名前が付きました!
よろしくです
「幽霊のお兄さん。お兄さんの名前は、なんていうの?」
「……………………」
「お兄さん?」
「うぇ!?あ、えっと、な、なにかな?」
「もう!ちゃんと聞いててよ!お兄さんの名前だよ、な、ま、え!」
突然の邪神カミングアウトに思考が停止していた。え?てかほんとに邪神?マジですか?確かにものすごい威圧感を感じるし、服装も黒系統のゴシックロリータ。邪神っぽいといえば邪神っぽいけど……。
まあ、美しさが神懸っているっていうのも事実だし、圧倒的上位存在が僕にウソをつくとも思えない。つく必要がないからな。この娘が邪神ということで話を進めよう。………あれ?じゃあ僕は邪神相手にため口で接しないといけないってことですか?………せ、精神ステカンストで助かった。
「僕の名前……あー、そういえば、僕ってまだ名前ないんだよね」
「え?………あ、ほんとだ」
ほんとだ?もしかして僕のステータスを除いたのか?さすが邪神、プライバシーとかガン無視だな。隠すようなものでもないけど。
「うーん………、じゃあ、わたしが名前を付けてあげる!」
「え、いいの?じゃあお願いしようかな。いい名前を期待するよ」
「うぅー、けっこう責任重大……」
邪神……ナルアちゃんが、難しい顔をしながらうんうんうなっている。感じていた威圧感にもなれ、余裕をもってその姿を見ていられる。
……やっぱり、可愛いな。そして美しい。艶やかな濡れ羽色の髪、純白の肌、紅玉の瞳を縁取る長いまつげ、少女から女性に向けて成長途中の肢体は折れてしまいそうな儚さを持ち、それでいてどうしようもなく惹きつけられる色香を放っている。
幽霊な僕にこの表現が当てはまるかわからないけど、この娘を見ていると、胸が高鳴るんだ。どうしようもないくらいに。
「うーん……うーん……」
最初は、圧倒的上位者を前にした畏怖かなんかだと思っていたけど、どうやら違うみたいだ。
彼女が僕のためにこうして頑張ってくれているということが、たまらなくうれしい。これは……もしかして、あれなのか?
東北地方で中心的に生産されている、水稲農林313号。
……すみません、すごく遠回りな言い方しました。一目惚れですね、ハイ。
あれだね、いろんな小説とかで聞くけど、現実では起こるわけないと思ってた。それがまさか自分に起こるとは……。事実は小説より奇なりとはよく言ったものだよ。いや、魔物に転生して異世界に来てる時点で今更か。
うん、彼女が僕をここに連れてきた理由がなんにせよ、僕にできることならなんだってしよう。
「うーん……あ、そうだ!」
「決まったの?楽しみだな」
「うん、えっとね、……ネクロっていうのはどうかな?」
ネクロ……うん、かっこいいじゃないか。僕の好みにもよくあっている。なにより、ナルアがつけてくれたっていうのがうれしい。……あれ?僕ってこんなにチョロかったっけ?
「ネクロ、ネクロかぁ……うん、いい名前だね、気に入ったよ」
「ほんと?よかったぁ……、じゃあ、ネクロのことは、ネクロって呼ぶね。わたしのことは、ナルアって呼んで?」
「わかったよ、ナルア」
ほっとした笑顔を見せるナルア。心のアルバムに即保存しました。
<最上位者より、名前を与えられました。これより、???はネクロとなり、ネームドモンスターとなります>
<ネクロは称号[邪神の眷属]を手に入れました>
ん?ネームドモンスターに、[邪神の眷属]?なんだそれ。
「あ!ご、ごめんなさい……わたしが名前を与えたら、強制的に眷属になっちゃうのに…」
「別に僕はこのままでも構わないよ?ナルアの眷属になると、なにか悪いことでもあるの?」
「ううん、そういうのはないんだけど……。嫌じゃないの?邪神の眷属だよ?その……気持ち悪いとか、思わない?」
ナルアの不安そうな顔。ナルアはそういうけど、本当は拒否されたくないんだろう。邪神だなんて、彼女には一番似合わない言葉なのに。どうして彼女が邪神なんて呼ばれているんだろうか。
気づいたら僕は、ナルアの頭をゆっくりとなでていた。
「別に僕は嫌じゃないよ、ナルアの眷属になったこと。ナルアみたいな可愛い娘の眷属になれて、逆に光栄なくらいだよ」
あれ?ナルアを安心させようと思っただけなのに、なんでこんな変態チックなことを言ってるんだ、僕。……いや、見た目まだ幼いナルアに一目惚れしてる時点でロリコン野郎の烙印を押されてるか。
「それとも、ナルアは、僕が眷属になるの、嫌だった?」
「……嫌じゃ、ない。嫌じゃないよ、……すごく、うれしい。わたし、今まで眷属っていたことなかったから。ネクロが、わたしの初めて」
「……え?」
……おおう、満面の笑みでそういうこと言わんといてください。破壊力がやばいです。死んでしまいます、幽霊だけど。
ナルアの可愛さに頭がやられそうになったのを引き戻し、彼女の発言から感じた違和感のことを考える。
邪神とはいえ、神様だ。それなのに眷属が一人もいない?それっておかしくないか?詳しくはわからないけど、ナルアだってこんな異空間を作り出せるくらいには力を持つ存在のはずだ。アナウンスでも、最上位者と言っていた。
なんで、ナルアは一人なんだ?
「ネクロ、どうしたの?」
「……ねぇ、ナルア。どうして僕をここに連れてきたの?ただ僕に会いたかっただけとか、そんな理由じゃないと思うけど」
「…………うん。それもあるけど、本当の理由は別にあるよ」
さらっと僕の心臓を止めにくるナルアに旋律を覚える。そんなうれしいこと言わんといてください。死んでしまいます。
「ネクロ、ネクロには、勇者を殺してほしいの」
…………………勇者を、殺す?
「そして、勇者に加護を与えてる神を、滅ぼしてほしいの」
神を、滅ぼす?どういうことだ?
「………詳しいことを、教えてくれるか?」
「うん、わかってる。ちょっと長い話になるけど、ごめんね?」
ナルアはそう前置きをして、語り始めた。
彼女が邪神となった原因、そして、世界を狂わそうとする、とある神の話を……。
どうも原初です。
評価を付けてくださったかた、感想を書いてくださったかた、本当にありがとうございます。
更新はどうしても不定期になりがちですが、最低でも一週間に一回は更新します。
今後とも、中二幽霊をよろしくお願いします。