ナルアの過去
本日二度目の投降、よろしくです。
「わたしは、お父様……世界神様から生まれた存在なの。お父様は、この世界の管理者として、わたしたちを創り出した。わたしと同時期に創り出された神は、わたしを含めて七人。聖神、邪神、大地神、天空神、海神、冥神、守護神。この七人が、この世界で始原の神と言われている存在なの。……いま下界で名が知られているのは、聖神、天空神、大地神、海神、守護神の五人だけなんだけどね」
「世界神っていうと、僕に[人化]のスキルをくれたあの?」
たしかあの謝罪文に、その名前が刻まれていた気がする。そうなのかと問いかけてみたら、ナルアは首を横に振った。え?違うの?
「あれはお父様じゃないよ。お父様は、もう長いこと眠っているから。ネクロにスキルを付与したのは、聖神」
「聖神が?でもなんでそんなことを……」
「自分のミスだってことを知られるのが嫌だったんじゃないかな?あの子、昔から完璧主義者だったから」
神がそんなことしていいのかと思ったんだけど、ナルアを見ていても、精神面での人間との違いなんてほとんどない。神だからと言って必ずしも潔癖な存在とは限らないってことか。
「その聖神が、ネクロに滅ぼしてほしい相手なんだ」
「聖神を?名前を聞く限り、あんまり悪い存在っぽくはない気がするんだけど……って、邪神のナルアはもっと邪神っぽくないか」
「わ、わたしそんなに邪神っぽくないかなぁ。確かに別の世界の邪神ってもっと荒っぽかったり、いじわるが好きな人が多いけど……」
「いや、ナルアはそのままでいてくれ」
ナルアの頭をなでながらそうお願いする。ナルアはこの清純で無邪気な感じがいいんだ。荒っぽいナルアなんて見たくない。小悪魔っぽいナルアも……それはそれで見てみたい気もするな。
頭をなでられているナルアは、よくわかっていないようで、「ほぇ?」といった表情を浮かべている。
「ん……ネクロって、なでなでするの上手だね、気持ちいいいもん」
「よく妹にやってたからな……あ、妹といっても、前世の話ね?」
「そうなんだ、わたしは聖神とが双子の姉妹で、冥神と守護神がお姉ちゃんとお兄ちゃん。天空神、大地神、海神は妹と弟なんだ」
「大兄弟姉妹だなー、てことはなに?ナルアが聖神を滅ぼしてほしいのって、盛大な姉妹喧嘩ってこと?」
神どうしの争いかと思いきや、その実態は姉妹喧嘩……なんだかなぁ……。
「うーん、そういわれると、そうなのかな?聖神は、わたしのことを目の敵にしてたし。そのせいでわたしはずっとこの空間から出ることができなくなっちゃったんだから」
「この空間に、ずっと?一人でいたのか?」
「うん、聖神は、神としての力を扱うのが下手だったんだ。わたしは結構上手だったんだけどね。そのせいで、聖神はわたしに嫉妬してた。それで、お父様が眠りについてすぐぐらいに、聖神がわたしを滅ぼそうとしてきたんだ。わたしの方が力は上だったから逃げれたんだけど、逃げてる最中に、下界でわたしは世界を滅ぼす存在ってことになってた。あの子がそう誘導したんだろうね。お姉ちゃんとお兄ちゃんもあの子を説得しようとしたんだけど、聞く耳を持たなかったんだって。それからずっと、わたしはここで一人でいたの。もう、どのくらいたったか、忘れちゃうくらい…………だからね、こうやってネクロとお話しできるの、すっごくうれしいんだ」
「おっし、その聖神とやら今すぐ滅ぼしてくるわ」
「ちょ、ちょっと待って!まだ話は終わってないよう!」
『すっごくうれしいんだ』といったときのナルアの悲し気な笑顔を見たら、我慢なんてできるわけがない。今すぐ聖神をボロボロにしたくなる。こんないい子になんてことしやがる!
その後、ナルアの『めっ!だよ?』というかわいらしい静止に生命活動が静止しかけたり、聖神への殺意が吹き飛んで悟りを開きそうになったりと、いろいろとあり、話の再開まで結構かかってしまった。反省。
「ふう……もう、ちゃんと話をきいてよう」
「わかったわかった。ちょっと黒い感情で自分を見失っただけだから、大丈夫大丈夫」
「ならいいけど……。それじゃあ、話を続けるね。まず、聖神を滅ぼしてほしい理由。聖神は、人族の神として下界では認識されてるの。そして聖神は、気に入った人族には加護を与えてるみたいなんだ。でも、気に入った人族ばかりに加護が集中してて、世界全体の力のバランスが崩れかかってる。お姉ちゃんは、冥界の神だから、下界には干渉できない。お兄ちゃんは別世界からの侵攻から世界を守る役目があるから、聖神にまで手を割くわけにはいかない。妹と弟たちじゃ力が及ばない」
「だから、ナルアが聖神を滅ぼすのか」
「うん、でも、ここから出ると、わたしは下界中の怨で弱体化しちゃうんだ。世界を滅ぼす存在って言われてるから、嫌われ者なんだよ、わたし。逆に聖神は多大な信仰で力があがってる。だから、ネクロに頼みたいの。ネクロの魂はこの世界のものじゃない。聖神のミスで魂が輪廻を通らずにこの世界に来ちゃったから。よく魂が壊れなかったと思う、さすがは精神99999だね」
僕がこの世界に転生してレイスになったのって、もしかしなくても聖神のせいなのか?なんてこったい……。
「でも、そのおかげでこうしてナルアのところまでこれたんだよな」
「うん、聖神への信仰がなくて、わたしへの怨もない魂なんて、下界にはもうないから……」
「そうなのか……。聖神、許すまじ」
「……うん、もう大丈夫そうだね」
「え?なんのこと?」
「聖神からの干渉。特異進化した時点でほとんどなくなってたけど、ここにきて完全になくなったみたい」
へ?え、えぇええええ……そんなの受けてたの、僕。
「干渉といっても、異世界転生とか魔物化への疑問を打ち消すのと、あの迷宮を攻略させようとするように思考誘導するくらいかな?」
「……聖神め、苦しまずに死ねると思うなよ……」
「ネ、ネクロ!殺気が漏れてるよう!」
おっと、いけない。落ち着け落ち着け。大丈夫、この怒りは聖神にまとめてぶち込めばいいんだし。
それにしても……異世界に転生、それも魔物になりましたってのに、なにも疑問に思わずにダンジョン攻略を始めるって、今考えるよかなりおかしな話だよな……。思考誘導か、恐ろしい。そしてそれを平然とできることに反吐を吐くほどの嫌悪感を覚える。自分が知らないうちに、他人に操られてるだなんて不気味すぎです。聖神死ネ。殺すことは確定しているとはいえ、どうやって倒せばいいんだろう?それもナルアは知ってるのかな?
「聖神を殺すには……か、どうしたらいいんだ?」
「うん、それも説明しないとだね。聖神は、下界の人族からの信仰心で、力がかなり強化されているの。その信仰心をなくさなくちゃいけない。そのために必要なのが、勇者の殺害」
「なんで勇者を……あ、そういうことか。勇者っていうのが、聖神から加護を受けた存在なんだな?なら、人族にとって勇者ってのは聖神の力をわかりやすく示したもの。それを無残にボロボロにすれば、聖神の力に対する疑いのようなものを人族に持たせることができる。で、その結果信仰心が一時的とはいえなくなる、と」
「その通り。でも、今のネクロじゃ勇者は倒せても、聖神までは倒せないの。だから、ネクロには…………―――――魔王に、なってもらいます!」
へぇ、魔王かぁ……………………。
――――――――――――――――――――って、魔王だと!?
夏休みものこりわずか……どのくらい話を進められるかな?
夏休み明けにテストがあるらしいんだけど、わたし、なんの勉強もしてない!あははははーーーー!