元へ行く。


「なぁ、母さん。」

「んー?どうしたの?」

「俺って…姉ちゃんいたんだね。」

「え!?なんで知ってるの!?」


母はとても驚いていたが、ポツリポツリと姉の事を色々と話してくれた。

4歳年上だったこと、ツインテールがお気に入りだったこと、俺の事を大事にしていたこと。

そして、死ぬ間際に俺が心配で心配でならないと言っていたこと。


俺はその話を聞き、また号泣してそれを見た母も一緒に泣いてくれた。


十分泣いて母の部屋から出るといつもは口を聞かない妹が心配そうに寄ってきた。そして、


「大丈夫、お兄ちゃんは私が見張ってるから。」


誰に言ったかはわからないその言葉にまた涙を流してしまい、妹の慎ましやかな胸に抱かれていろんな意味で泣いた。

最後までお読みいただき有難うございます。

初めての投稿で文章も拙いですがこれからも頑張っていきますのでよろしくお願いいたします(*´꒳`*)


次は連載小説を書こうと考えております。

もしよろしければこちらも見ていって下さい^ ^

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