目覚めし巨神におはようの最大火力魔法(キリング・マジック)
総合評価が300超えましたーわーい。
三つ子山のひび割れは、どんどん大きくなっていっている。もう少ししたら割れてしまいそうなほどに。
そして、そこから漏れ出る力は、余波だけですべてをぐちゃぐちゃにしてしまいそうなほどの威圧感を放っている。この卵から一体何が生れ落ちるのだろうか。それが絶望であることだけが明確だった。
どうしようか……と考える前に体は動いていた。ナルアをおんぶしたまま、高速で三つ子山に接近する。夜間の散歩で三つ子山の近く飛んでてよかったと思う。
「しっかりつかまっててね、ナルア。飛ばすよ!」
「うん!」
風を切り、夜闇を突き破って飛翔する。早くしないとあれが目覚めてしまう。それはまずい。何せオルドも町はまだ眠っている。あんなのが暴れたら、睡眠中だった人たちは全員死ぬだろうと簡単に予測できる。
飛翔しながらも、情報収集だけは忘れない。三つ子山に向けて分析をかけまくる。
くそ、まだどんな奴が出てくるかはわからないか……。でも、あの割れそうな殻みたいなやつが、龍魔法の封印魔法、『絶龍封陣』だということはわかる。つまりあれは龍族が封印したってことになる。
ん?まてよ。じゃあ、あれが目覚めた時に真っ先に狙われそうなのって僕!?おいおい、確かにこんなのに閉じ込められたのは激おこだろうが、それは僕のせいじゃないといいたいぞ!
そうこうしているうちに、殻の罅が限界になっているっぽいもう三つ子山の全体が罅でおおわれている状態だ。覚醒の時来たりということだね……。なら、最大限にやれることをしないと!
『リンネ!ノルン!月夜叉!寝てるところ悪いんだけど、起きてくれるかな!』
『……ん、ふぅ……にゃに……ネクロぉ……』
『…………………………ねむい』
『何用だ、王よ。まぁ、このおかしいくらいの力を感じるということは、これが問題とやらなんだろう』
『月夜叉のいう通り、緊急事態だから、急いでギルドにこの話をしてきてくれるかな?おっさんならもうこの力のことは気づいてるだろうから』
『緊急事態………?……って、何よこの膨大な魔力の胎動は……』
『……眠い、けど、一仕事しなくちゃ』
『王よ、小生はどうすればいいだろうか』
『お前はさっさと僕のところに来て援護しやがれ』
『……承知した』
『ちょっとまって、ネクロはどうするの?』
『僕は今から目覚めるものの足止めをしとくから、とりあえず住民の避難と冒険者の収集、頑張ってね』
『了解、ネクロもがんば』
『うん、ありがとう、ノルン』
いったん通信を切る。これは相互受信という魔法で、これも分析とかと同じ分類の魔法だ。魔力と一定の知力があればすぐに使える魔法である。オンラインゲームのチャット機能みたいなものだと思えば大体あってる。パーティー内でしか使えないしね。
相互受信によって町のほうはこれで大丈夫だと思う……たぶん。まぁ、リンネとノルンがいるから、最悪の事態にはならないんじゃないかな?
ととっ、そうしているうちに、三つ子山がかなり迫ってきた。高度を上げて足止めの準備に入るとしようか。その前に、ナルアに防護魔法をかけてっと。
「ナルア、あの三つ子山の封印が解けたら、とりあえず一発ぶちかますから、しっかりつかまってて!」
「うん……。でもネクロ。あれ、下級だけど神だよ。そしてあの大きさ……。たぶん、巨神だと思う」
「巨神?巨人族と何か関係あるの?」
「はるか昔に、神龍と戦って封印された存在。ただ力だけを求めて、神にまで至った三柱の巨人族のことだよ」
「それだけ聞くと単なる脳筋のように聞こえるけど……」
「うん、まぁ、脳筋は脳筋なんだけど。一応下級神だから、ランクで言ったら十八くらいかな?でも神力は使えるから、気を付けてね」
「うん」
なるほど、結構かなりヤヴァイ相手な感じだね。これは足止めというより、さっさとぶっ放した方がいい気がする。そうと決まれば、そうしてしまおうか。
アイテムボックスから杖を取り出す。ウロボロスとデスペラードだ。今回はスキルのほうは使わずに、単純に杖の性能のほうを役立ててもらおう。
そして、今から放つ一撃の威力やら精度なんかを高めるために、様々なスキルを発動していく。[反逆許さぬ支配力]で周囲の自然魔力をかき集め、僕の魔力と混ぜ合わせる。これは魔力昇華という技術で、優れた魔法使いならだれでもやっているそうだ。リンネにおしえてもらったものの一つである。
さらに、龍脈からもエネルギーを引っ張ってくる。さらにさらに聖光と妖気も混ぜ合わせる。異なる力四種の融合。名付けるなら[漆黒質]とでもいうべき真っ黒なオーラになった。あ、[中二病]発動した。
とりあえず、その[漆黒質]と[千魔の叡智]、そして[龍魔法]を中心に魔法を構築していく。今出せる最高出力を、己の中二力を信じて創り出す。
……詠唱は大体決まった。では、魔法名は?……うん、これにしよう。頭の中に魔法の全容を映し出し、最終確認………おk。これで撃てる。見たところそろそろだろ、巨神とやらが出てくる前に、さっさと詠唱してしまいますか。
「我は龍の血脈を冒すもの 魔帝死霊龍の名において命ずる
幾千の魔法は 我が右翼となりて敵を討ち 龍の秘法は 我が左翼となりて聖を滅ぼす
我が跡には何も残らない すべてが消え すべてが死ぬ
なぜなら我は孤独だから ただ一人勝利の美酒に酔うのは我なり
漆黒は鋼 黒鉄を殺意の焔にくべ 作り上げるは一振りの剣
我が逆鱗に触れし汝に与える審判 その罪に対する報い
闇より暗い 夜より冷たく 深淵よりもなお深い
漆黒の刀身はすべてを終わらせ そして始まりの礎になるだろう
さぁ 恐れよ 汝が矮小さを 悔め その脆弱さを
貫かれることしかできず 切り裂かれることしか望めない
汝が運命はこの剣にゆだねられた その道しるべに従いて進め
その先に待っているのは死か それとも滅びか
汝の意志などそこにはない ただ黙って受け入れよ
そう それこそが魔龍の本性 森羅万象を覆すもの
狂うような奔流よ 愚かなるものに牙を突き立てよ
流転せし終焉の龍剣・界滅」
長ったらしい詠唱を終え、あまたの魔法陣から作られた剣を滞空させる。眼下の三つ子山は、すでに爆発寸前といったところだ。
―――そして、その時は訪れる。
ひび割れていた三つ子山から、ビキリとひときわ大きな音がする。龍族の封印が崩れ去ったのが分かった。殻はどんどんはがれていき、ついにそれが姿を現す。
でかい。そんな感想しただけないような大きさ。生物として間違ってる巨体を、それはゆっくりと起こし始めた。それが三体。
一体目は、異形。大量の腕と、大量の顔を持った化物。その大きさは優に五百メートるを超えている。
二体目は、上半身が人で、下半身が蛇というこれまた化物。大きさは一体目よりも大きい。六百メートルくらいだろうか?
そして三体目。全身が黒い、余すところなく漆黒のそれは、その巨体に似つかわしい巨剣を持っていた。そして、こいつが一番危ないと、本能が警鐘を鳴らしていた。
まぁ、この中で一番危なくないのはっと……うん、アイツだ。その顔と手がいっぱいあるやつ。一番感じる力が小さい。と言っても普通じゃ考えられないような力なんだけど。
魔法で作り上げた漆黒の剣。それにさらに力を注ぎ込む。[漆黒質]を注がれた剣は、まるで吼えるような軋みを発した。二本の杖を振り上げて、振り下ろす。その先端は、異形の巨体にむけて。
「さてと、おはようございます、死ね!」
最近詠唱を考えるのもつらくなってきたなぁ………。
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