王族貴族はスルーの方向で
はい、一週間ぶりです。今週はちょっとやることが多くて更新ができませんでした……。来週は更新ペースがもう少し早まると思います。
いい天気だ。
空を見上げてみれば、そこに広がるのはどこまでも広い空。雲一つない蒼穹とさんさんと照り付ける太陽だけがそこにはあった。
そよ風がさらさらと吹き、心地の良い涼やかさを醸し出しているのもまたポイントが高い。こういう日は木陰でゆっくりと昼寝をしたいものである。
「ちょっと、ナルア!またそうやってネクロを独り占めして!ずるいわよ!」
「即刻その場所をわたしに譲るべき」
「やだ!絶対に嫌!ネクロの膝の上は、わたしの特等席だもん!」
あ、鳥が飛んでいる。地球にはいなかった種類の鳥だ。鮮やかな空色をしたカラスくらいの大きさの鳥が、背景の空に溶け込むようにして飛んでいく。もしかしたら魔物かもしれないが、襲い掛かってくる様子もないので、それはないだろう。
「オルドを出るまで、ナルアはネクロにべったりだったじゃない!今度は私たちの番というのが道理というものじゃないかしら?」
「ネクロの膝の上という至福空間を、独占するなど万死に値する行為。協定違反にのっとりナルアにはくすぐりの刑を執行する」
「え、ちょっ、ひゃっ!あ、あはははははは!の、ノルン、くすぐったいよぉ~。ていうか、協定ってなに?」」
「そおれ、こちょこちょ。こちょこちょこちょこちょ……むぅ、なんか楽しくなってきた」
ふむ、それにしても、馬車というものに前世今世を通して初めて乗ったけど……。意外と悪くない。揺れがもっとひどいのかなーと思っていたのだけど、全然大丈夫だ。多少の揺れはあるものの、ハンモックやらゆりかごみたいな心地の良い揺れなので、過ごしやすい今日の気候と合わせると、どうにもうとうとしてしまう。目的地まではまだまだなので、少し昼寝をするのもいいかもしれない。ここのところ、ゆっくりと昼寝をするなんて言うことはできないくらいには忙しかったからなぁ……。
「ふぅふぅ……。ノ~ル~ン~!よくもやったなぁ!」
「ふっ、かかってくるといい。わたしとナルアの差というものを教えてあげる」
「って、こら!二人とも!馬車のなかで暴れるのはやめなさい!…………ああ、もう!やめなさいって言ってるでしょ!」
あー……ちょっとうつらうつらとしてきたかなー。うん、疲れがたまってたのかもしれない。これはもう昼寝をするしかないでしょう。ここまで昼寝をするのに適したシチュエーションがそろっているのに昼寝をしないなんて、それはもう逆に失礼ってもんだと僕は思うわけで……。
と、言うわけで、おやすみなさいということで……。
「まて、王よ。あの三人をそのままにして、一人で夢の世界に逃げるな。小生一人であの三人を止めるのは不可能だ」
「…………仮にも主である僕の睡眠を邪魔するのかい、君は」
「それとこれとは話が別だ。このままだと最悪、馬車が壊れるぞ」
「…………………」
見れば、いままで全力でスルーしていたナルア、リンネ、ノルンの三人はいつの間にか、くんずほぐれずのくすぐりバトルロワイアル状態になっていた。三人の美少女が戯れているのはとても眼福なのだが……。馬車がばったんばったん揺れている。
ふぅ、と一つため息をつき、三人を落ち着かせるために声をかける。
「はいはい!馬車がぐらぐら揺れてるから!御者さんが困るでしょ!」
僕がそう言うと、幾分か頭が冷めたのか、ばつの悪そうな表情で席に着く三人。僕の可愛い婚約者様は、またちゃっかり僕の膝の上に乗っかって、こちらに咲き誇る花のような笑顔を向けてきた。それを見て、リンネとノルンは恨めしそうな眼差しを向け、月夜叉は付き合いきれんとでも言うようにそっぽを向いた。
膝の上に乗るナルアのぬくもりを感じながら、僕の意識は少し過去にさかのぼる。
こうして、僕たち五人が馬車の旅なんてものをしているのかというと…………。
「王都?」
「ああそうだ。王都からお前たちに召集がかかった。それも今の国王様直々に、だ」
ギルドマスターからの呼び出しを受け、ギルマスの部屋に訪れた僕ら五人は、オッサンからそんなことを言われていた。
オッサンのいう王都というのは、このオルドの町の国の王都、ということだろう。たしかこの国の名前は……カークルス王国だったっけ?
「王族からの召集ね……。ま、今回の巨神復活のことでしょう?王国の危機を解決した立役者の顔を見ておきたいって言うのと、あわよくば自分たちの陣営に引き込めないか、といったところかしら?」
「ま、そういうことだろうな。ほぼ確実に勧誘されるだろう。オレとしちゃあ、お前らみたいな優秀な冒険者を引き抜かれるのは、正直勘弁願いところなんだが……」
「王都……。騒がしいところ。あんまり行きたいとは思わない」
「わたしは観光とかしてみたいけど……王族とかに会うのって、なんかヤな予感がするなぁ……」
「人間がやたらとたくさんいるのだろう?小生には落ち着かない空間だろうな……」
「私も、はっきり言って貴族連中の相手とかやってられないわ。それに、王都には実家もあるし」
みんな口々に思ったことを言う。
まぁ、僕としても、面倒ごとのにおいがこれでもかと漂ってくるところに、喜んで首を突っ込みたいかと言われたら、それはごめんこうむりたい。貴族とか、前世で読んだ小説でも八割がたはめんどくさいやつらだったし。
……って、リンネの実家って王都にあったんだ。しかもこの国の出身と。もしかして、リンネは貴族様だったりするのだろうか?…………ま、本人が話してくれるのを待とうじゃないか。家族のことなんてプライベートにずけずけ入り込んでいくのも悪いし。
「で?どうするんだ?と言っても、王族の召集ってのは基本的に強制的なものなんだけどな」
「は?強制って……断ることはできないってこと?」
「いや、できることはできるんだが……。王族の命令に背くことは、王族の沽券にかかわるとかいう理由で、騎士団を派遣されかねん」
「返り討ちにできるけど?」
「それはやめてくれ。まぁ、この命令にはおとなしくしたがってくれないか?王族や貴族連中は、機嫌をそこねるとホントにめんどくさいんだわ。最悪の場合、冒険者にも危害が及ぶ」
「うーん。まぁ、そういわれたら断れないんだけど……。別に、あちらさんの要求をすべて蹴っても、特に問題はないんでしょ?」
「ま、騎士団を派遣されるなんてことにはならんだろうな」
それならまぁ、行ってもいいんじゃないだろうか?僕のステータスの封印が解けるまでは、少しゆっくりするのもいいかもしれないと皆で話していた。そのゆっくりする場所を、王都にしてもいいんじゃないだろうか?
王族とやらの対応は…。ま、適当でいいだろ。うん。
「……と、まぁ、僕としては、王都行に反対する理由もないよ。王族とやらの用事をとっとと済ませて、王都観光でもしようじゃないか」
どうかな?と尋ねてみれば、帰ってくるのは肯定的な反応。渋っていた月夜叉も、観光目的なら……。ということで最終的にはうなずいていた。
こうして、僕たちの王都行が決まったのであった。
四章もよろしくお願いします。
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