登場、邪神ちゃん!
よろしくです
ん……あれ?なんだここ。
さっきまでダンジョンっぽいところにいたはずなのに……。それになんだこの人の精神を壊しに来てる空間。どこまでも続く真っ暗闇とか、心臓の弱い人には一発アウトだぞ?まあ、精神ステカンストの僕にはあんまり関係のないことだけど。
と、そこで、なぜか僕の体が半透明じゃなくなっていることに気付く。足もちゃんとあるし。いつの間に[人化]を使ったんだろうか?謎だ。
そういえば……進化だどうとか、意識を失う前にアナウンスされてたっけ?ステータスを確認してみよう。
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???
種族/霊人 ランク4
レベル1
生命力 254 魔力 87000
筋力 32 耐久 99999(カンスト) 敏捷 354 知力 2348 精神 99999(カンスト) 運 3
種族スキル
[念力][憑依][浮遊][透過][吸命][狭間の存在]
スキル
[魔力撃]
固有スキル
[中二病]
称号
[異世界より転生せしもの][精神の極み][殺戮者][無敵][耐久の極み][ユニークモンスター]
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ワッツ?
な ん だ こ れ は 。
おかしい、これは進化じゃない。強くなってるとかそういったレベルじゃない。ほとんど一桁だった耐久もカンストしてるし……あ、これは称号[無敵]の効果なんだ。
増えた項目の確認をするか、何々……。
種族スキルの二つ、[吸命]と[狭間の存在]。前者は触れている相手の生命力を奪い自分のものにするスキル。アンデットらしいスキルだと思う。そして[狭間の存在]。これがよくわからない。説明には『生と死との狭間に属する存在。ゆえにその二つを自在に操ることができる』と、恐ろし気なことが書かれている。わかんないから触れないでおこうっと。
そして、一気に増えた称号。[殺戮者]、[無敵]、[耐久の極み]、[ユニークモンスター]の四つである。[殺戮者]はよくわかる。あれだけ魔物を殺しましたもんね。そりゃこんな物騒な称号の一つや二つ付きますって。
そして[無敵]。これは自分よりも強い相手に無傷で完封するともらえるらしい。強さっていうのは、ランクとかレベルとかそのあたりのこと。しかも一体殺したくらいで付くほど甘くはない。何体も同じ条件で達成しなくはいけないそうだ。効果は耐久ステをカンストさせるというもの。そのおまけのような感じで引っ付いてくる[耐久の極み]は、物理攻撃全般に極耐性を得るというもの。[精神の極み]と一緒だな。
そんでもって[ユニークモンスター]。これは、世界に一体しかいない魔物に与えられる称号。この称号を持つ魔物は、ステータスの上がり幅が大きくなり、さらに、特異進化しやすくなるらしい。
特異進化?と首をかしげたが、そういえばそんな言葉をアナウンスで聞いたなぁ、と思い出す。たぶんレイスから霊人に進化するのは、通常ルートではないのだろう。スキル[人化]を持っていたのが原因なのかもしれない。
さて、ステータスの確認も終わったことだし、次はこの変な場所について考えてみようか。さっきまで僕はダンジョンにいたはずで、あそこの魔物軍団を全滅させたところまでは覚えているんだけど……。それ以降は気を失っていたのか、記憶がない。幽霊なのに記憶を失うことかどういうことなの?と思うが、まあ起きてしまったことはしょうがない。おかしなことだけど、現実なんだろう。
どこまでもどこまでも続く無限の闇。視界がないんじゃなくて、そこに闇があるということが認識できている。闇を認識っていうのも変な話だけど。
そして、この空間が僕よりはるかに力を持った存在によって作られたのだということがわかる。この空間を形成している力、その威圧感がひしひしと感じられる。威圧感だけじゃない。もっと別な、狂気のようなものも感じる。
閉じ込められたのか?…………いや、こんな空間を作れるようなやつが、僕ごときを拘束する意味が分からない。邪魔なら、ろうそくの火を吹き消すかのように僕の命を奪い取れるだろう。何かを命令したいなら、軽く屈服させるだけでいいのだ。拘束なんて非効率な手段を取る意味があるのか………?
考えても答えは出なかった。わかんないことは放置しよう。うん、決して考えることがめんどくさくなったわけじゃないよ?
というわけで、この空間の創造主が出てくるまで、ボーっとするか、[魔力撃]の新技でもかんがえるかねぇ……っと、そういえば十字架がないぞ?あれ、いい武器だったんだけど……後で返してもらえるかな?
「あっ、ごめんごめん。そういえば、十字架置きっぱなしだったね。はい、返すね」
ポンっと僕の目の前に現れる十字架。僕はそれを[念力]で浮かし、素振り(?)をする。うん、重量的にも間違いなく僕の十字架だ。親切に持ってきてくれるとは………………………………………………ん?
目の前には、いつの間にか一人の少女が立っていた。黒いフリフリのドレスを着た、幼い少女。ぎりぎり中学生くらいに見えなくもない。闇の中にあってもなお暗い黒髪を腰まで伸ばしており、肌は処女雪のような白さを誇っている。その中にあって、鮮血のような瞳が輝いている。美しい。そんな陳腐な言葉しか出てこなかった。
ゾクりとした。少女の人間離れした可憐さと艶やかさがまじりあった美しさに。そして、少女から放たれる、圧倒的上位者の気配に。間違いない、僕をここに連れてきたのは彼女だ。
「…………あ、ありがとうございます」
「もう、硬いよー。もっと砕けた感じでお話してほしいな?」
小首をかしげながら、かわいらしくそうおねだりしてくる。あざとさを感じさせない自然な上目遣いに、脳髄が溶かされていくかのような熱を覚えた。彼女を見ているだけで、体が、心が、彼女のことを求めてしまう。魅了されてしまう。
「わかった、ありがとう。……これでいい?」
「うん!それでいいよっ!」
ぱあぁぁ、という効果音が聞こえてきそうな邪気のない笑み。あるかもわからない心臓がどくりとはねた。今にも暴走しそうな心を静めながら、彼女に問いかける。
「ねぇ、聞いてもいいかな?」
「うん、いいよ。なになに?」
「君は……誰?」
僕の問いかけに、彼女は『しまった!』みたいな顔をして、えへへ…とごまかし笑いをした。それすらも僕の心をかき乱す。
「わたしは、邪神ナルア。よろしくね、幽霊のお兄さん」
……じゃ、邪神と来ましたか…………。
感想とか評価とかくれるとうれしいな