戦闘?いいえ、蹂躙です2
よろしくです
あかん、なめとった。
僕の目の前には、数えるのが馬鹿らしくなるほど大量の魔物。それが、僕に殺意を向けながら襲い掛かってくる。ゴブリン、ホブゴブリン、ウルフ、スケルトン。雑魚の群れが僕に向かって熱い視線を向けてくるのだ。僕の人気っぷりがやばい。
って、そうじゃない。やばいのは今の状況だ。
右に向かって十字架を放つ。それだけで、右側にいた魔物は絶命。攻撃の好きに襲い掛かってきたウルフを[閃爪]で切り裂き、前方に[閃穿]を放つ。風穴を開けた魔物たちが、バタバタと倒れる。
そして、魔物が倒れたことによってできた空白に、さらに魔物が押し寄せてくる。バーゲンセールかい。
うわー。これ、戦闘が終わる気がしねぇ。
たしかに、魔物の一匹一匹は弱い。十字架を振り回せば、あっけなく死んでいくくらいには弱い。物理攻撃しかしてこないから、[透過]のある僕にダメージを与えらえるわけでもない。
恐ろしいのは、その物量。
数の暴力とはよく言ったものだ。倒しても倒してもきりがない。際限なしに向かってくる。生命力の消費はないにせよ、[閃穿]と[閃爪]も使っているので、魔力がなくなりそうになっている。
うーん。いったん撤退することも考えておくか。
それにしても、なんで倒しても倒しても魔物が出てくるんだろうなー。あれか?無限沸きとかそういった罠なのか?
気になったので、[浮遊]で最大高度まで上がる。対空攻撃的なものを使う魔物はいないようなので、空中が今のところ一番安全。確認する間も、下では十字架を暴れさせておく。
で、魔物の群れの工法を確認…………って、あーーー!
なんかいかにもボスです!といった感じの魔物が、一定の割合で魔物を呼び出しているのが見えた。そして、そのボス魔物の数は、視認できるだけでも五十は超えている。
なるほどー。この魔物の量は、ボスの取り巻きみたいなやつらだったのか。
原因が分かったところで、対策をするためにいったんにげ……せ、戦略的撤退をしよう!
僕が入ってきた通路、その入り口をふさいでいる魔物に向かって、十字架をぶち込む。そして蹴散らした。
そのあいた穴に向かって、全力で[浮遊]する。[念力]も使って、自分をぐいぐい後押し。一人ブースターである。
よーし、通路まで逃げ込めば、魔物は追ってこないみたいだ。一安心かな。
さて、魔物の軍団よ。
第一ゲームは、君たちの勝ち。僕の負けだ。戦いは数だということを失念していた僕の落ち度。
でも、同じ手は何度も食らわないぜ?せいぜい、首を洗って待っていろよ。
##############################
さて、戻ってきました僕の生まれた墓場に。あれだけかっこつけたのに、結果はこの通り。無様なもんだ。
うーん、あの物量、どうしたらいいのかなー。こう、クラスター爆弾とかがあると楽なんだけど。さすがにそんなものは用意できないし………。そもそも異世界に現代兵器を持ち込む系の話は、あんまり好きじゃないからね。邪道だよ。
あの大軍を相手にする。一匹一匹倒していたら、大変とかいうレベルじゃない。経験値稼ぎにはいいかもしれないけど。あ、レベルが三十八まで上がってる。
やっぱり、一気にまとめて倒してしまえるのが最適か……。
広範囲殲滅攻撃。それが、いま求められているもの。
ドカンとでかいのを一発お見舞いしたら、ボス魔物を殺す。シンプルだけど、一番有効なはずだ。
しかし、広範囲殲滅攻撃かぁ。[魔力撃]でなにか作れないかな。こう、魔力の爆弾みたいな感じで。
[閃穿]は、圧縮した魔力を「線」として打ち出す技。それを「線」じゃなくて。「衝撃」としてまき散らすことができれば……。
頭の中で、アイデアをまとめていく。地球の知識も総動員して、新しい技を構築していく。[閃穿]と[閃爪]を作っているときにわかったのだが、魔力の運用に必要なのは、高いイメージ力。言い換えれば、妄想力。オタクである僕の、得意分野なのだ。
イメージする。込めた火薬を炸裂させる。そんな感じで魔力を圧縮していく。込める魔力は、[閃穿]の時よりも多い。それを、[閃穿]以上に圧縮する。
そうしてできた魔力球を、飛ばし、自分から離れたところで、圧縮から解放する!
閃光が、まき散らされた。
視界を強い光がふさぎ、衝撃波が体をすり抜けていく。破壊力を持った魔力の奔流が、僕の体で砕け散る。
精神ステと[精神の極み]がなければ、生命力が一瞬で吹き飛んでいただろうという威力の攻撃が、容赦なく降りかかってくる。
イメージした爆発を、映像で見た原爆にしたからこうなったのか………。普通にやりすぎた。
光によって暗くなっていた僕の視界が晴れると、そこには、隕石でも降ってきたかのようなクレーターが広がっていた。
………あ、やべ。
墓場、ぶっ壊しちゃったんだけど…。どうしよう。
感想とか評価とかくれるとうれしいな