混沌を生み出す者
はい、ネクロくんが進化しまーす。てか、しました。
「……ふぅ。あー痛かった。めっちゃ痛かった。死ぬかと思ったわ、マジで」
闇の球体から飛び出たネクロは、そういって顔をしかめる。体の稼働を確かめるようにあちこちをぐるぐると動かす。ティフォンの魔法によって体中にできた傷は、跡形もなくなくなっていた。
そんなネクロを、信じられないものを見るような目で見ているのは、巨神の二柱。驚愕を声ににじませながら、ネクロに問い掛ける。
『魂の質が、まるで違うものに変わっているだと?おかしい……進化や特異進化などでは説明がつかんぞ。貴様、何をした?』
「何をした、ね。たぶん説明してもわかんないだろうからなー。ま、禁則事項ってことで」
『はぐらかすか……まぁ、いい。貴様が復活したところで、もう一度滅ぼせばいいだけだからな』
スルトはそう言うと、炎をまとわせた巨剣を、ネクロに向かって振り下ろした。その斬撃には当然のように神気が宿っており、当たればネクロの魂に多大なダメージを与えるだろう。
そう、当たればの話だ。
「どこ狙ってんの?」
ネクロの声が、スルトの背後から響く。そしてその直後、スルトにこれまで体験したことのない衝撃が襲い掛かる。スルトの巨体を崩すような衝撃。ティフォンですら衝撃によろめくスルトをみて驚愕している。
『な、何が……』
「反応が遅い」
『グハァ!!』
ズドン、と今度は前方からスルトを衝撃が襲う。ふらついたスルトは、衝撃の正体を何とか知ろうと、衝撃の発生地点を見る。そして、衝撃を叩き込まれた時以上の驚愕に、目を見開いた。
スルトの視線の先にいたのは、片足を振り上げた状態で止まっているネクロ。スルトを襲った衝撃の正体は、ネクロの蹴撃。スルトをサッカーボールのように蹴り飛ばしたネクロ。その顔には、挑発的な笑みが刻まれており、スルトに向かって、右手の人差し指をくいくいっとしている。「かかってこい」と言外に言われたスルトは、ネクロに向かって先ほど以上の速度で剣を振るった。しかし、その斬撃がネクロをとらえることはなかった。斬撃がネクロのいたところを通り過ぎるとほぼ同じ瞬間に、ティフォンが『ぐぅっ……』と苦し気なうめき声をあげた。
スルトが急いでそちらに目を向けると、そこには上半身をのけぞらせたティフォンの姿が。よく見ると、ネクロがまた片足を振りあげている。ティフォンはとっさに下半身の蛇頭にネクロを襲うように命令する。龍化したネクロよりも巨大な蛇頭は、体をくねらせながらネクロに牙をむく。三頭の蛇頭から放たれる連撃をひらりひらりとかわすネクロ。巨体が発生させる暴風をものともせずに、またもや蹴りで蛇頭を撃退した。
『な、なにが起こっている……?』
スルトが困惑の極まった声を上げる。ネクロの復活はまだ理解できる。だが、なぜこれほどまでにパワーアップしているのかが全く理解できない。それはティフォンも一緒だった。
『こ、こんの蛇モドキが!』
ティフォンが自らの周囲に魔法陣を張り巡らせる。そしてそこから機関銃のごとく放たれる神気交じりの魔法弾。蛇頭は口からブレスを吐き、魔法弾の隙間を埋める。
その波状攻撃を前にしても、ネクロは焦り一つ浮かべない。魔法弾に対しては同じように魔法弾で応戦。空中で魔法弾同士が激突し、はじけ飛ぶ。蛇頭の放ったブレスは、そもそもネクロの素のステータスを抜けるような攻撃ではない。まるで相手にされずに、蛇頭はもう一度ネクロに蹴っ飛ばされた。
蛇頭を蹴り飛ばしたネクロを、スルトの巨剣が襲う。背後から隙をついた一撃だったが、ネクロは一瞥もしないで回避。すさまじいスピードでスルトに接近すると、正中線に向かって拳撃を叩き込んだ。体をくの字に折り曲げるスルト。そうして下がったスルトの顎をネクロは蹴り上げる。
顎を蹴り上げられ、揺れる頭でスルトは考える。いま自分を襲っているありえない現象のことを。なぜネクロの力がこれほどまでに上がっているのか。先ほどから喰らうこの攻撃は何なのか。常に違う位置から繰り出されるネクロの攻撃に耐えながら、スルトは必死に考える。
(確かにやつは瀕死の状態だった。なぜそこからこのような状態に?あの人間が何かしたのか……?いや、あれは戦う力すらない矮小なものだったはず。ならなぜ……)
いくら考えようと、その答えは出てこない。その間にもネクロはスルトとティフォンの両方に攻撃を加え続ける。痛みも衝撃もある。だが、傷としてはすぐに回復する程度の攻撃。だが、それでも何度も何度も喰らえば、肉体より先に精神がやられてしまう。
『くっ、な、なんなんだ。貴様はいったい、何なんだ!』
だからスルトは叫びをあげた。強者であるというプライドをかなぐり捨てて、全く未知の相手に問いかける。何者のなのか、と。
スルトの叫びを聞いたネクロの行動がぴたりと停止する。攻撃をやめたネクロはどこか不安を誘うクククッ…という笑みを浮かべると、巨神二柱の顔を高さまで高度を上げた。
そして、口元に不敵な笑みを浮かべたまま、ネクロは右手を広げて顔の前に、左手をすっと前に差し出し、パチンとフィンガースナップ。そして伸ばした指でスルトとティフォンを指さした。
「そういえば、まだ名乗っていなかったね。これから僕に殺される君たちに、せめてもの華向けとして、僕のことを教えてあげるよ」
ネクロは両手をバッと広げると、戦場すべてに響けとばかりに、叫びを上げる。
「我が名はネクロ!異世界にて受けた死の運命に抗い、この世界に降り立った異端者にして、邪神の唯一の眷属。霊として生まれ、龍を喰らい、そして邪なる力を手に入れし者。聖邪は我が元にひれ伏し、世界は我が手のひらで踊る。禁忌を冒せどもそれをさばくことかなわず。我は異端にして異常、そして異質。汝らの現実をことごとく打ち砕く混沌なり!さぁ、見せてやろう、我の力を。見学料は……貴様らの命だ!」
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ネクロ
種族/混沌龍帝・死霊種 ランク9
レベル1
生命力 500000 魔力 666666
筋力 50000 耐久 99999(カンスト) 敏捷 50000 知力 80000 精神 99999(カンスト) 運 3
種族スキル
[反逆許さぬ支配力][霊能力][存在喰らい][生殺与奪は我が手中に][龍化][龍魔法][移ろいゆく竜魂][千魔の叡智][混沌化][邪力創成]
スキル
[漆黒質][改竄されし系統樹][魔導皇][神格化][邪気眼]
固有スキル
[中二病]
称号
[異世界より転生せしもの][精神の極み][殺戮者][無敵][耐久の極み][ユニークモンスター][邪神の眷属神][邪神の伴侶(仮)][ネームドモンスター][死者の導き手][存在喰らい][妖刀の主][魔王の王][悪なるもの][禁忌を冒した者][混沌の化身]
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ステータスの項目が減っているのは、進化によって統合されたからです。
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