アイリス再び
あけましておめでとうございます。今年も執筆頑張るぞー!
「あれ?なんだこの真っ白けなところ……。なんか見覚えのあるような、ないような……」
というか、なんで僕は倒れて……。と、そこまで考えたところで、すべてを思い出した。目覚めた巨神、ぼこぼこにされたけど、きっちりとボッコボコにしといたこと。謎のパワーアップとかもあったよな…。とりあえず、ステータスでも確認しとくか。
「ステータスオープンっと……。……って、なんじゃこりゃ!?またステータスとスキルがおかしなことになってるんだけど……。てか、進化してる?……ああ、そういえば、死にかけてた時に、なんかそんなことがあったような……」
一度巨神どもにボコボコにされた後、なぜか体中の怪我が治っていた間の記憶が、いまいち思い出せない。なんかいろいろとやったような気もするのだが……。まぁ、そのあとの戦いも結構、意識があやふやだった気がする。
それにしても、なんかやけに体が重いんだが……。そう思ってステータスを確認すると、何やら不穏な言葉が書かれていた。
「えっと、なになに……。スキル[神格化]の影響によって、ステータスが四分の一に……。一部スキルは使用不可能。そして、その効果時間が、今から……さ、三か月ぅ!?マジで?」
四分の一とは言え、いろいろとおかしかったステータスなら、リンネたちと同じくらい……かな?普通にしてる分には大丈夫だけど、聖神とのゲームが始まったら、心許ないな。状態異常なのか?まぁ、強力な力には副作用があるっていうのは、お約束か。
「まぁ、心配しなくても、そのようなつまらないことはしませんわ」
「……なんとなーく、うっすらと、そうかなー?って思ってたけど……。やっぱりお前か」
「あら、驚いてくれませんのね。残念ですわ」
まったく残念じゃなさそうにコロコロと笑うのは、純白をまとったような、ナルアによく似た少女。聖神アイリス。僕は立ち上がりながら、彼女をジト目で見る。
まぁ、この空間がナルアが創ったものと酷使してたのと、感じたことのある気配で大体わかってたんだけどさ。ステータスチェックとかをわざとらしくやっていたのは、ただの現実逃避だ。ごめんなさい。
「で?一体何の用なの?こちとら死にかけた後、全力戦闘やった後でめちゃくちゃ疲れてんだけど?」
「それはすみませんわ。そんなに長い時間拘束するつもりもありませんし。ご安心を」
「お前にご安心を、とか言われて安心できると思ってる?ねぇ、思ってる?不安しかないよ?」
「ええ、知っていますわ」
にっこり。わぁ、いい笑顔。すごく殴りたい。だが、実力差は進化したことでさらに明確にわかるようになってきた。ナニコノバケモノ、オカシクナイ?
僕と聖神アイリスの差は、蟻と象……ミジンコとクジラ……いや、微生物とドラゴンと言えばいいのかな?まあ、漠然と「やべぇぞ、こいつ」って思ってた時に比べれば、ずいぶんと進歩したものである。
「なにやら、失礼なことを考えていませんか?」
「何のことやら。早く僕をこの真っ白なところに連れてきたわけを教えてよ」
「……まぁ、いいでしょう。と言っても、あなたをここに連れてきた理由は、第一ゲームはあなたの勝利で終わりましたから、口惜しさからくる嫌がらせ……みたいなものです」
「おいこら」
「冗談です♪」
またもにっこり。花開くような笑顔とはこういうもののことを言うのだろう。ナルアに似た美貌が、しかし、ナルアとは違った魅力で笑いかけてくる。まぁ、そんなことをされたところでいら立ちしか湧いてこないけどな!
「ネクロをここに連れてきたのは、第二ゲームの話をするためです。第一ゲームがあなたの勝利で終わりましたので、第二ゲームはあなたの[神格化]の副作用が終わるまでは開始しないと約束しましょう」
「それは……ずいぶんと親切な話だね。なんか悪いものでも食ったの?」
「……まぁ、いいでしょう。そういわれても仕方ないことをしてきましたからね。これは敗者であることを自覚するための、わかりやすい戒めのようなものです。勘違いしないでくださいね?準備期間が十分に取れるということは、次のゲームは今回よりも難しいものになるということですので」
「ああ……そういうことね、納得した」
いたずらっぽい笑みを浮かべてそういう聖神アイリス。だが、そんな彼女を見ていて、なぜか強烈な違和感のようなものを覚えた。
恰好や、口調など、わかりやすいところはまるで変わっていない。なのに、何だこの違和感。それが気になって、ついつい聖神アイリスのことを凝視してしまった。
じいっと見ていると、なぜか聖神アイリスはそのシミ一つない純白の頬に、少し朱を刺した。あれ?何その反応。
「な、なぜそんなにじっと見つめるんですの?」
………………………………………………………………………………はっ!
て、照れてる……だとぅ!?
いやいやいやいや、待て待て待て待て!おかしいだろ!聖神アイリスだぞ?何だその乙女的反応!?あの邪悪に満ち溢れた姿はどこ行ったんだよ!?
そうやって内心プチパニックになりかけるくらいに、聖神アイリスの反応が衝撃的だったのだ。まるで別人のようである。てかもう別人なんじゃないの?という感じだ。そういえば、さっきからやけに感情豊かだよな?あの狂気的な笑みを浮かべるだけだった聖神アイリスが?
疲れていたのか……?こんなあからさまな変化に気づかないとは……。
まじで、何なんだーーーーーー!!と叫びたいんだけど………ん?
と、そこで僕はあることに気づいた。先ほどから感じていた違和感の正体に。それは、聖神の瞳。ナルアと同じルビーの瞳の奥、そこに、あのドロドロになるまで煮詰めたような深淵の闇がなかった。澄んだ紅色があるだけだった。
これは………どういうことだ?
僕が内心の警戒を悟られまいとしていると、聖神アイリスは深呼吸をして、頬の赤みを鎮めていた。そんな行動一つでも、すごく不気味に思える。
「さて、伝えたいことも伝えましたし、そろそろ下界に帰しますわね」
「あ、ああ」
僕のそんな内心など知らないであろう聖神アイリスは、そういって腕を一振りする。すると、僕の足元に魔法陣が浮かび上がる。
こうして、何やらもやもやしたものを抱えたまま、聖神アイリスとの突然の再開は終わりを告げた………。
はい、つっこみどころだらけだろうけど、ちゃんとかんがえていますので………。
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