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中二病幽霊が、異世界でおこす嵐、その物語です  作者: 原初
冒険者と第一ゲーム
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魔術師が語る拳の美学 4

あ、どうも。やっとテスト週間おわったんで、今日からまた一日一話更新します!

「この程度か……。期待はずれにもほどがある」


 アレイスの放った炎の中から、無傷のネクロが出てくる。鉄すら溶かす炎の一撃を食らってもまるでダメージのないネクロにアレイスはおびえの混じった視線を向ける。


「あ、ありえない!なんなんだ、なんなんだお前ァアアアアアア!!」


 狂ったように魔法を連打するアレイス。ネクロはアレイスが放つ魔法すべてを腕の一振りでかき消していく。実際は腕を振るうとともに魔力を放って魔法を迎撃しているのだが、焦りに焦っているアレイスにはネクロが得体のしれないことをしているように見えている。


 アレイスが魔法を放つ、ネクロがそれをかき消す。そんなやり取りはアレイスの魔力がなくなるまで続けられた。


「正しく雑魚だな、ランクS。あれだけ御大層なことを吐いておいて、これか。がっかりだ」

「ありえない……Cランクごときに僕が負ける……?そんなこと、あっていいはずがないんだ……」


 アレイスはうつろな瞳で虚空を見つめながら、ぶつぶつとつぶやいている。それを見てため息をついたネクロは、億劫そうにアレイスの襟首をつかみ、そのまま持ち上げた。母猫に運ばれる子猫のような体制になったアレイスはじたばたとネクロの手から逃れようとする。


「は、離せぇ!」

「普通に断る。はぁ……。私はこんな雑魚の相手をわざわざしていたというのか……。こんなことならとっとと帰ってナルアに今朝のことを平謝りするべきだったか………」


 微妙に情けないことを言いながら、ネクロはアレイスの目をじっと見つめる。そこに宿っているのは、憐れみと侮蔑が混じった感情。


「さて、自意識メン。近接戦闘では圧倒され、魔法はまるで効果がない。自分が積み上げてきたもの、努力して手に入れたものを全否定されるのは、どんな気分だ?さんざん人を見下してくださりやがってなぁ。まぁ、こうしてお前の無様な姿が見れたことで溜飲を下げてやってもいいんだが………」

「………ふざけるな……ふざけるな!貴様のような卑怯者が、僕を否定するな!Sランクだぞ!?『赤竜の咆哮』のクランマスターだぞ!?貴様みたいな馬の骨など、声をかけることすら許されない存在なのだぞ!?だいたい、コード嬢とブリンガー嬢と貴様が行動を共にしているのも不敬極まりないことだとなぜ理解できないのだ……」

「…………マジで気持ち悪いんだけど、これ」


 思わず素が出てしまったネクロは、アレイスを持っている手をぞうきんでもつまみ上げるかのような持ち方に変更する。そして、そのままごみのように前方に放り投げた。


 受け身も取れずにアレイスが叩き付けられたのは、ずっと観戦モードだったグランドのそば。グランドは呆れた視線をアレイスに注いだが、何も言わずにネクロに視線を戻した。


「無様な無様な自意識メンクン。お前に私との力の差というものを教えておいてやろう」


 ネクロはそういうと、魔力を高め始めた。それを察知したグランドが慌てて退避しようとするが、ネクロの『逃げるなよ?』という視線に縫い付けられる。しぶしぶその場にとどまるグランドを見てから、ネクロは龍脈に意識を向ける。


 龍脈とは、世界のズレ、いわゆる亜空間を通るエネルギーの流れのことであり、また、龍族以外はその存在を感知できないことから龍脈と呼ばれている。竜と龍の大きな違いは、この龍脈を感じ取れるかが大きい。

 

 龍脈に意識を向けたネクロは、そこに手を伸ばすようなイメージを浮かべる。亜空間を流れるエネルギーと、自分の魔力を接続するイメージ。そして龍脈の流れから力をくみ取っていく。


 ネクロが龍脈から力をくみ取るたびに、場に膨大な生命力が満ちていく。それは目には見えない力となり、場を支配していく。


 場の緊張感がどんどん高まっていき、それが最高潮まで高まったとき、ネクロが口を開いた。



「龍之理ヨリ万象ノ煌キヲ吹キ消ス吐息ヨ顕現セヨ 天龍咆哮」


 バッと掲げられたネクロの右手に、渦巻いていた龍脈のエネルギーが集まり、さらにネクロの魔力がまじりあっていく。


 龍魔法(ドラゴ・マギステル)、『天龍咆哮』。ネクロの手中に収束していくエネルギーは、龍のうなり声のような音を上げて、どんどんと圧縮されていく。やがて球体となったそれの周りには、いくつもの魔法陣が立体的に並び、帯状になって球体を包んでいく。


 そしてそれは、天を貫く閃光となった。膨大なエネルギーの奔流は、大気を焦がしながら天昇る龍のごとく空へと放たれた。


「な、な、な………………」

「うおー……すげー……」


 強大過ぎる魔法を見せつけられたアレイスは恐怖と驚愕を、グランドは遠い目をして現実逃避をしていた。二者二様の反応を見せた二人に、魔法をうちはなったネクロが向きなおる。


「これが、私の力だ……まぁ、杖も強化魔法もスキルも何も使っていない魔法だがな」

「いや、もうこいつ聞いてないぞ?」


 グランドのそばで崩れ落ちていたアレイスは、あまりの衝撃に気を失っていた。白目をむいて倒れているアレイスを一瞥したネクロは、ふんっと鼻を鳴らすと、もう用はないとばかりに視線をそらした。


「で、おっさん。どうだった?」

「どうだったもなにも………龍ってこえぇ」

「ははは、でもまあ、今のところ冒険者ギルドとことを構える気はないから安心してよ」


 ネクロは口調を普段のものに戻すと、にっこりと笑みを浮かべて言った。


「僕たちにちょっかいかけない限り……ね」

はい、今度からはネクロ視点に戻ると思います。そして三章もあと十話くらいで終わる……かな?

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